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短編小説Only

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普段は長編小説を書いていますが、気分転換に短編も書いています。でも、この頻度は気分転換の枠を超えている。 短編小説の数が多くなってきたので、シリーズ化している(別のマガジンに入っ…
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#夢

【短編小説】泣かないで

また、この世界の夢を見ていると思ってしまった。 海沿いに建てられたテーマパークのようなところだ。 広大な駐車場、何棟も建てられたビル。それらはショッピングモールだったり、ホテルだったり、マンションだったりする。 現実世界で、このようなところに来た覚えはない。 なのに、頻繁にこの場所を夢に見る。 自分はここのホテルに泊まっていたり、マンションに住んでいたり、場合によっては、ここに隣接した一軒家にいたりする。 一軒家は、少し傾斜した場所に立っていて、一階は駐車スペースと、土

【短編小説】叶えたい夢

有名人が視聴者の夢を叶える番組が流れている。 それを見ながら、自分の夢を叶えることすら難しいのに、他人の夢を叶える力がある人はすごいなと、思ってしまう。 一緒に見ていた彼にそう話したら、彼は呆れたように口を開いた。 「叶えてもらえそうな夢を送ってるんだし、テレビ側も叶えられそうな夢をピックアップしてるんだから、そりゃあ叶えられるでしょ。」 「でもさぁ、それでもすごいと思わない?他の人の夢を叶えて、笑顔にできるのって。自分の夢を叶えるのだって、ままならないのに。」 「夢

【短編小説】会いたい人に、夢で会えた。

仕事を休んでみた。 特に用事も、予定もなかった私は、結局家でゴロゴロと過ごしている。 折角の休みなのに、もったいないと思う。 でも、こういう考えが、休んでいるようで休んでいないような状態を、生んでいるのではないか?せっかくの休みなんだから、何か普段はできないことをやろうなんて考えてしまって、でも、一人で出かけてもなと思ってしまう。 そんなことを考えていたら、私は広い部屋の中で、学生時代の同級生たちと、テーブルを挟んでしゃべっていた。 甘いサワーを飲みながら、私はこれは夢だ

【短編小説】貴方が夢に出てきました。(続 私たちは、よく眠りたいだけ。)

玉木さんと手掛けていたプロジェクトが終わったので、私達は仕事帰りに、近くの居酒屋で、打ち上げと称した飲み会を行うことになった。飲み会と言っても、参加メンバーは、私と玉木さん、2人しかいないのではあるが。 「無事終わってよかったですね。」 既に乾杯を済ませ、手元に持ったビールを口にしながら、彼がしみじみと告げる。 「まぁ、次の仕事も決められちゃったけどね。」 今回の仕事の成果がよく、私達はまた別の仕事を与えられることとなった。私と玉木さんは、今回の仕事の成果から組ませたほう

【短編小説】私たちは、よく眠りたいだけ。

眠いなぁ。 私はパソコンに向かいながら、あくびを噛み殺す。 その時、私の隣に立った同僚の玉木さんが、それを見ていたのか、苦笑して、声をかけてきた。 「打ち合わせの時間ですけど。」 「そうだったね。」 私は、今日の朝のメールチェック等が終わっていることを確認し、その場に立ち上がる。 「ブースは空いてた?」 「それが全部埋まっていたので、ラウンジでいいですか?2人だけですし。」 「いいよ。」 私達は、ラウンジと呼ばれている部屋に入り、脇にあるコーヒーメーカーからコーヒーを各自注

【短編】夢の中の彼

私は、友達といる時に、なぜかその場にいた男性に、包丁で切り付けられた。一瞬見えた男性の顔には、まったく覚えがなかった。 その後、私はすぐに医師の診察を受け、看護師に丁寧に傷の手当てをしてもらった。 傷の手当てをされ終わった私の隣には、見覚えのある彼がいた。 彼は私の様子を見ると、安堵したように微笑んだ。 彼の顔を見て、これは夢なんだと思った。 私には、よく見る夢がある。 迷路のような建物の中にいることが多い。ショッピングモールだったり、大型のホテルだったり、学校だったり。