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離島へGO

大崎上島

高松でましょと約束した日に古民家に向かうべく名古屋を出た。
当然今回も青春18きっぷを使いたいので鈍行で向かう。
向かう場所は広島の離島の大崎上島。

お互いが行く日だけを約束していただけで、時間も何も話していなかったので制限時間があるわけでもなく、その日のうちに着けばいいやくらいの感覚。

島に着いたのは夜の7時頃。すっかり日も沈んで真っ暗な中、着いた港から目的の古民家までは1時間ちょっと歩かなければならない。
初めて来た土地を歩くのはいつもドキドキ、わくわくするものだ。

時折通り過ぎる車を除けば、風に揺られこすれあう木々の音と海から聞こえる内海ならではの静かな波の音。それに加えてたまに虫の鳴き声が聞こえるくらい。

街灯も少なく、月明かりがいつもより強く感じる。こういう時、月明かりの心強さを感じて、その度に昔の人がいかに灯りを大切にしていたかと思いを馳せる。

家に着くとましょが出てきてくれ、中に迎い入れてくれた。
もう一人、今ここを拠点に移住地を探している居候の方と挨拶を交わして物件を軽く拝見。

詳しくは次の日にと、夕飯を一緒に食べた。
夕飯にはジビエ、イノシシ肉を頂き、移動の疲れを取るべく眠りについた。

翌朝、鳥の声によって目が覚めた。他の物音がなさすぎるせいか、実際に鳥の声が多い&大きいのか。多分どっちもだろう。
夜の島は歩いたからと、朝起きてすぐに散歩に出かけた。

散歩中に会った島のおばあちゃんと世間話をしたりしながら、島の朝散歩を堪能して帰ってくるとましょも起きていた。
ましょに島についてポイントとなる場所などを教えてもらい、朝食を済ませてから再び島探検に出た。

島での滞在

ましょにクロスバイクを借りて島探検に出た。
島探検をしてましょに紹介してもらったところでもオススメを訊き、色んな場所を渡っていった。

その中で週末だけ営業している古本屋さんがあった。
古本屋としてだけではなく、地域の学生が一日店長できる場であったり、創作をしたりと、学生に限らず大人に対しても自由に開かれた場所だった。

そこでのスタッフさんとの話をする中で確信したことがあった。
「自分がやりたいことはこの島ではこの人がやっている」
一度こう思うと自分がこの島に滞在し続ける意味が失われていく感覚になった。

そういう場所づくりをするための物件探しを兼ねた旅でもあったからだ。

その夜、ましょには正直に自分の気持ちを伝えた。急だけど明日にも出ようと思うと。ましょはつっちーがそう思ったならそうした方が良いと言ってくれた。

本当は一週間くらい滞在する予定だったが、こうして突如最後の夜がやってきた。
この夜ましょとはブレインストーミング(大学ぶりにやった)をしたり、夢に関して興味深い話をしたりして盛り上がった。

この時週に一回だけ開く、私設図書館のような場所を教えてもらい、次の日はそこにお邪魔してから島を船で発ち、愛媛県に渡ることにした。
朝早く出るため、ましょとは寝る前に別れの挨拶をした。

この島で初めての朝を迎えた時と同じように翌朝も鳥の合唱で目を覚まし、個人蔵書を無料開放しているお宅へ向けて、バックパックを背に、リュックをお腹に抱えて歩き始めた。

一歩一歩

ナビによると滞在していた古民家から目的地まで徒歩で1時間半くらい。
徒歩で大きな荷物を抱えたまま1時間半歩くだけならまだしも、一山越えていかなければいけなかった。

そんな時でもポジティブ思考で新鮮な空気をたっぷり吸いながら歩けるぞと内心嬉しさもあった。
歩いていると知らないおばあちゃんがこれやるわと言ってレモンを頂いた。

途中で水分補給がてらレモンの皮を少し石で削ってから指で皮をむいた。
想像以上に皮が硬く、指でねじ開ける時に汁が目に飛んだりして一人で山の中で「うわ、やられた!」と嘆いてうずくまったりしながら歩いた。

山道を歩いていると次第に車が通り過ぎていく頻度が増えだし、島の人の活動時間がきたことを実感した。

目的地付近まで着き、詳細の経路を確認すべくスマホを見ていると外国人の男性に流暢な日本語で声をかけられた。

「どこに行きたいの?」
「(スマホを見せて)ここに行きたくて」
「あぁ、それならすぐそこだよ」

と言って先を歩き出した。
「これは案内してくれるんだよな」と推測の域を出ない状態のままとりあえず後をついていった。
個人宅の庭の様な所を抜けて歩いて行くと前を歩く男性が振り向いた。

「ここね」
「ここですか、ありがとうございます!」
「僕の家ここね(隣の家を指して)」
「へぇー、素敵なおうちですね!」
「ちなみに、お昼から左官仕事やるけど一緒にやる?」
「え、面白そう!やりたいです!」
「お昼ご飯は決まってるの?」
「何も決めてないです」
「じゃあ、うちで一緒に食べなよ」
「ありがとうございます!」
「じゃあ、お昼にね」

*一度この話を友達にした時に「そんな急に左官仕事するかとか訊かれないでしょ!何かやり取り飛ばしてるでしょ?笑」と言われたが、本当にこんな感じで唐突だった。

こうしてこの日のお昼ご飯とその後のやる事も早々に決まった。

留守番

個人蔵書を無料開放している所で色々お話をさせていただき、お昼に隣のおうちに移動した。

すると先程の男性の奥さんが出てきて「あ!ひょっとして今朝、山の中歩いてました?目的地そこならのせてくればよかったですね」と言われ、家の中に案内された。

洋風の外観の可愛くおしゃれなおうちだが、骨組みは宮大工さんに、屋根は板金屋さんに頼んだ以外は自分で土壁を塗ったりして、住みながら家を完成に近付けているそう。

そんなおうちにお邪魔して、荷物を降ろすと奥さんが知り合いが来てるからちょっとここで待っててくださいと言って外に出てしまった。
こうして僕はよく知らない人の家に一人で、うさぎと留守番をする事になった。

つづく


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