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書いてもいいのかもと思えたこと

なぜ書くようになったのか、第6回です。

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また今回も大きな転機となった講義について書かせていただきます。

その講義は、「オシムの言葉」などで知られる、ノンフィクション作家の木村元彦さんが講師でした。

その回は、作家の深沢潮さんが来てくださり、希望者4名がインタビューし、それを元にして原稿10枚を提出するというものでした。

深沢さんは、在日をテーマとした作品でデビューし、以降、それをご自身のテーマとして作家活動をされていらっしゃる方です。

僕も質問者として立候補しようと思っていたのですが、正直、何を聞けばいいのかわからないと思ってやめました。
僕の中で、そのテーマについてあまり深い考えを持っていなかったのです。
在日の方とは、僕の人生の中でも何人か出会いがありましたが、良い思い出が多く、まったくなんの違和感もなく交流を持っていたので、問題意識がなかったのだと思います。

深沢さんはとても誠実な方で、つたない受講生の質問にも真摯に答える姿が印象的でした。

4人のインタビューを聞き、さて、何を書くか。
今思えば、録音していたわけでもなく、ノートのメモ書きだけで10枚書いたというのはなかなかのものではないでしょうか。

日記を書き始めたとはいえ、まだまだ文章を書くということ自体に慣れていない僕。
それなりに一生懸命書き、その時の僕にできる最大限の力を発揮して、自分なりには納得感があるものに仕上げることができました。

次の講義で提出した原稿に対し、講評が行われました。

一番良かった人が最初に名前を呼ばれるといいます。
選者は、講師の木村さん、深沢さんご本人、宣伝会議の担当の方だったかと思います。

「むらいさん、むらいさんいます?」

みたいな感じで呼ばれたのだと思います。
僕は全く期待してなかったので、他にもむらいさんっているのかなと一瞬思いましたが、あれれ、僕のことだとわかりました。

「はい、います」

と僕は答えました。

僕の文章が他人に認めてもらえた最初の瞬間でした。

小中学、高校と、文章で褒められたことなどまったくなかったのです。

朗読してくださいと言われ、朗読し、木村さんがどこが良くてどこが悪いかを徹底的に教えてくれました。
なんとも贅沢な時間でした。

「あなたはたくさん本を読んできましたね。それがよくわかります」

と言われたのをよく覚えています。
確かに、学生の頃はそれなりにたくさん本を読んでいたのです。

「でも、内容はまだ弱いです。もっと深く書けるようにならないと」

とも言われました。

やはり書く動機が弱いということは見透かされていたのでした。

しかし、このとき褒められたことは、僕にとって大きな経験となりました。

あぁ、俺、文章書いてもいいんだなと思えたのです。
書くことが許された、というくらいの嬉しさでした。

それ以降、さらに積極的に講義に参加するようになりました。
毎回必ず質問するようになったのはこの講義以降です。
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続く

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