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【短編】アイデンティティ
瞼の縁に、白いできものができた。
放っておけば、その内取れるかと思ったが、それはある程度の大きさ(胡麻粒くらい?)になった後、その場に居座り続けた。
さすがに目を開くと、視界に僅かにかかるようになってきて、お母さんに言われ、来週習い事がない日の放課後に、皮膚科に行くことになった。
「え、取っちゃうの?」
なぜか、友達に話したら、不思議そうに言われる。
だって、これは自分の身体の一部とかでもない。どこかを見るのにも邪魔だし。
「それ、小川のアイデンティティだし。」
アイデンティティ?
友達が言いたかったのは、顔の半分はマスクで隠されているし、それがあると、小川だと分かりやすいということらしい。
このことを、皮膚科で診察を待っている時に、一緒に来てくれたお母さんに話したら、爆笑された。お願いだから、ここで笑うのは止めてほしい。
いつかは取ってしまうそんなもので、自分と認識されてもねぇ。と言っていた。自分も同じように思った。
結局、皮膚科の診断の結果、脂肪が固まったものと分かり、その場で麻酔もなく、できものに穴をあけて、中の脂肪を搾り取られた。
涙が出るほど、痛かった。
瞼の上は皮膚も薄いので、かなり引っ張られたのだ。
そうして、瞼の上のできものもなくなった。もちろん、周りからはそれでも僕は僕だと認められている。僕の視界は広くなった。
【アイデンティティ】
①人格における存在証明または同一性。ある人が一個の人格として時間的・空間的に一貫して存在している認識を持ち、それが他者や共同体からも認められていること。自己同一性。同一性。
②ある人や組織がもっている、他者から区別される独自の性質や特徴。
(自宅にあったもの。古くてすみません。。)
終
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