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興味がない

 少し前の朝日新聞の夕刊に千早茜さんのエッセイが掲載されていました。
 ある千早さんの友人の方について書いてあり、千早さんが言うにはそのご友人は、意外な仕事を依頼されても、非常に巧みに自分の中に落とし込み、作品に変えていく方で、そこには必ず、そのご友人でしか見つけられなかったであろうと思わせる新しい着眼点があるのだそうです。しかも、そのお仕事についてご友人はかつて「興味がない」と言っていたにもかかわらず、なんですね。
 千早さんが、どうして興味がないことに取り組めるのかと聞いてみたところ、ご友人いわく、「興味がないことほど調べるのよ。断る口実を見つけるために。だって、知らないと断ることもできないでしょう」。そうして徹底的に調べた結果、ひっかかるものがあれば受けて、惹かれなかった場合はそのお仕事は断るんだそうです。
 ご友人にとって、「興味がない」というのは断りの文句ではなく、「始まりの」「そこからの」言葉になっている、と千早さんは驚くとともに自分自身を振り返り、「興味がない」を自分では苦手なことや好ましくない情報や誘いをシャットアウトするときに簡単に口にしていたけれど、「興味がない」ものを知ることで見えてくる景色があるのかもしれないと書いていました。

 ずいぶん長く引用しながら書いてしまいました。4月10日の朝日新聞夕刊なのでご興味ある方は是非そちら、ご購入のうえ読んでください。

 「興味がない」という言葉のもつ棘の鋭さに私は何度も打ちひしがれてきました。どれだけ自分が面白いと思って話しても「興味がない」と言われればもうなすすべはありません。千早さんの言うように「興味がない」は「断りの文句」であり、「終わりの言葉」であるはずなのに千早さんのご友人はそれを「始まりの言葉」にしておられる。「興味がない」に打ちのめされ続けてきた私のような者こそが、今こそ立ち上がり、「興味がない」を「始まりの言葉」にしなくては。普段夕刊はそんなにちゃんとチェックしてなかったんですが、こんな素敵なエッセイに出合えました。ああ、こんな成功例のおかげでこれからまた読む記事が増えてしまう。

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#蠱惑暇 #こわくいとま

数多の知人に「興味がない」と一蹴され続けた私の趣味、オープンしたお店の1人目の客になることについて綴った著書『1人目の客』はウェブショップ「暇書房」で販売中です。

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