見出し画像

40歳で海外転職した話 ②

昨日の続きです。イギリス英語とおしゃれ系カフェに惹かれて転職エージェントに会ってみたものの、持ち出された話はあまりにも現実感がなく、いったんお断りして帰路についたのでした。

カジュアル面談というワナ

昼下がりの密会を終えて会社に戻ると、あっという間に日常にカムバックです。そして何事もなく数日が過ぎたころ、またエージェントからメールが。

「転職活動中じゃないことは理解したので無理にとは言わないけど、今回のケースはかなりのレア案件だよ。先方とカジュアルに話だけでもしてみない? non-commitment basis で問題ないから」

でました、カジュアル面談

さすがに保険営業を16年やってきていたので、それが候補者の心理的ハードルを下げるための方便であることぐらい、僕にもすぐわかりました。採用側はがっつり選考モードだと思って間違いない。準備もせずにノコノコ出ていったら、志望もしてないのに落とされる、という謎の屈辱を味わうのは目に見えています。

そしてでました、ノーコミットメント

そもそも正式な面接だって、受けただけではお互いに何の義務も発生しませんよね。逆にノーコミットメントじゃない面接があるなら教えてほしい。これも、とりあえず候補者を選考ステップに乗せてしまおう、というワナだと思って間違いないでしょう。


で、2週間後。カジュアル面談してました(爆)

僕は転職に限らず、面白そうな機会に対しては常に open minded であることを心がけています。飲みでもお茶でも、誘いを受けたらとりあえず Yes です(もちろん、明らかに時間のムダとわかっていたら断りますけど)。

人間、40歳近く(当時)にもなると価値観や行動パターンが固まってくるので、意識的に外部からの刺激を取り込むべきだと思うのです。

それに、新卒で入ってから全く外の世界に触れていない自分が、転職マーケットでどう評価されるかを知りたい気持ちもありました。話を聞くだけであればタダ、それこそノーコミットメントですしね。

転職活動って、後ろめたいこと?

日本の特に大企業にいると、こうしてエージェントに会ったり、カジュアル面談なんかをすること自体に、会社を裏切っているような罪悪感を感じるかもしれません。

僕も古巣の雰囲気がすごく好きだったので、そうした思いがなかったわけではありませんでした。

ただ、今になって感じますが、そこまで気にすることはないと思います。会社と従業員は対等な関係であるべきですし、何なら僕たち社員は、入社前から退職するまで常に会社に選別され続けているわけですから。当然こちらにも選ぶ権利はあります。

(これ就活でも同じかと。「第一志望です」とか「就活は今後一切やりません」とかコミットさせるのってどうなんだろう。学生は複数社の内定をもらって初めて選択できるわけだし。「おぬしそんな狭い了見じゃ、かえって優秀な学生に逃げられるぜよ」と心配してしまいます。)

少し話がそれますが、海外での飲み会において、日本企業の人事異動のえげつなさは鉄板ネタです。辞令ひとつで世界中どこにでも飛んでいくこの特異な人事システムを採用しているのが、(僕が知っている限り)日本、中国、韓国ぐらいだからです。

「3週間後に自分がどこで仕事をしているのかわからない」「ずっと営業だったが、来週からコンプライアンス部門の課長になる」「家の下見に行けずネット上の写真だけで決めた」「子どもの転校手続きを2週間で取らないといけない」などと話すと、「おまえには基本的人権がないのか」ぐらいの勢いで心配されます。

もちろん海外でも、国や部門をまたぐ異動はあります。ただ、それらは通常は「機会」として提示され、本人が自身のキャリアプランと家族の状況を踏まえて take するかを決めます。

逆に、勤務する国や職種を変えたいのであれば、社内転職活動をしてポジションを勝ち取らなければなりません。いずれにしても、会社と社員の意向がマッチした場合にのみ異動が発生するのが原則です。

ロンドン時代、「家族と離れて単身赴任になるのが辛い」「次の部署での仕事はやりたいことと違う」とぼやいていた同僚に対して、現地スタッフが不思議そうな顔をして「だったら辞めればいいじゃん」と言っていたのが、彼我の環境の差を物語っていました。

海外においては、転職という選択肢は社員が当然持っているべきカードです。会社としても、いつかそのカードを切られるかもしれない、という緊張感を常に抱いていますし、そうならないように優秀な社員には厚く報いるのです(逆にコイツはいらないと思われたら塩対応です)。

内向き社員ばかりの方がむしろ危険

もっと言うと、いまの時代、社外から全く声がかからない社員だけでまわっている会社の方が危険でしょう。

日本企業のことを、「会社という神輿を全力で担いでいる社員はわずかで、大半の社員は担いでいるフリをしてぶら下がっている」と揶揄する話を聞いたことがあります。

一方で、外資コンサルや投資銀行などは転職が当たり前の文化ですが、みんな在職中は死にもの狂いで神輿を担いで成果にコミットすると。

超優秀な人材を集め、自由と責任を両立させた社風で有名なNetflixでは、社員に他社の面接を受けることを推奨しているそうです。社員に、ちゃんと市場価値を上げているかをチェックさせるとともに、会社としても「優秀な人材は放っておいたら引き抜かれる」という前提に立った上で、自社の処遇がマーケット水準に見合っているかを定点観測しているわけです。

僕は、日本企業、海外企業それぞれに良いところ、足りないところがあると思っていますが、こと転職に関しては、海外における認識の方が明らかに健全です。少なくとも、「転職=裏切り」という捉え方では、これからの時代のタレントマネジメントは成り立たないでしょう。

話を戻さなきゃ・・・

すいません、雑談が過ぎました。早く次に進めと怒られそうなので、明日はカジュアル面談後のステップについて、ちゃんと書きます。

To be continued...

<続きはこちら>



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?