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こどもの情報・データ連携って何しようとしている? 〜情報・データは、一元化ではなく連携〜

現在、日本は「デジタル立国」に向けた課題の整理などを行っています。
2021年9月にはデジタル庁を創設し、各省庁との連携をおこなっていきながら、官民のインフラを今後5年で一気呵成に作り上げることを目指しています。

この大きな流れの一つとして、教育・保育・福祉・医療等の「こども」に関する情報・データを連携していくための検討プロジェクトチームが組織されています。

こどもに関する情報・データ連携 副大臣プロジェクトチーム

今回は、このプロジェクトチームが目指している内容について取り上げていこうと思います。

 1.こどもの情報・データを連携しておこないたいこと

このプロジェクトチームが目指している方向性の結論を述べてしまえば、「真に支援が必要なこどもや家庭を見つけニーズに応じたプッシュ型の支援を届ける」ことにあります。

それには課題があります。それはこどもに関する情報・データが分散しているということです。
現在、こどもに関する教育・保育・福祉・医療等のデータについては、自治体内でもそれぞれの部局で管理されており、それぞれに児童相談所・福祉事業所・医療機関・学校等の多様な関係機関が存在しています。
この各機関は、それぞれの役割に応じて、保有する情報を活用して個別に対応に当たっているというのが現状です。

各種データの例
教育:就学援助の利用状況、欠席日数、遅刻・早退の状況
保育:登園状況
福祉:生活保護受給、児童扶養手当受給、親/同居者の虐待通告
医療:健診(身長・体重・体温等)、受診歴
経済:社会経済的背景、課税状況、転出入歴

「こどもに関する各種データの連携による支援実証事業について」p4より

さらに我が国では、「制度は整っていても情報が必要とする人に届かない」という申請主義という問題も抱えています。

それらの課題を打破するために、市町村や支援機関等が保健福祉や教育等の取組みの過程で得られた、個々のこどもに関する情報・データを活用して、こうしたこども・家庭を把握するとともに、能動的な「プッシュ型」「アウトリーチ型」※「ワンストップ」の支援が実現されるように、情報・データの連携の在り方について検討していこうというのがこのプロジェクトチームの発足趣旨となっています。

※「プッシュ型」とは、申請を待たず対象者に給付する支援のスタイル。「アウトリーチ型」とは、援助が必要であるにもかかわらず、自発的に申し出をしない人々に対して、公共機関などが積極的に働きかけて支援の実現をめざすこと。

2.検討にあたって想定されている留意点

目指している姿を実現していくために、留意しなければならない点もあります。
その一つは「個人情報」です。
会議メンバーの赤池内閣府副大臣は、「教育や福祉をはじめとする情報は、まさに国民、住民のプライバシーの塊であるため、個人情報保護法令の整合性だけでなく、国民の意識に沿った慎重な検討が必要」と述べています。

また、「どのように情報を管理していくか」という点も検討事項となりますが、ここについては「国が一元的にこどもの情報を管理するデータベースを構築することは考えていない。」と明確に記載されています。
恐らく、各種データを必要に応じてスムーズに閲覧できる、または活用できるシステムの構築が進められていくのではないかと考えらます。

こどもにおける情報・データは、出欠日数などといった客観データだけではありません。「いつも同じ服を着ている」「いつも眠そうにしている」など、主観的な意見と見えてしまいがちなデータもあります。このような定性的なデータの質をどのように扱っていくのかというのも検討事項の一つになります。

3.これから実証事業でユースケースを集める

「こどもに関する情報・データ連携 副大臣プロジェクトチーム」は、2022年1月21日に各自治体に対し、「こどもに関する各種データの連携による支援実証事業」の公募を開始しました。

以下のような流れで、実証事業を進めていこうと考えているようです。

■ こどもに関する各種データの連携の目的(想定するユースケース)の整理
   ↓
■ 自治体及び関係機関における分散管理の前提の下、データ連携に必要となるデータ項目の検証(子どものデータは一元管理しない前提)
   ↓
■自治体におけるデータ連携を実現するシステムや体制の在り方の検証
 ①自治体内でこどもの情報を包括的に把握する部署を構築し、当該部署が所管 するデータベースを整備
 ②自治体内で関係部署を統合せずに、 データ連携することで、情報を共有
   ↓
■制度面・運用面での課題等の検証

「こどもに関する各種データの連携による支援実証事業について」p7より

この実証事業の結果をもとにして、2022年6月を目処に論点を整理していく予定となっています。
さまざまな課題があるかもしれませんが、この理想的な状態がいち早く確立される日がくれば良いと考えています。

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