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思秋期というもの

精神科医の河合隼雄氏が何かの本で書いていた。

「中年には思春期と同じような思秋期と呼ばれるべき時期があるんです」

まさに中年の世代になった僕にはこれがよく分かるようになった。
糸井重里さんも40代は一度ゼロになることをお勧めすると言っている。
これはどういうことかというと、今まで生きてきた価値観を一度リセットする世代だということだと思う。

で、そうなるとどうなるか。
中学生みたいに夢を描き始めるのである。

まさに思春期と一緒だ。
あぁ、残りの人生であれもしたいこれもしたいとなるのだ。

人生の後半戦に入ったという気持ちはどうしても出てくる。
そうなった時に、今までの自分の生き方はどうだったのだろうと反省が始まる。
思った通りに生きてこれたのか、そうじゃないのか。

僕が気づいたのは、これまでの人生は悪くはなかったけれど、借り物の人生だったということだ。
親の価値観、社会の価値観、そこで育まれたものが自分の考えであると思っていたと気づかされるのである。

そうじゃないと。
残りの人生、そんな価値観で生きたいわけじゃないと気づいたおじさんが今の僕だ。

そうすると、中学生と同じレベルで、自分の価値観で残りの人生何ができるかと考えるのである。

そして、人間の多様性の豊かさに、改めて驚く。
人は、なんといろんな才能があり、なんといろんな価値観があるものかと。
その中で自分はどんな価値観を持って生きていくのだろうかと。

思秋期まっただなかの僕は、そんなことに畏れおののきながら、これからの残りの人生にワクワクしているのである。

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