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連作短編小説『ワンダフルトゥナイト』第4話

「ロールプレイングゲームの話、途中だったよね」
「もう別にいいけど」
「いや、途中で終わったら気になるじゃない」
「ふーん」
「何その不敵な笑みは」
「なんかわかっちゃった気がする」
「何が」
「男と女って長いこと付き合ってるともうお互いがお互いに関心を持たなくなるってことがあるでしょう」
「うーん、そういうこともあるのかな」
「わっくんそういうとこ、守りに入るよね」
「レイちゃんは逆にそういうとこ、切り込んでくるよね。それを指摘されちゃうのはなかなか恥ずかしいものだよ」
「気になることは気になるときに指摘してしまうほうが後々遺恨が残らないから」
「遺恨って橋本真也と小川直也じゃないんだから」
「スペーストルネードオガワ?」
「まあいいよ。またそっちの話に流れちゃう」
「デンジャラスドライバーテンリュウの話をしてもいいよ」
「しなくてもいいよ。男女のお付き合いの話でしょ」
「そうそう、だからもう長年連れ添った夫婦とかだとお互いが空気みたいになって嫌いじゃないけど別にときめきもなくて恋とか愛とかそういうのがだんだんめんどくさくなってきちゃって」
「うんうん」
「もう正直見た目も天龍と長州みたいになっちゃうじゃない」
「そんな話?」
「違うけどデンジャラスドライバーテンリュウの話が出たから」
「出たんじゃなくて出したんだけどね」
「もともとデンジャラスドライバーテンリュウじゃないらしいよ」
「何が?」
「DDT」
「そうなの?」
「私も詳しく知らないけどもともとDDTっていう技があって、天龍が自分も使うようになってデンジャラスドライバーテンリュウっていう名前を付けたらしいよ」
「確かに無理やり感があるよね」
「これは知り合いの知り合いが言ってたんだけど」
「遠いな」
「だから又聞きなんだけど。昔GTOって流行ったでしょ。あたしは知らないんだけど反町隆史と松嶋菜々子の」
「あー、こないだやってたよね」
「そう、あれが流行ってた頃、花園の王将にGTO定食っていうのがあったんだって」
「何が入ってるんだろう」
「それはわからないんだけど、これ、何の略かわかる?」
「グレートティーチャーオニヅカでしょ?」
「それはオリジナルでしょ。GTO定食はグレート定食王将」
「名前聞いてもなんの定食かまったくわからないね」
「そうなの。それ言い出したら王将の定食はみんなGTO定食だからね」
 少し「うまく言ってやった感」を出すレイラを抱きしめたくて抱きしめたくてたまらなくなり、ぐっと抱き寄せ丁寧に覆いかぶさる。論理的ポイントがあるかなんて愚問なんだ。俺なりのDDT、GTO、そしてRPG。今夜もワンダフルトゥナイト、いとしのレイラ。

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