勘違いしていた言葉

小学6年生くらいまで、「脱水症状」は女の子にしかならないものだと思っていた。
「脱水少女」だと思っていた。だからいつも夏に「脱水症状」と聞くと、PS2で出ていた「S I R E N」に登場する神代美耶子のようなビジュアルの女の子を浮かべていた。

中学生の頃はバルセロナにある「サグラダファミリア」を、お昼くらいにやっているファミリードラマだと思っていた。
「桜田ファミリア」だと思っていた。
夏休みはお昼頃に起きることが増え、遅めの昼食を摂りながらなんとなく見ていたドラマがそれだと思っていた。
正しくは「明日の光をつかめ」だった。
だから中学の歴史の先生が「サグラダファミリアはまだ作られているんですよ」と話していて、「あのドラマはそんなに長いのか。まあ寅さんもたくさんあるしなぁ」と、全く自分の思い込みを疑うことはなかった。
判明したのは高校生に上がってから、家族との食卓でN H Kが放映していたサグラダファミリア特集で、そこでようやく建造物だと分かった。大恥をかく前で助かった。

大学生の頃、モスバーガーでバイトをしていた。コーヒーはホットかアイスコーヒーのみだから、スターバックスみたいにそんな細かい指定はできない。
しかしお客さんから「アメリカンコーヒーで。」と注文されることがあった。

困ったなぁ…。

なんてったって、僕はアメリカンコーヒーを知らないんだから。
厨房でせっせとハンバーガーを作っている先輩に聞こうと思ったが、忙しそうにしているし、何より「アメリカンコーヒーを知らない」というのが恥ずかしかった。
「アメリカンコーヒー…」この名称を何度も頭の中で繰り返し、イメージを膨らませる。
タイムリミットはあとわずか、そんな最中僕は「これだ!」と結びつけた僕なりの「アメリカンコーヒー」を提供した。

「お待たせいたしました。モスチーズバーガーとオニポテ、それと『アメリカンコーヒー』でございます。」
たっぷりと注がれたコーヒーの下にソーサー(カップの下に置かれる受け皿)を敷き、その上に僕はナイフとフォークを乗せて提供した。
してやったり顔でお客さんの目を見る、お客さんはキョトンとしていた。
「(ファーストフード店にも関わらず、こんなにも綺麗に並べたナイフとフォークを見てビックリしているのだろう)」そう思っていた。

台本を書いているから言葉を知っているわけじゃない、むしろ語彙が少ないからセリフで完結できるシナリオを書いているのだ。

だからもし友人知人が間違っている言葉を使っていたり、何か勘違いをしていたら、ちゃんと訂正してほしい。
あなたの友人がコーヒーと一緒にナイフとフォークを提供してしまう前に…。


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