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虹色に光るボディ

 22時過ぎ、職場を出て帰路につく。この場合の「つく」はどの漢字だったか調べるのがめんどくさいから平仮名にする。着く、就く、付く、吐く、突く、点く、築く、憑く、衝く、撞く、つくづくつくは漢字が多い。平仮名にすることで漢字間違いが防止できる。これを私はつくつく防止と呼んでいる。
 近所のスーパーでホワイトベルグを買うついでに鮮魚コーナーを覗いてみると、売れ残った刺身たちが半額になっている。もはや鮮魚ではなく魚特有の生臭さが店内を占有している。かつおのたたきを買って帰った。

 帰宅後、風呂に入る。本来ならば一旦かつおのたたきとホワイトベルグは冷蔵庫へ避難させるべきなのであるが、そんなに長風呂はしないし少しの間くらい別にええか、とカバンのなかに放置したまま入浴するも、深夜までの労働に思いのほか疲労困憊していた身体が浴槽から出たがらず、思いのほか、長居してしまったが故、風呂上がりにプシュっと開けたホワイトベルグのボディはもはや冷たさを帯びておらず、かつおのたたきは陳列されていた頃よりも生臭くなっていた。
 だいたい、鮮魚といいつつ、あそこに並んでいる魚たちは並び始めの時点で死んでいるし、先ほどから生臭い生臭いと書いているがもちろんもはや生ではない。それはさておき、私はこのあと、ぬるいホワイトベルグでこの生臭い死んだ魚を流し込むのか。少しばかりグロテスクなものを感じてしまった私は冷蔵庫の中でギンギンに冷えたおろしにんにくとポン酢を持ってきて、かつおのたたきの虹色に光るボディに向けてどぼどぼと零してやった。もはや、にんにくとポン酢のかつおのたたき添えとでも言わんばかり。おかげで生臭さは消え、たっぷりのにんにくとポン酢の味がホワイトベルグと共に喉の奥へ流し込まれた。
 実に美味かったが果たしてあれは、かつおのたたきが美味かったといえるのだろうか。今朝、お腹を下したのは何のせいだろうか。

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蠱惑暇(こわくいとま)はオープンしたお店の1人目の客になるのを趣味にしています。この趣味についての記録をまとめた著者『1人目の客』はネットショップ「暇書房」で販売中。面白いで!!

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