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バイデンの演説の翻訳比較その9 stalk

バイデン大統領就任演説について、新聞各紙がどう翻訳したか?を調べています。今回取り上げるのはコチラ。

Few periods in our nations history have been more challenging or difficult than the one we're in now.
A once-in-a-century virus silently stalks the country. It's taken as many lives in our year as America lost in all of World War II.
Millions of jobs have been lost.Hundreds of thousands of businesses closed.
A cry for racial justice some 400 years in the making moves us. The dream of justice for all will be deferred no longer.

今回気になったのは、
A once-in-a-century virus silently stalks the country. の「stalks」です。

この一文の新聞各紙の訳をみていくと、
●「京都新聞」
100年に一度のウイルスは静かに国内にはびこり〜
●「読売新聞」
100年に1度のウイルスが静かに広がっている。
●「朝日新聞」
100年に1度のウイルスが静かに国にはびこり〜
●「産経新聞」
1世紀に1度のウイルスが静かに米国に忍び寄り〜
●「日経新聞」
100年に1度のウイルスが国家を静かに闊歩している。

「stalks」は「はびこる」「広がっている」「忍び寄る」「闊歩している」と訳が分かれています。こういう訳にズレのある部分が読んでいて楽しいところです。私は英語がまったくできないくせにこういうところを楽しみたいがために新聞各紙の訳を書き写しているのです。偉いでしょう。

「stalks」は動詞として使われていて末尾の「s」は三人称単数の「s」なので辞書で調べるときは「stalk」を調べればよいはず!このくらいはさすがにわかる。(と言いつつ間違っていたらかなり恥ずかしい)

googleで「stalk」を調べてみました。
「茎」と出てきました。
まさかの名詞!??と思い、
読みすすめていくと、
ちゃんと動詞もありました。

●自動詞
気取って大またに歩く、闊歩する
He stalked out of the room.
彼は大またに部屋を出ていった。

●自動詞
(幽霊が)さまよい出る
(病気や災厄などが)広がる、はびこる
Cholera stalked through the land.
コレラが国中に広がった。

●他動詞
(敵や獲物などに)忍び寄る、そっと○○の跡をつける
The hunter stalked the bear through the woods.
猟師は森中、クマの跡をつけた。

●他動詞
(病気などが)広まる
Panic stalked the streets.
恐怖感が街中に行きわたった。

とありました。

目的語(「を」や「に」)を含まないのが自動詞で、含むのが他動詞です。
今回の場合は「stalks the country」なので、「stalk」は他動詞として使われています。ゆえに、

●他動詞
(敵や獲物などに)忍び寄る、そっと○○の跡をつける

●他動詞
(病気などが)広まる

このどちらかで使われていると考えるのが無難です。(ただし、これは私が調べた辞書が間違っていなければの話ですが)
そう考えると、「闊歩する」と訳した日経新聞はふさわしくない訳し方をしているようです。また、上記2つのうちならば「●(病気などが)広まる」のほうがより合っているように思うので「産経新聞」の「忍び寄る」もちょっと違うのかもしれません。ただ、「忍び寄る」にしろ「闊歩する」にしろ、要はウイルスが広がっていることを言いたいわけなので、間違っているのか?といえば、そんなことは無いのではないかとも思います。

要は名詞で「茎」を意味することを念頭に、茎が根をはってぐんぐん広がっていくようなイメージを持っておけばいいのではないかと思います。知らんけど。

使える機会があれば使っていきたい単語、
「stalk」を覚えました。
たぶん明日には忘れます。


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