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都政の現場を活用し、スタートアップ製品の実装を進めていく~キングサーモンプロジェクト~

都政の構造改革では、「スタートアップ協働戦略」に基づき、東京都とスタートアップの協働を推進しています。

本年5月18日、革新的なスタートアップの製品等を都政現場に導入することで、現場の抱える課題解決を図るとともに、スタートアップの国内外での成長を後押しする事業「キングサーモンプロジェクト」のメディア向けイベントを実施しました。国内だけでなく海外のメディアも含め、多くの注目を集めました。

今回のnoteでは、このプロジェクトについて、実際の都政現場への実装の様子も交えながら解説します。


「行政がスタートアップのファーストカスタマーになる」:キングサーモンプロジェクトとは?


「キングサーモンプロジェクト」では、スタートアップ企業のプロダクト・サービスを都政現場での実証を実施し、公共調達の促進や海外販路拡大に向けた支援等を行うことで、スタートアップ企業の成長を後押しし、東京都が抱える社会課題を解決していくことを目指しています。

「キングサーモンプロジェクト」という名前をつけることで、サケ(サーモン)が海に下り、成長してから生まれた川に戻ってくる習性になぞらえて、東京とともに成長したスタートアップが、グローバルの大海でさらに大きく成長し、ゆくゆくは東京でまた後に続くスタートアップを生み、育てるような存在になって来てもらいたい、という願いを表現しています。

このプロジェクトは、世界で活躍するスタートアップを東京から生み出したいというところを出発点としています。スタートアップに対し、製品を実装するフィールドとして東京都の現場を提供することで、その後のステップアップの足掛かりとしていただきたいと考えています。

これから世界に羽ばたくスタートアップ製品を積極的に東京都の現場に取り入れ、「行政がスタートアップのファーストカスタマーになる」というくらいの意気込みでこのプロジェクトを進行しています。


都立高校の現場に「マッスルスーツ」を導入


実際の都政現場での活用事例を見てみましょう。本プロジェクトの第1期で採択された株式会社イノフィスの事例をご紹介します。

株式会社イノフィスの「マッスルスーツEvery」は、人工筋肉を活用した腰補助用のアシストスーツで、電気を一切使わず、空気圧式の人工筋肉に手動ポンプで空気を装填することにより稼働します。

「マッスルスーツEvery」は、福祉施設での実証を経て、令和3年4月以降、実際の都政現場での導入が始まりました。その一つが福祉系の学科がある東京都立赤羽北桜高等学校です。

都立赤羽北桜高等学校

同校では、今後生徒が福祉分野のエキスパートとして活躍していくためにも、最先端技術に触れ、進化していく介助・介護用具を活用していける力を身に着けてほしいといった考えから、12台のマッスルスーツEveryを公共調達し、授業に取り入れています。

介護福祉科における「生活支援技術」の授業では、生徒が自らマッスルスーツEveryを装着し、ベッドから車椅子への移乗介助や、ベッドでの抱き起こしの実習を行いました。

都立赤羽北桜高等学校での導入風景

装着に手こずる生徒には他の生徒が装着のコツを教え、移乗介助の練習では「身体ヨコ向けますね」など、互いに声をかけあいながら熱心に実習に取り組みました。

実習後、生徒からは「装着が難しかったが、使い方を教えてもらったら身体に負担がないことが分かった」といった声もあり、介助・介護業務で蓄積される腰痛を防ぐソリューションとして実感していました。

その他、同様に福祉系の学科がある都立野津田高等学校のほか、東京都社会福祉事業団が運営する日野療護園など福祉施設3か所でも「マッスルスーツEvery」の導入が進んでいます。

日野療護園での導入風景


ほかにもあります、キングサーモン企業


株式会社イノフィスの「マッスルスーツEvery」以外にも、都政現場での効果の実証を経て、実装されたスタートアップ製品があります。

トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社の「DFree」は、超音波技術を活用し、リアルタイムで膀胱内の尿の溜まり具合を計測する排泄予測ウェアラブルデバイスで、排尿のタイミングを事前にスマートデバイス等に通知します。この製品も都立病院への導入が進んでいます。

Holoeyes 株式会社の「Holoeyes MD」「Holoeyes VS」は、CTやMRIから生成した3DデータをVR化して、手術のシミュレーション、トレーニング等へ活用可能なサービスで、エンジニアを必要とせずに簡単にVRアプリ化が可能です。この製品も都立病院へ導入されました。

都政現場への実装とあわせ、キングサーモンプロジェクトでは海外展開も支援しています。たとえば、「マッスルスーツEvery」は、今後17の国と地域(中国、香港、 マカオ、台湾、韓国、 フランス、スペイン、イタリア 、 ポーランド 、 メキシコ 等)で展開を予定しているということです。


「政策目的随意契約」を活用し、スタートアップ製品を都政現場に実装する


都立赤羽北桜高等学校におけるマッスルスーツなど、都政の様々な場面でスタートアップ製品の実装が進んでいますが、そうした製品を都政現場に迅速に導入するということは、そう簡単なことではありません。

地方自治法では、地方公共団体が発注を行う際は、公平性の観点から不特定多数の参加者を募る調達方法、「一般競争入札」を原則としています。ただし、特定の場合には「随意契約」を認める条項が設けられており、私たちがスタートアップとの協働で活用しているのが、そのうち地方自治法施行令第167条の2第1項第4号の条項です。

第百六十七条の二
地方自治法第二百三十四条第二項の規定により随意契約によることができる場合は、次に掲げる場合とする。

四 新商品の生産により新たな事業分野の開拓を図る者として総務省令で定めるところにより普通地方公共団体の長の認定を受けた者が新商品として生産する物品を当該認定を受けた者から普通地方公共団体の規則で定める手続により買い入れ若しくは借り入れる契約又は新役務の提供により新たな事業分野の開拓を図る者として総務省令で定めるところにより普通地方公共団体の長の認定を受けた者から普通地方公共団体の規則で定める手続により新役務の提供を受ける契約をするとき。

少し硬い言葉で書かれていますが、「新商品の生産」「新役務(サービス)の提供」により「新たな事業分野の開拓を図る者」は、普通地方公共団体の長から「認定」を受ければ、競争入札によらず「随意契約」が可能、ということが言われています。東京都ではこの契約形態を「政策目的随意契約」と呼び、スタートアップとの協働に活用しています。

キングサーモンプロジェクトもこの一つであり、スタートアップ企業を公募し、都政の現場での実証結果をもとに、社会課題の解決に資するプロダクト・サービスと認められるかを審査し、政策目的随意契約の対象企業として「認定」することで行政調達を促進しています。

スタートアップへのヒアリング調査では、

入札では参加時点で格付けの条件があり、社歴の浅いSUの参入にハードルとなる。キングサーモンプロジェクトのような柔軟な取組を増やすべきだ

という声も寄せられました。都政の構造改革では調達に関する改革も進行させており、都政のQOS向上という観点から、制度の根幹まで立ち返り、あらゆる手段を講じてスタートアップとの協働を促進しています。

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先日行われたキングサーモンプロジェクトのメディア向けイベントでは、宮坂副知事とスタートアップのパネルディスカッションも行われました。

スタートアップ企業が行政の仕事を受託する難しさについても話題となり、「コネクションがない中でドアノックしてもできなかったはず。キングサーモンプロジェクトのような形で行政の現場に導入した実績があったので、その後の展開のスピード感がまったく違った」といった意見も聞かれました。


これからもスタートアップとの協働を進めていきます


キングサーモンプロジェクトは「第2期」もスタートしました。

今後も、都政現場の様々な場面でスタートアップ製品を導入することで、東京都が抱える社会課題を解決し、「未来の東京」をスタートアップ企業のみなさまとともに創り上げていきたいと考えています。

東京都で実施するピッチイベントやキングサーモンプロジェクトの新しいプロジェクトの募集の際には、ぜひスタートアップ企業のみなさまの積極的なご応募をお待ちしております。

【ご意見募集】
キングサーモンプロジェクトへのご意見・ご感想はこちらのフォームから受け付けております。ぜひ、ご意見をお寄せください。