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2020年代に目指す「令和の日本型学校教育」とは?

「これからの学校教育はどうなっていくのか?」。この方向性を示した資料が最近、公表されました。
2021(令和3)年1月26日に、中央教育審議会から出された答申です。
この資料では、2020年代における日本の学校教育について実現すべき姿や、どう構築するのかについての方向性に関してまとめられています。

「令和の日本型学校教育」の構築を目指して
~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~(答申)(中教審第228号)

今回は、資料内容が膨大だったので、資料の構成をまとめて、筆者が気になった項目をご紹介したいと思います。

1.どんな諮問だったのか?

今回の答申は、2019(平成31)年4月17日に諮問されたもの(新しい時代の初等中等教育の在り方について)への回答としてまとめられています。
諮問内容><諮問概要><サイト

諮問するにあたっては、以下のような課題意識が背景にあったようです。

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上記のような背景を受けて、諮問内容は大きく分けて4つの事項に別れていましたのでキーワードだけまとめてみました。

(1)新時代に対応した義務教育の在り方
「着実な学力の定着に関すること」「学級担任制と教科担任制の在り方」「一人一人の能力、適性等に応じた指導に在り方」

(2)新時代に対応した高等教育の在り方
「各教科の在り方」「文系・理系に関わらない科目を学ぶこと」「STEAM教育の推進」「定時制・通信制過程の在り方」「地域社会や高等教育機関との協働」

(3)増加する外国人児童生徒等への教育の在り方
「外国人児童生徒等の就学機会の確保と教育相談等の包括的支援」「公立学校における外国人児童生徒等の指導体制確保」「母語の指導」「異文化理解や多文化共生」

(4)これからの時代に応じた教師の在り方や教育環境の整備等
「学級担任制や教科担任制を実施するための教職員配置や教員免許制度の在り方」「教育免許更新制の実質化」「多様な背景をもつ人材によって教職員組織を構成するための各種制度の在り方」「教師の専門性向上のための仕組み」「幼児教育の質向上」「いじめへの適切な対応」「自治体間の連携」「ICT環境や先端技術の活用」

2.答申の構成

今回の答申を真面目に読むと97ページの資料(本文)を読むことになるのですが、概要も作成されています。少しだけ資料の構成をまとめておきます。

「令和の日本型学校教育」の構築を目指して(答申)

総論[第Ⅰ部]と9つの各論[第Ⅱ部]で構成
<総論では>
5つのパートに分けて、これまでの「日本型学校教育」の良さや課題感を共有し、2020年代を通じて実現すべき「令和の日本型学校教育」の姿や、その姿を構築する方向性などを示しています。特にICTの利活用については、パートを分けて考え方や方向性を示しています。

1.急激に変化する時代の中で育むべき資質・能力
2.日本型学校教育の成り立ちと成果、直面する課題と新たな動きについて
3.2020年代を通じて実現すべき「令和の日本型学校教育」の姿
4.「令和の日本型学校教育」の構築に向けた今後の方向性
5.「令和の日本型学校教育」の構築に向けたICTの活用に関する基本的な考え方

<各論では>
9つのパートに分けて具体的な考え方や方向性を示しています。各パートは<総論4「令和の日本型学校教育」の構築に向けた今後の方向性>に関連した番号と紐づけて説明されています。

 1.幼児教育の質の向上について
 2.9年間を見通した新時代の義務教育の在り方について
 3.新時代に対応した高等学校教育等の在り方について
 4.新時代の特別支援教育の在り方について
 5.増加する外国人児童生徒等への教育の在り方について
 6.遠隔・オンライン教育を含むICTを活用した学びの在り方について
 7. 新時代の学びを支える環境整備について
 8. 人口動態等を踏まえた学校運営や学校施設の在り方について
 9.Society5.0時代における教師及び教職員組織の在り方について

3.筆者が気になった項目(学習の個性化)

総論3「2020年代を通じて実現すべき『令和の日本型学校教育』の姿」に「①個別最適な学び」と記載されている箇所があります。今まで学習の「個別化」や「個に応じた指導」という単語を見たことがあったのですが、「指導の個別化・学習の個性化」という単語に初めて出会いました。(これは筆者が勉強不足だったのかもしれませんが・・・)学習を最適に進めていくためには、同じ課題を個別に進めるのではなく、子供達の個性に合わせた最適な学習を求めていくということのようです。

<筆者の解釈>
指導:  個別 / 一斉 
学習: 画一的 / 個性的

※解釈が不安なので以下、本文の一部を貼り付けておきます。

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4.筆者が気になった項目(クラウドの活用を禁止せず)

総論5.「『令和の日本型学校教育』の構築に向けたICTの活用に関する基本的な考え方 (3)ICT環境整備の在り方」の中に以下のような文言がありました。

・GIGAスクール構想により配備される1人1台の端末は,クラウドの活用を前提としたものであるため,高速大容量ネットワークを整備し,教育情報セキュリティポリシー等でクラウドの活用を禁止せず,必要なセキュリティ対策を講じた上で活用を促進

5〜6年前にデジタル関係のサービス開発を行なっていた時には、クラウドサービスに対する不信感が強く、この感情が学校現場でICTの利活用を進めて行けなかった原因でもあったと感じています。
先生方にとってセキュリティがブラックボックス化していた(安全性も含めて)ため、そのリスクを正しく理解するような情報も与えられないまま、ICTの利活用を進めるようにうながされていた状況だったと感じています。
リスクや対処法の説明もなく、責任は先生に押し付けられ、「なぜ利活用を進めないのか」と言われてきた先生方にとって、このような文言が入っただけでも安心して取り組みを進めていけるのではないかと感じました。

実は、同じ項目に「家庭への持ち帰りを可能とする」というような文言も記載されています。今でも本当に家庭に持ち帰らせても良いのかどうかについて迷っている先生方に多く出会います。そういう点では、この方向性で動いて良いのだという指針が示されたことは大変重要なことなのではないかと思います。

5.筆者が気になった項目(人材不足の教員)

今までの学校の先生に関わるテーマといえば、「教員の指導力向上(専門性の強化)」「少人数学級(35人学級)」「外部人材の活用」「働き方改革」というようなテーマが目を引きました。
しかし、今回は、教員採用試験による倍率の低下などがあげられ、教員となる人材の確保について語られる箇所が目につきました。

今回の答申公表の少し前(2021年1月16日)には、

「令和の日本型学校教育」を担う教師の人材確保・質向上に関する検討本部

が設置され、本格的に教員の環境や制度について検討される流れがやってきているのだと感じました。萩生田大臣の会議の冒頭の言葉も掲載されており、本格的な検討が進んでいく温度感が伝わってきました。

「現行制度のあり方を根本から見直し、抜本的見直しも含めて検討する必要があると考えている。省内関係部局の皆さんで議論を尽くして、「『令和の日本型学校教育』を担う教師の人材確保・質の向上のための方策」をまとめ上げてもらいたい。従来からの継ぎ足しではない形で教師の養成の在り方も考えていかなければならない」(萩生田文科大臣の会議冒頭挨拶より)


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