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酒逢店主が「日本酒の楽しさ」を整理して語ってみるよ!

GW明けに久しぶりの投稿をしてみたら、たくさん♡貰えて嬉しいです。頭の整理にもなるので、今後もちょくちょく書こうと思います😁

↑この記事で「もっと気楽に地酒を楽しめる選択肢と場所を提供したい」みたいな方針について触れたのですが、本日の投稿では「では酒逢店主は、日本酒のどんな部分に楽しさを感じているのか?」あたりを整理して書いていきます。


楽しさ①:結構なレベルの感動が、けっこう頻繁にある

語彙力奪い取るレベルの美味しいお酒にも、ちょくちょく出逢える幸せ

最近だと「美味しくない日本酒」ってあんまり出会わないですよね。私が学生時代(四半期前)に居酒屋さんで出てきた「清酒」は…いや、なんでもないです。

格別に美味しい日本酒に出逢えた場合、「くぅ〜」とか「あぁ〜」とか、あまり言葉になってない、鳴き声みたいなのしか出ない状態になるんですが…、最近はそれすら別に珍しいわけではないくらい、まぁ…ちょくちょくある。

これ、すごいと思うんですよ。〇〇サワーとか、〇〇ボールとかだと、どんなに凝ったやつでも「へぇ〜美味い!」くらいなもんで、鳴き声なんかだしたことないし、洋酒類は知識なさ過ぎて言及は避けますけど、だいたい世の中、感動するレベルで美味しいものはお値段も相応にお高いじゃないですか。

日本酒は…「普通のお値段だけど…こんなにお美味いの?」ってレベルがけっこうよくある。

歴史的に見て、消費者にとっては最高の環境にあると思う

これほど多様で高品質なお酒と気軽に出逢えて楽しめるのは、日本全国で1000を優に超える酒蔵さんが、供給過剰気味なマーケットの中で常に切磋琢磨していて、市場のボリュームゾーン(一升瓶で2000円〜4000円)に、技術・努力・アイデア・試行錯誤・哲学…ありとあらゆる熱量をぶっこんでいるから。

せっかく日本に住んで、アルコール飲めて、居酒屋文化に容易にアクセスできて、各酒蔵・酒屋の情報発信を日本語で理解できるなら、この超消費者優位の楽しい趣味に参加しないのはもったいない…と思う訳です。

楽しさ②:ガチャ的な要素

お上品に言い換えると「一期一会」とか

ギャンブル(スロットや宝くじ)ではなく「ガチャ」という比喩を選んだのは、「大当たり」「OK」「残念!ダブった(さっき似たようなの飲んだ)😅」はあったりしても、「ハズレ」はほとんど無い。

基本「ハズレ」が無い中で、その時その時の「大当たり!美味しい😁と思える出逢いが楽しめるのはいいですよね。

人間の味覚は繊細で、だからこそ不安定でもあって、当然その時のお料理、その時の体調・精神状態・飲む時の雰囲気でも左右されるものです。

日本全国の酒蔵さんが造る、膨大な数の銘柄の中からの一期一会的の素敵な出逢い、日本酒を楽しくしてくれる大きな要素だと思います。

今、「ガチャ」的な楽しみ方が成り立つのはハズレ(不味い!)がないから?

私の印象では…、酒好きの先輩方、大先輩になればなるほど「俺は〇〇しか飲まない」(〇〇は"辛口"だったり、銘柄名だったり)的なこだわりをお持ちの方が多かったように思います。

今思えば…

  • 選択肢も今ほど豊富でなく

  • 手にできる情報量は今と比べるべくもなく

  • 当てずっぽうにお酒を頼むと…残念なお酒も少なくない

そんな時代にハズレを引かないやり方だったのかもしれません(無根拠)

ハズレを恐れる必要がない中で、とりあえず飲んでみて、美味しかったらスマホでポチポチすれば「おおー!こんな酒蔵さんで造った、そんなお酒だったのかぁ〜」ができるの今の環境は素晴らしいです。

楽しさ③:神秘的な雰囲気

美味しい日本酒に出逢うと、いまだに思う「これ米なんだよなぁ…凄いなぁ」

だって原料は「お米」ですよ?「はい、これで美味しいお酒造って」って目の前に米袋をドスッと置かれたら、途方に暮れるしかない。これだけ飲んでるのに、いまだにある種の神秘的なものを感じます。

心を揺さぶられて、その理屈がわからないときに"魔法"を感じる

小さい頃、TVのチャンネルがダイヤルからリモコンに変わった時はびっくりして"魔法"を感じました…、すぐ慣れたけど。電話BOXからガラケーへ、ガラケーからスマホへ移行していった時もそうだったけど、そっちも慣れちゃいましたね。

機械系は新技術が直ぐに陳腐化してしまうからなのか…?「どこのメーカーの製品でも、その機能はあるよね…」ってなると"魔法"じゃなくなるのかも。

しかし日本酒は…こんなに飲んでるのに、生産工程の理屈とかも把握はしてるのに、全然飽きずに神秘性を感じるのは…「職人が、心を込めて、手造りで」みたいな要素なのかもしれません。

売り場・提供場所も重要なファクター

考えてみると同じ日本酒でも、スーパー・コンビニに陳列されているお酒(特にパック酒とかカップ酒とか)からはあまり"神秘性・魔法感"を感じない気がします。

また個人的には、飲食店で日本酒を注文するなら、チェーン店でタッチパネルやスマホオーダーするよりも、強面の大将にお勧めを出して欲しい感じはあります。"日常"・"システム化"・"効率化""魔法"は両立し得ないのかもしれません。

地酒屋も…、末端ですが神秘性を損なわないように頑張らなきゃです😁

さて、それではここで酒蔵=「魔法使いの館」を見てみましょう

以下、北から順に、蔵の正面が綺麗に撮れてたやつを選別してずらっと

【萩の鶴・日輪田】醸造元 萩野酒造さん@宮城県栗原市
【出羽桜】醸造元 出羽桜酒造さん@山形県山形市
【昇龍蓬莱・残草蓬莱】醸造元 大矢孝酒造さん@神奈川県愛甲郡
【満寿泉】醸造元 桝田酒造店さん@富山県富山市
【片野桜】醸造元 山野酒造さん@大阪府交野市

自分じゃ絶対に作れないモノを職人さん達が造っているという点では、そこら辺の工場とかでも同様ですが、酒蔵に感じる神秘性は…【刀鍛冶の作業場】に近いように思えます。やはり"伝統技術"・"非日常"・"手造り"・"少量生産"が神秘性をもたらしてくれてるんでしょうか?

  • 片田舎にポツンとありがちで

  • 気楽に立ち入れない(特に仕込みシーズン中は)

  • 国酒であり、神事と密接な関係がある日本酒を造ってる場所

  • 純和風で年代物の建築物がノスタルジーを強めに発散

  • 特殊な技術で米→美味しい酒に形を変える!不思議!すごい!

  • 造ってるお酒を実際に飲むと美味い!

刀鍛冶の里みたいな感じ?そこに鉄地河原鉄珍と弟子たちの日常がありそうな…
やはり神秘的!やっぱり「魔法使いの館」ですね😁

楽しさ④:歴史的な要素

連綿と紡いできた歴史、試行錯誤、技術革新の最先端で遊ばせてもらってる

日本酒だけでなく、お酒全体で考えた場合、起源はきっと人類がウホウホ言っていた頃に、たまたま良い感じで腐敗した果実なんかを「大丈夫かな?でも腹減ったな…」と食べたらアルコール発酵してて酔っ払って気持ちよくなったんだろうと。

そしてその多幸感から、「絶対に安定的に再現したい!」と情熱を燃やした酒好きの先輩方がいっぱいいたんだろうと確信しています(ギャートルズ史観)

日本では縄文時代に果物やら木の実でお酒を造っていた形跡があるそうです。それから稲作が主流となる弥生時代を経て、米を原料に酒造ってみるトライ&エラーがスタート、大昔は口噛み酒、4世紀には「麹」を使いだしたとのこと。

日本酒造りも、近代以降だけでも、不況やら戦争やら天変地異やら、大変なことがいっぱいありました。4世紀からなんて言い出したらそれこそ数え切れない。

数え切れない苦境のなかでも試行錯誤を繰り返し、技術をバトンタッチして、今の日本酒の品質になっていると思うと、酒好き&歴史好きとしては胸が熱くなり、つい飲み過ぎて顔も赤くなります。

更には、造っても飲んでくれる消費者がいないと伝統も技術も継承されないわけで…、どんな困難な環境でも、お財布にもアレだし、身体にも…良いわけではない産業を飲み支えてくれた酒飲みの大先輩達に感謝してもしきれないです😁

麹米@桝田酒造店(満寿泉醸造元)さん

楽しさ⑤:「現場の頑張り・経営の挑戦」、製造業の物語的な要素

酒蔵は「魔法使いの館」。でも現場で造っているのは"魔法使い"ではなく、町工場の職人さん?SimCityの市長?みたいな人達

「酒造」とは言いますが、人間はいくら頑張っても「でんぷんの糖化」もできないし「アルコール発酵」もできない。だから実際にお米を日本酒にしてくれるのは「麹菌」と「酵母」の働き。

なので人間が行う「酒造」「菌が美味しい日本酒を作れるような環境を整備し、可能な限り設計図通りになるよう制御すること」になります。

しかし相手はなにせ「菌」ですので…、思うようには働いてくれない。まず言葉が通じないし、訓練もできないので発酵の状態や色々な数値を見ながら、理想の状態からズレないように制御をすることになります。

「これやっとけば必ず計画通り」は無いので、ズレる→対処→問題→対処…の繰り返し。SimCityの市長みたいなイメージ。

「いつも通り」にはなってくれない…吸水・糖化・発酵・溶ける溶けない

主原料は「お米」。農産物なので、同じ産地・同じ品種のお米でさえも、天候の影響で品質が毎年変わる。

酒蔵の方と「今年のお米」テーマでお話していると「量の確保」「値段」「硬い」「急に溶ける」など、色々ご苦労を伺います。

それでもズレる→対処→問題→対処…を繰り返して「仕様書・設計書・レシピ」に極めて近づけて、消費者が満足する製品に仕上げるんですから…頭が下がります。まさに「職人芸」です。

"これでより美味くなるはず"を信じてリスクを背負った「プロフェッショナル仕事の流儀」的な挑戦の物語も

10年目若輩酒屋である私は、「新ブランド立ち上げ」「けっこうな額の設備投資」みたいなプロジェクトに立ち会ったことはありませんが…、「その時はこうだった」みたいな話はいくつか伺ったことがあります。

「社運をかけた経営計画に、当初しぶっていた銀行も融資を引き受けた」「設備が稼働し、最初のタンクを絞る」「酒質が…明らかに変わっていた」「まさに蔵元が狙っていた通りの味がそこにあった…!」

♫〜 ずっと探していた理想の自分って〜♪(スガシカオの声で)

的なやつです。

もちろんそんな「劇的な変化で大成功!」な物語ばかりではないと思いますが…

世の中の移り変わりや技術革新がこれだけ早いなかにあって、「変えないこと」もリスクです。しかし変えたからって世の中から好意的に受け入れられるかどうかなんか分からない。リスク背負って、チャレンジして、理想と現実の微調整して…、「結果大成功!」はもちろん、「いまだ道の途中だけど理想に向けて一歩一歩」みたいな物語をツマミに、そのお酒を飲むと格別に美味しかったりします😁

今回は…だいぶ長文になってしまいました

以上が私が考える「日本酒が楽しいと思う5つの要素」になります。「あの造り方」「熟成すると」「お燗すると」といった具体的なものではなく、ちょっとメタ的なことだけを並べてみました。

面白いね、いいねと思って頂けた方は…当記事にいいね、拡散のご協力、だけでなく、変わらぬご愛顧…だけでもなく、お友達を連れてきてくれたりとか、行きつけの飲食店さんをご紹介してくれたりとかすると嬉しい限りです😁

最後まで読んで頂いてありがとうございます。今後とも何卒よろしくお願いします。

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