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教員免許更新制の情報がわかりやすく整理された〜「廃止?」「有効期限は?」〜

2021年(令和 3)年8月下旬に、「教員免許更新制が廃止される」というセンセーショナルな言葉とともにメディアで大きく取り上げられました。この情報は、中央教育審議会「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会教員免許更新制小委員会という会議で議論された内容が元になっていたわけですが、文科省は一度も「廃止」という単語は使ってはいませんでした。

「令和の日本型学校教育」を担う新たな教師の学びの姿の実現に向けて
審議まとめ(案)

※本リンクは、意見募集後に行われた修正履歴付き版を貼り付けています。

<関連記事:2021年8月29日>
教員免許更新制度の「発展的な解消」について報道に振り回されないように自分で読んでみた。

このなんとも煮え切らない状態であった教員免許更新制の情報を間接にまとめた以下の資料が2021(令和3)年11月15日に公表されました。まだ(案)と記載されていますが「廃止」と「発展的解消」との違い、「有効期限」についても言及しています。

審議まとめに関する周知用資料(案)

とはいえ、文科省が誤解を招かないように掲載している文言となりますためもどかしい表現が多くあります。今回は、上記資料をより平易な言葉でまとめ直していきたいと思います。

1.教員免許更新制の「廃止」と「発展的解消」の違いは?

教員免許更新制が廃止されるのか否かという本題に入る前に、少し整理しておかなければならないことがあります。それは「廃止」と「発展的解消」という文言の違いです。
なぜ、文科省は「発展的解消」という単語を使うのでしょうか?
「廃止」される事項が該当するものが何を指すのかを整理するとより理解しやすくなります。

教員免許更新制を分けると以下の要素に分かれます。

1. 免許状には10年間の有効期間がある。
2. 有効期間を更新するには、2年間で30時間以上の免許状更新講習を受講して修了する必要がある。
3. この講習は更新講習を行っている大学に通って受講し、その費用は自費とする。
4. 講習を受講して修了しないと免許は失効され、地方公務員としての資格も失う。
5. 管理職は、教員が免許更新を怠らないように声かけをするように。

「教員免許更新制を廃止する」とは上記の要素を全て廃止するという解釈になります。文科省としては「確かに問題もあったが、良い部分もあった。良い部分は残しつつ、問題点を解消していこう」ということで「廃止」ではなく、「発展的な解消」という単語を使用しているようです。
特に、教員が学び続けるためのコンテンツ制作(高度な講義内容含む)は、教員免許更新制の成果ととらえており、今後もより先生が学び続けやすい形を検討しています。

一方で、「廃止」を検討されている要素は何かと言えば、

・有効期限の設定(地方公務員としての権利剥奪も含む)
・プライベートの時間と自費を使って、大学に通う講習

が該当すると解釈すると良いかと思います。
教員免許制度の当初の目的は、先生が職務時間内に、最新で高度な内容の知識を、常に前向きに身につけられるようにする、ことですから、その仕組みや環境整備を行っていくことが文科省にとっての「発展的解消」につながると解釈できます。

2.教員免許更新制の有効期限は?来年の講習を受ける必要があるの?

「廃止」と「発展的解消」の区別が理解できたとしても、いつから有効期限の廃止が実施され、いつまで免許更新講習をうけなければならないのか、という疑問が解消されたわけではありません。

この答えは残念ながら現時点では未定です。
現在、免許状が授与された時期等によって異なる部分があることから、すべての免許取得者が不利益を被らないように法的な検討・調整が進められています。文科省はこの検討・調整を早急に進めて2022年度の通常国会への法律提出を目指しているようです。

詳細が決まり次第、公表していくとのことなので、情報更新を待つことにしたいと思います。

3.発展的解消が行われた後の講習はどうなるのか?

教員免許更新の「発展的解消」を実現するたの次の段階についても検討されています。
最も大きな変化は、「新たな教師の学びの姿」を高度化するためにデジタルを使った「研修受講履歴管理システム(仮称)」の構築です。
下記のようなことができる学習プラットフォームのようなものが検討されています。

・研修受講履歴の記録管理
・履歴を活用した受講の奨励
・教員が自らが学び得た気づきをタイムリーに入力できる仕組み
・個別のテーマを体系的に学んだことを、全国的な観点から「質が保証されたもの」として証明する仕組み

この仕組みが実現すれば、今まで大学で行われていたような質の高い免許更新講習が、いつでも学ぶことができ、学んだことを証明することができるようになるわけです。

あとは、先生が学ぶ時間を確保できるようになる仕組みと環境の変化ですね。こちらも働き方改革という文脈が議論されていますので、前に進んでいくことを期待しています。


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