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1人目の客になれた話 浜大津ナカマチ商店街編

 趣味はオープンしたお店の1人目の客になることです。主に京都市内にて活動しておりますが、以前、亀岡市のJR並河駅から徒歩圏内の「京フジハルカレー」というお店の1人目の客になったことがあり、その際はオープンを祝して、くす玉を割りました。

 大阪では西大橋にあったLA TABLEという韓国料理のお店の1人目の客になったこともあります。こちらは昨年末、惜しまれつつ閉店してしまいましたが、私の趣味史において、唯一の大阪で1人目の客になったお店として、燦然と輝いております。

 近頃は定期的に東京へ行く仕事ができたため、ついでに東京でもどこかのお店の1人目の客になったろかい、と思っているのですが、いまのところ、東京では1人目の客にはなれていません。その他の道府県でも、まだ1人目の客にはなったことはありませんが、なんやかんやで『1人目の客』などという著書を刊行したからには、もっとワールドワイドに活動せねばならないのではないか、という焦燥にかられておりましたところ、京都のお隣、滋賀県浜大津に本日カフェがオープンすると知りました。

 ナカマチ商店街という商店街内にオープンするというこのカフェは、本来は午前11時開店なのですが、今日は10時から商店街をあげてのイベントが開催されるため、それに合わせて10時に店を開けるらしい。想定より1時間早く出かけなければならなくなりました。

 朝の1時間は大きい。たぶん昼の1時間の3倍くらい大きい。普通は生まれたてが小さくてだんだん成長していくものなんじゃないのか。いきなり大きく生まれてきたらお母ちゃんも大変ではないか。私も大変です。たぶん、そんなに早く到着しなくとも、1人目の客にはなれるとは思うのですが、わざわざ浜大津まで出かけたのに1人目の客になれないという事態は避けたいから、そうなると、無駄といえるくらいには早めに出発しておかねばなりません。地理の不安もありますし。

 そんなわけで、東京まで2時間ちょっとで行けるこの時代に、浜大津で10時にオープンするお店の1人目の客になるために、8時29分四条駅発の地下鉄に乗り、烏丸御池で、びわ湖浜大津駅へ直行する電車に乗り換えました。
 びわ湖浜大津駅って昔はシンプルに浜大津駅ではなかったかしら。河原町駅は京都河原町駅になったし梅田駅は大阪梅田駅になりました。その理屈でいけば浜大津駅は大津浜大津駅にならないといけないのではないか。浜大津はびわ湖だったのか。なんにせよ、びわ湖浜大津は京都河原町や大阪梅田より断然語呂がいい。どことなくビワコオオナマズっぽい。

 電車が地下を通ってるうちはウトウトしていたのですが、地上に出た途端に日光が直射して容赦なく私の瞼を刺してきます。滋賀の洗礼を受けた気がしました。よそものにいけずするのは京都より実は滋賀なのかもしれないと思いきや、どうやらここはまだ山科でありました。京都市内でありながら洛中からは京都とは認められていない山科。そうか、あの直射日光は京都に対する山科の反撃だったのか。道理で厳しかったはずです。

 びわ湖浜大津駅に到着し、改札を抜けるとそこにはびわ湖が広がっており、この景色を眺めれば、確かにここはびわ湖浜大津駅であるな、と得心します。黄河か長江かというくらいに広いびわ湖があります。滋賀県北部、びわ湖の畔に生まれた私にとって、北湖より水が汚いとはいえ、南湖の風景も原風景です。※南湖付近にお住まいの皆さん、冗談ととらえてくださいね。幼い頃、三国志好きの兄に、かつて諸葛亮孔明はびわ湖を眺め、感嘆しながら「日本にもこんなに大きな川があったのですね」と言ったというエピソードを聞いたことがあります。

 近頃はグーグルマップのおかげで、くそみたいな方向音痴の私でも簡単に目的地に辿り着くことができます。便利になったと思う反面、人はどんどんアホになっていくのではないかという気もします。翻訳アプリがあったら語学の勉強なんてする必要はないという人が増えてきており、私はそこはかとない危うさを感じています。いま、古典の学習は無駄だと主張している人たちは、何年か経ったら英語も勉強する必要はないと言い出すかもしれません。

 なんにせよ、文明の利器の恩恵を授かり、10時オープンのお店に開店の40分前に到着してしまいました。ナカマチ商店街内に情報発信をしている小さな放送局の隣、ちょっとしたオープンスペースがあり、その奥にお店を構えておられます。商店街のイベントも10時にスタートするということで、既に関係者らしき人たちの鼻息が荒い。あの鼻息の荒さが商店街全体に漲る活気となっていくのでしょう。

「せっかく早く来てくれはったし、中で待っといてください」とスタッフの方がおっしゃったので、ご厚意に甘えて入店しました。無事、1人目の客として入店しました。テーブルは10席ほど。お店の奥が商店街のイベント関係者の控え室になっているらしく、オープン前にもかかわらず、老若男女がひっきりなしにお店を往来します。学生の集団もいました。控え室、どんなけ広いねん。若い力が商店街を盛り上げるのに前のめりになっているのが微笑ましい。

 9時45分、オープンの時間ではありませんが、オーダーさせてもらえることになり、ブレンドコーヒーとプリンを注文しました。カウンターで注文し、精算を済ませてから着席し、品が出てくるのを待つスタイルです。カウンター端、壁にはクロマニヨンズのレコードが掛けてありました。ご主人、どうやらお好きらしい。※後ほど聞いてみたところ、ご主人は「店長代理」ということでしたが、ここではいったん「ご主人」で統一しておく。

 カウンターの向こうではご主人がコーヒーを作っています。焙煎とかドリップとか豆挽きとか、いろんな工程があるのは知っていますが、いかんせん、どの工程がどういう動きで、それによってどうやってコーヒーができあがっていくのかを私はよくわかっていません。とにかく、工程が進むにつれ、なんともいえないコーヒーの香りが鼻を刺してきました。これまた、いやがおうにも目を覚まさせる刺激です。どうせなら直射日光より、この香りで目覚めたい。

 ブレンドコーヒーとプリンが一緒に出てきました。あずきバーほどではありませんが、プリンは固め。スプーンを入れると少しばかりの反発を感じる固さ。プリンはこのくらいが好みです。食レポは得意な方にお任せするとして、コーヒーもプリンもどちらも美味しい。

美味い!美味いぞ!!



 1人目の客Tシャツを着た私をスタッフの方が撮ってくれ、インスタグラムのストーリーにさっそくアップしてくださいました。フリー素材にしては主張が強い私です。

 コーヒーとプリンに舌鼓を打っているうち、10時を過ぎて、商店街のイベントが始まりました。外の賑やかな雰囲気が店内にも伝わってきます。お店はオープンスペースと地続きで、オープンスペースは商店街の街路と地続きとなっており、それらを隔てる襖もドアもありません。少し寒いですが、その分、商店街の人の活気や温もりを直に感じることができます。この感じって昭和やん。
 ケツバットだとか、セクハラだとかではなくて、懐かしい昭和ってこういう空気のことなんじゃないのかしら。

令和6年3月2日午前10時、浜大津ナカマチ商店街にオープンしたOi Coffeeの1人目の客は私です。

オープンおめでとうございます㊗️

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