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短編小説Only

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普段は長編小説を書いていますが、気分転換に短編も書いています。でも、この頻度は気分転換の枠を超えている。 短編小説の数が多くなってきたので、シリーズ化している(別のマガジンに入っ…
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#note

【短編小説】noteクリエイターチェッカー

最寄り駅の改札を出て、買い物でもして帰ろうかと、駅ビル内のスーパーに足を向けた時、後ろから呼び止められた。 躊躇いなく振り返った私が見留めたのは、肩辺りで切り揃えた髪を揺らした高校生らしき女の子だった。 「何かしら?」 「突然、話しかけてすみません。あの、noteクリエイターですよね?」 彼女の言葉に、私はとぼけた振りをして、「何の事」と呟いた。彼女はスーパーとは、反対方向のカフェを指差して、口を開く。 「もし、お時間良ければ、少しお話しませんか?」 「・・それほど、

【短編小説】ようこそ、クリスマスパーティーへ

部屋の片付けも済んだし、食べ物も飲み物も、狭いダイニングテーブルに並べた。後は招待客を待つだけだ。と思っていると、インターフォンが反応して、モニタに白いコートを着た女の子の姿が映った。 自分の想像していた人物像と違ったので、思わず言葉が出なくなる。招待客とはいえ、彼女を自分が住んでいる、ここへ呼んでもいいものか、と思ったが、相手も自分のことを偽っていたのだし、お互い様かと思い直す。 ここで、通話をしてしまうと、私の声で姿が想像できてしまうから、通話はせず、そのままオートロ

【短編小説】大人になって友達を作る方法

大人になると、友達を作るのが難しいと、何かのニュースで読んだことがある。そして今、自分はそれをひしひしと感じている。 まず、同じ職場の人とは、友達になれない。そして、仕事で忙しい自分は、特に人と関わるような趣味がない。休みの日は基本一人で過ごしているし、サブスクで映画やドラマを見たり、本を読んだり、ネットを見たりとかしかしてないし。外に、買い物や散歩には行くが、別に誰かと話をするわけでもない。 学生の頃は、学校という狭い世界があったから、その中で一緒に勉強するというのは、

【短編小説】ここではないどこか 2

部屋の中には、大きな本棚があって、そこに400冊以上の本が並んでいる。本は全て薄いけど、中身より立派な表紙がそれぞれついている。若干、薄汚れたものもあるけど、ほとんどは新しく、読まれるのを、お行儀良く待っている。それらの本の中身はすべて読みつくした。というか、記憶している。 僕は本棚の前の床に寝ころんで、本を読んでいた。もう何回目かになるか分からない。記憶しているから、読む必要はないと言えばないのだが、本の手触りとか、紙の匂いとか、最後のページに書き込まれたコメントとか、何

【短編小説】ここではないどこか

部屋の中には、大きな本棚があって、そこに400冊以上の本が並んでいる。本は全て薄いけど、中身より立派な表紙がそれぞれついている。若干、薄汚れたものもあるけど、ほとんどは新しく、読まれるのを、お行儀良く待っている。それらの本の中身はすべて読みつくした。というか、記憶している。 「仁詩。」 本棚を飽きることなく眺めていると、後ろから声をかけられた。紺のトレンチコートを着た説理が立って、こちらを見つめていた。 「時間ですよ?」 彼女は、手に持っていたリストを掲げて言った。そのリス