絶対に許せない人
絶対に許せない人がいる。と書くと私にとって絶対に許せない人がいるみたいだが、そうではなくて、いろんなことを絶対に許せないと思っている人がいる、ということ。
例えば、信号無視は絶対に許せない!というのは確かに正しいことではあるけれども、どこをどう見渡してみても人っこ一人いない、車も見えないし、細い路地から急に自転車が飛び出してくる心配もない横断歩道が赤信号でも頑なに信号が青になるまで待つ、という姿勢は、生きていくうえでのストレスが多いだろうなと思う。実際、私の知っている「絶対に許せない人」は、いつも何かに怒っている。
信号無視の例は赤と青だが、絶対に許せない人たちは、白と黒をはっきりさせたがる。グレーが嫌いなのだ。しかし、世の中はそんなに白と黒がはっきり分かれておらず、ほとんどがグレーなんだから、ある程度グレーに染まったほうが生きやすい。「仕方がないな」で済ませるほうが気持ちが楽だし、気持ちが楽だと生きていて楽しい。絶対に許せない人たちは正義感が強いから絶対に許せないんだと思うが、白と黒のはっきりした世界を生きていると、必ずしもその生き方はグレーの世界の人間にとっては正義ではなく、悪になってしまうことさえある。実際、正義を振り翳して怒りを撒き散らしている様は悪そのものである。
世の中なんて9割方がグレーであり、そのグレーを受け入れて真ん中を渡れたら、それがいちばん楽だ。「この橋、渡るべからず」で一休さんは真ん中を歩いた。私たちも真ん中を渡るべきだ。絶対に許せない人たちは、白黒はっきりさせたいがために欄干の上を歩いているようなものだ。負荷もかかるしバランスも悪いし落ちたら水浸しになるし、そんなギリギリのところを歩かなくても降りれば大きな橋がある。だいたい欄干は歩く場所ではない。私はむしろ、そんなところを歩いているくせになんやかんやと文句を垂れる人のことが許せない。
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