透明ベーシスト
透明人間がバンドに加わった。
知っているのはメンバーだけ。
ベースの腕は一級品、かなり練習したんだろう。
これでバンド演奏に深みが加わった。
その姿は観客には見えない。
でもベースの音は確かに聞こえている。
玄人には、演奏に深みが増したことがわかった。
でも、なぜなのかわからない。
透明人間には誰も気付かない。
おかげでバンドはとても有名になった。
「音に深みがあるアーティスト」として有名になった。
でも、ベーシストの存在は誰も知らなかった。
評価されるのはバンドと音楽。
透明人間の存在は誰も知らなかった。
透明人間だって、人間だ。
時には注目されたくなる。
気付いてもらえなくて寂しくなる。
でも、そのためにバンドをしてるんじゃない。
伝えたい音があるんだ。
わかってくれる人がいる。
それだけで、たまにとても救われる。
「お前のおかげで、ここまでこれたよ」
「あのバンドには目に見えない何かがある」
メンバーとファンが気付くものこそ、
透明人間が築くものだ。
今日もまた練習しよう。
あの人に届くように。
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ハーフフィクション小説『思考と対話』〜人生に物語を、物語に人生に〜
発行元 : 勉強を教えない塾 福幸塾(www.fukojuku.com)
発行責任: 福田幸志郎(じゅくちょう)
※ この物語はハーフフィクションです。
登場する人物・団体・名称等は……半分創作であり、
実在のものとは……半分関係があります。
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