【短編小説】『湘南台』行きの電車
俺は、橋の上から、目の前に広がる海を見つめていた。
橋の欄干にもたれて、風に吹かれて、潮の香りを嗅いでいると、今自分が置かれている状況を忘れられる気がした。
朝、自分が乗るはずだった電車が、人身事故で運転見合わせとなった。運転再開の目途はたたず、駅ホームに立ち尽くした俺は、その場で会社に休みの連絡を入れ、逆方面の電車に飛び乗った。
その電車の行き先、『湘南台』という言葉に、海が見たいという気持ちを引き起こされたからだった。
だが、『湘南台』という名前に見合わず、終着駅の