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勤め人のための徒歩旅入門(実践編)~北海道概説&上陸編

0.はじめに

前回、「勤め人のための徒歩旅入門(基礎編)」という記事を書いた。正直マニアックすぎる内容だなと自分でも思っているが、読んでくれた方もいらっしゃるようで、書いた甲斐があったなあと感じた(読んでくれた方、ありがとうございます)
それで、今回は徒歩旅実践編(北海道)の記事を書くことにした。内容としては、
・北海道の特徴
・北海道の交通事情を概説する
・北海道への上陸手段を考える
の3点を中心にまとめる予定だ。具体的なルートに関しては別の記事で詳細を語ることにして、まずは基礎の基礎から書き始めていこう。

1.北海道とは

(1)特徴

北海道は、日本の47都道府県のうち、最も北に位置する。そのため、日本縦断を行う際、スタートまたはゴールとして設定されることが多い。道庁所在地は札幌市で、人口は190万人ほど。人口2位の旭川市が約30万人のため、札幌に一極集中していることがよくわかる。
面積は全都道府県中、最大であり、九州+四国+宮城+岩手とほぼ同じ広さだ。しかし、広い割には首都圏のように緻密な交通網が敷かれているわけではないため、移動に時間がかかることが特徴である。
夏は比較的涼しいが、暑い日もあるので注意。太平洋側の地域は6月でもストーブを炊くところもある。
冬は日本海側を中心に吹雪など、厳しい環境となる。降雪量は地域によって様々だが、内陸部、北部が多く、太平洋側は少ない傾向にある。
また、近年では市街地に熊が出没することがあり、十分な注意が必要である(先日熊に襲われる死亡事件も発生した)。

(2)旅する上での注意事項

北海道に関するざっくりとした特徴は今書いた通りだ。
ここからは、(1)の内容をもとに、北海道を旅する上で気をつけなければならないポイントについて解説していく。

まず、札幌市に人口が一極集中していることからもわかる通り、交通機関は札幌に近いほど便利で、遠いほど不便となる傾向がある。また、運賃が高いため、留意しておこう。
冬は寒く、雪が降るため、しっかりした冬装備が必要となる。
列車が雪で運休になることも多いため、徒歩旅の場合は装備が貧弱な状態だと命の危険すら生じかねない。そのため冬はおすすめできないが、もし冬来ることがあるなら万全の対策で挑もう。
さらに、北海道は典型的なクルマ社会であり、交通事故に十分注意が必要な地域でもある。北海道の道路は広くて走りやすく、郊外では信号が少ない所も多い。そのせいか100km近いスピードで走っている車もザラにいる。
加えて運転マナーの悪い車も多いことから、交通事故には細心の注意を払わなければならない(私が危険区間をパスしても良いと前回述べた理由もここにある)。

後は熊対策だが、熊よけの鈴を鳴らして歩く、無闇に山間部に立ち入らない、万一遭遇したときのことを考え、深夜・早朝など人気のない時間帯に一人で行動することは避ける、くらいだろうか。
熊と格闘して100%勝てる自信がある方以外は、警戒を怠らないようにしよう。(いるんだろうか?)

(3)「縦断」「横断」の条件

注意事項を確認したので、ここからは北海道の都市間移動について見ていくが、北海道を「縦断した」「横断した」というためには、最低限どの都市へ到達する必要があるかを考えてみる。
「縦断」の場合、やはり日本最北の稚内市・宗谷岬への到達は必須だろう。
「横断」の場合、日本最東端を目指すなら根室市・納沙布岬が第1候補だが、世界遺産の「知床」(斜里町)や「この世の果て」として名高い野付半島(標津町)なども候補に上がる。このあたりはお好みで良いと思う。
そして、これらの地域から北海道の入口まで南下、あるいは入口から北上することができたら、北海道を「縦断」「横断」したと言ってよいだろう(前記事の「特例」も参照)。
※前回からの繰り返しになるが、必ずしも端から端まで完璧に移動しなくても良い。「縦断」「横断」それ自体が目的でもあるが、大切なのは「自分の足で歩いて体験する」ことだ。
代表的なエリアをおおよそ歩いて回ってつなぎ、「これでよし」として本州に移っても構わない。それにケチをつける愚か者もいるだろうが、どこ吹く風かと受け流してしまえばいい。旅しているのはその人ではなく、他ならぬ「あなた」なのだから。

それで、北海道の入口をどこに設定するかだが、「縦断」「横断」という言葉をそのまま受け取るなら、本州に最も近い自治体が最有力候補となろう。
本州に最も近いのは函館エリアで、このうち本州と交通路でつながっているのは函館市(港)と木古内町(新幹線)の2つである。
※新幹線は福島町と知内町を通過するが、旅客駅が存在しないため、実質的な入口は木古内
したがって、おおよその目安としては、
「縦断」→函館(または木古内)~稚内
「横断」→函館(または木古内)~根室・知床・野付半島など
ということになるだろう。

(4)交通事情・ルートについて

北海道内の各都市は、札幌市と鉄道、航空機、高速バスなどで結ばれている。鉄道に関していうと、北海道は広さの割に鉄道網はシンプルで、さほど難しくはない(全盛期の路線図は圧巻ですが)。一方、航空機や高速バスは予約が必要な場合が殆どなので、利用する際は注意だ。
北海道縦断ルートのサンプルは、以下の通りだ。

北海道新幹線・木古内駅~(道南いさりび鉄道)~函館駅
函館駅~(函館本線・室蘭本線・千歳線)~札幌駅 【特急 北斗】
札幌駅~(函館本線)~旭川駅~(宗谷本線)~稚内駅 【特急 カムイ・ライラック 宗谷・サロベツ】
この鉄道ルートを基本として、これに沿って歩いていくのがよいだろう。ちなみに、ルートはこれひとつではないので、次回以降、途中の分岐駅で別ルートも紹介していく予定だ。

次に航空機だが、北海道縦断の際に使う可能性がある空港は、
新千歳空港(千歳市) ※北海道の代表空港
・丘珠空港(札幌市東区)※北海道内の空港間がメインのローカル空港
・函館空港(函館市)
・旭川空港(旭川市)
・稚内空港(稚内市)
で、横断の際は

・とかち帯広空港(帯広市)
・たんちょう釧路空港(釧路市)
・根室中標津空港(中標津町)
・女満別空港(大空町)
などを利用することになるだろう。

バスについてだが、長距離の路線バスも走っており、鉄道より停留所が細かく設定されていることから、バスの路線図と時刻表を押さえておくことは、徒歩旅にとって大いに助けとなる。
一方、高速バスは停留所が少ないものの、夜行便などもあるので、目的地への到着時刻を調整したいときに使うといい。
徒歩旅に貢献する各交通機関の詳しい情報は別の記事で書く予定だ。
今回はざっくりとしたルートを思い描いてくれれば問題ない。

(5)北海道への上陸手段

北海道への上陸手段は主に3つ。航空機、新幹線、船だ。
この記事は、「勤め人のための徒歩旅入門」つまり、働きながら日本中を旅する人向けの記事だ。労働時間については各人多様だとは思うが、ここでは主に「完全週休2日制」の方を想定して筆を進めることにする。
※ちなみに私は週休1日(日曜・祝日。ただし、土曜の午後は休みなので、およそ週休1.5日)の状態で旅に出ている。日帰りが殆どだが、工夫すれば遠くまで行ける。よって、完全週休2日の方はもっと遠くまで行けるので、あまり考えすぎずにどんどん旅に出てほしい。

週休2日の旅とはつまり、金曜の夜出発して、日曜に帰ってくる旅のことだ。北海道を歩くためには、いち早く北海道に上陸しなければならない。先ほど挙げた3つの交通手段のうち、最も速いのは「航空機」である。
そして、その航空機が道内で最も多く就航しているのが、新千歳空港であり、その新千歳空港への直行便で最も多いのが羽田便である。
つまり、北海道への上陸は、羽田~千歳が最も速く、利便性が高い。
よって、本州からのアクセス第1候補は羽田~千歳の航空便である。

ただし、場所によっては空港が遠い地域に住む人もいるだろう。そうなると次に速いのが新幹線だ。東京駅等から木古内駅・新函館北斗駅まで行くことができる(札幌駅までは特急への乗り換えが必要)。

※ちなみに、「まだ新幹線が全通しておらず、速達効果は薄い。だから、札幌まで延伸したら乗ろう。」と考えている方がいるかもしれないが、この考え方は(少なくとも)徒歩旅において非常に危険である。
なぜなら、新幹線が全通すれば並行在来線が廃止され、駅と駅を結ぶ徒歩圏内の短距離交通が一気に不便になるおそれがあるからだ。
3セクが残ればまだなんとかなるが、バス転換、さらにはデマンドタクシー制に移行となれば都市間の徒歩移動は一気に難易度が跳ね上がる。
そもそも新幹線の役割は、のぞみ号をみれば明らかなように、大都市間高速輸送である。そうしないと競合相手の航空機に速度で勝てないからだ。新幹線も在来線も共に「鉄道」だが、両者の性質は明らかに違う。むしろ新幹線は航空機の地上版だと私は考えている。
そういうわけで、徒歩で旅をしている私にとっての新幹線開業は喜ばしいできごとではなく、憂慮すべき重大問題だということになる(あくまで私にとって、という留保はつくが)。

のぞみ号の静岡通過は有名だが、北海道新幹線も福島や宇都宮への直行便はない。これもやはり、札幌~東京間の速達が至上命題だからであろう。

船に関しては3つの中では旅情に富む移動手段だと思うが、速度が最も遅いので、週末にさっさと北海道に上陸して歩く、という目的には向かない。行って帰って終わりになる可能性もある。
ただ、函館~大間(1時間30~40分)などの短距離航路なら、視野に入る、というか下北半島から青森の新幹線駅や空港を目指すのは時間がかかるため、それならフェリーで渡ったほうが手っ取り早いだろう。

以上により、羽田~新千歳空港の航空便が最も速いことから、これを軸に北海道縦断の手順(サンプル)を作成した。その結果は次以下の通り。

・第1期:羽田~千歳(航空) 道央圏制覇
→千歳市~苫小牧市~室蘭市及び千歳市~旭川市辺りを歩いておく

・第2期:羽田~函館(航空)、東京~函館(新幹線)など 道南圏制覇
→第1期で函館まで歩いてしまっても構わないが、函館に直行したほうが楽なので、函館から北上して歩く。

・第3期:羽田~旭川 道北前半
→これも第1期の千歳編で実現可能だが、直行した方が楽だと感じるなら旭川空港を利用しよう。旭川空港編で道北すべてを完結させてしまっても良いが、道北の旅は列車ダイヤの関係で難易度が異様に高いため、前後半に分けるのも手。

・第4期:羽田~稚内 道北後半(完結)
→残った道北エリア(音威子府以北を想定)と宗谷岬を完結させる。

といった具合だろうか。
書いてみて途方も無い旅だなと感じる。
まあそれがおもしろいのだが。
これでもまだ物足りない方は離島(利尻・礼文、奥尻など)を歩いてみるのもよいだろう。

2.終わりに

また記事が長くなってしまいました…。いろいろ書きましたが、正直「そんなことわかってるよ」という風に思った方もいるかと思います。ただ、北海道の運転マナーが悪いというのは、北海道に住む人間としてどうしても伝えたかった。これは誇張表現でも何でもなく、私のリアルな実感です。先日も北海道八雲町の野田生という所で高速バスとトラックが正面衝突する事故が発生しました。これだけ悲惨な事故が起きてもなお、制限速度を大幅にオーバーして走る車が数多存在します。改めて、人類の学習能力の無さに失望するばかりです。まさに「そんなに急いでどこへ行く」と疑問符をつけざるを得ません。

徒歩旅を続けていると、モータリゼーションの弊害と闇、ファスト風土化する日本の風景などが浮き彫りになってきます。これは、車に乗るばかりで実際に歩かない人にはまず見えてこない問題です。
百聞は一見に如かず、旅すること、自分の眼で見ることは様々な気づきをもたらします。それは明日の日本、世界を考えるきっかけになるでしょう。
だからこそ、徒歩旅を広めたいのですが、事故に遭ってしまってはひとたまりもありません。あおり運転や暴走事故のニュースなどは皆さんもよくご存知だと思いますが、反省している様子が見えない加害者も多くいます。
それをその人の個人的道徳感情の欠如に帰することはもちろん可能でしょう。
しかし、こうも考えることができると思います。
「車という狭い個人的空間に閉じこもることで、私達の中にあったはずの他者への思いやりの心が、無意識に失われてしまっているのではないか」と。

話が少し大きくなりすぎましたね。
それでは、事故に気をつけて、よい旅を。

ご精読ありがとうございました。




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