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東京日記12 急がば回れ

 東京日記といいながら、西船橋駅や武蔵浦和駅の話ばかり書いてしまった。無事に武蔵浦和駅で新宿行きの電車に乗り、あとは終点まで電車に揺られるばかり。幸い、座ることもできた。
 余談なのだが、私は電車に乗るとき、いつも思っていたのとは逆側から電車がホームにやってくる。方向感覚が音痴すぎるのだ。
 故郷が滋賀なのだが、京都から帰省する際、京都駅で電車を待っていると、いつもいつも思っているのと反対側から電車がやってくる。おかしいな、でも米原方面長浜行きと書いてあるからこれに乗るのは間違いないんだけどな、と思いながら電車に乗るのだが、ずっと本当に合っているのか半信半疑でいる。
 ところが、故郷が近づいてくると、ふと、「この方向で正しかったんだな」と確信する景色が現れ、その景色に出くわしたとたん、それまでの疑念が晴れ、方向は正しくなる。なんというか、私の脳内で進路がギュイン!と補正されるのだ。あの補正された瞬間の心地よさ、爽快感は、方向音痴であればこそ得られるものだ。あの感覚を味わえたときばかりは、方向音痴でよかったと心底思う。できる人には辿り着けない場所があるのだ。
 周りには賢い人がたくさんいて、私はいつもその賢い人たちにアホだバカだと呆れられる。実際にそうなのだから言われても仕方ないと思うが、しかし、賢いあなたたちには到底見ることのできない景色をこっちは見ているんですよ、この景色を見られないあなたたちって実は残念な人たちなんだねっていう勝ち誇ったような思いもある。
 これって「急がば回れ」ということなんだろうと思う。賢い人は合理的にものを考えるので回ることさえしないけど、私たちアホは賢くなろうともがくほどに遠回りをしてしまい、結果、たくさんの風景に出合うことができる。どちらがいいということはないが、こっちはこっちでそんなに悪いものでもない。
 ずいぶん遠回りして新宿に着いた。

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#方向音痴

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