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自然体で働けることが、一番の豊かさである

〜 カリスマエステティシャンに学ぶ、「豊かさ」のヒミツ 〜

かおりちゃんは、京都の亀岡に住むエステティシャンです。

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アパートの一室から始まったかおりちゃんのキャリアは、時に百貨店グループで日本一の売上を叩き出し、時に事業拡大が裏目に出て自己破産を経験し、気付けば20年が経っていました。

今では、独自のエステ技術「トリムリターン」を確立し、加盟店も80店舗を超え、エステスクールとしても発展を遂げました。

しかし、かおりちゃんの中には、まだ満たされない何かがありました。本当の試練は、20年目に訪れたのです……

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「昼は施術、夕方は撮影、晩は会議、明日は福岡へ」

2019年春、かおりちゃんの事業は急成長していました。
コンサルタントを雇って経営チームを作り、インストラクターを育てて後進育成を任せ、サービスの拡大へ。

「これで少しは経営状態も良くなるはず」

これまで20年、ずっと資金繰りに苦労してきました。売上が増えて経営が安定すれば、安定的に事業を発展させられるはず。すべては、独自技術「トリムリターン」を世に広め、未病に悩む人を救うための挑戦でした。

もうすぐ仕事が楽に回るようになる。そんな想いで、かおりちゃんは必死に働き続けました。しかし……

「今月も、資金繰りが厳しい」

働けど働けど、経営状態は安定しません。
新規顧客は増え、売上も伸びてるのに、同じくらい支出も増えています。そして、仕事量もますます増えていきます。

広告費、コンサル料、スタッフ給与、出張旅費……
動画制作、スタッフ講習、施術、情報発信……

売上が伸び、支出も増え、その支出をまかなうために労働時間も増える。かおりちゃんは悪循環に陥っていきました。

毎日朝から晩まで働き続けるとどうなるか、想像はつきます。季節が夏に移る頃、かおりちゃんの身体に異変が起きました。

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「心が重い。体が動かない。でも、仕事しないと……」

極度に疲れ果て、かおりちゃんの心と身体は感覚が麻痺していました。喜びや苦しみを感じることより、目の前の仕事をこなすことばかり考えていたのです。

トリムリターンでは「自分の心と体を感じることを大切にしてください」とお客様に伝えています。しかし、自分がそれをできていない。

(着実に事業は広がっているはずなのに……)

その状況が危ないと気付いたかおりちゃんは、勇気を出して仕事の予定をキャンセルしました。

「これは、トリムリターンが目指すべき未来じゃない!」

直近で必要な支出や、埋まっている仕事はありました。それでも、かおりちゃんは思い切って3ヶ月の休暇を取ることにしました。

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「今日は、何をして過ごそう? どこへ行こう?」

最低限、まわりに迷惑をかけないように技術講習だけは続け、発信や経営は休止。なるべく仕事も何もしない時間を増やしました。

休みに入ると予定は何も決めず、フラフラする時間を増やしました。仕事の準備も、人と会う約束も、ブログの更新もなし。最初は時間を無駄にしている気がして、気持ちが落ち着きませんでした。

(そういえば、こんなにゆっくり過ごす時間は、この20年なかったな……)
一日をゆっくり過ごしながら、かおりちゃんは心と体に身を委ねました。意識して何かしようとするのではなく、気が向けば散歩や昼寝を重ねる。ゆっくりと時間が流れていきました。

(……私、自然に触れたり、人と過ごしたりするのが好きだったな)
1ヶ月ほどのんびり過ごしたところで、少しずつ身体からエネルギーが湧き出てくるのがわかりました。夏の夕暮れの海辺は、風が心地よい。風に吹かれていると、昔の楽しい思い出が蘇ってきます。

海で泳いだこと。
家で友だちと遊んだこと。
畑の野菜を収穫したこと。

自分の心が喜びを感じていたことを思い出してきました。心を取り戻した上で、もう一度夢と向き合ってみると、見えてきたことがありました。

「夢は、心を犠牲にして実現するものじゃないよね」

トリムリターンを世に広め、未病の人たちに貢献したい気持ちは変わっていません。でも、それは自己犠牲の上に成り立つものじゃない、ということを思い出しました。

「もっと自分自身が心と体を感じよう」

そして秋、かおりちゃんはようやく仕事に復帰しました。

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それからは、お客様やインストラクターとの交流を重視しました。遊び心を大切に、自然のあるところへも出かけます。人と食事や談笑を楽しむ時間もしっかり味わいました。

「かおりちゃん、最近笑顔が増えましたね」
周りから見てわかるくらいに仕事のペースを取り戻してきたところで、かおりちゃんは前から温めていたプロジェクトに取り掛かることにしました。

「亀岡にある温泉宿で、湯治と絡めた施術ができないかしら?」

体を緩めるエステと温泉は、相性バツグンです。ちょうど自宅の近くには湯の花温泉がありました。かおりちゃんは取り戻したエネルギーを存分に発揮して、久々の営業活動を始めました。すると……

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「ちょうど、エステサロンの新設を考えてたんです」

湯の花温泉の旅館の一つ、渓山閣から色好い反応が返ってきました。すぐにかおりちゃんは担当者と密に連絡を取り、プロジェクトの実現が可能か検討に入りました。

新しくサロンをオープンできれば、講習を終えたエステティシャンの仕事の確保になります。しかも、旅館業や観光業とタッグを組めば、「未病ケア」の周知にも効果的です。

ただし、それで再び忙しくなって心身が疲れては意味がありません。かおりちゃんはトリムリターンにかける想いと旅館の構想がかみ合うか、慎重に検討を重ねながらプロジェクトを進めました。(もちろん、自分自身の休息や心のゆとりも大切にしながら)

そして、結局目立ったトラブルもなく、冬にはサロンのオープンが実現しました。

(前は、あんなに必死に仕事を取りに行っていたのに……)
拍子抜けするくらいスムーズに新しい仕事が生まれ、かおりちゃんはちょっと不思議な気持ちになりました。働いても働いてもなかなか前に進まなかった、かつての働き方とは展開がまるで違ったからです。

立ち上げの忙しさが落ち着き、少しずつ現実を受け止められるようになってくると、かおりちゃんはこれまでを振り返りながら思いました。

「必要とされる仕事は、向こうからやって来るのかも?」

今までは肩に力が入ったまま仕事をしていたけど、最近は自然体でいられる。リラックスしてるから笑顔も自然だし、身体も軽やかに動く。だからこそ、まわりの人との関係もスムーズに広がっていく。

「……もしかして、これが本来の私?」

今まで力を入れてきたやり方とは違う、自分の新しい魅力が垣間見えたような気がして、かおりちゃんは嬉しくなりました。もしかしたら、もっと肩の力を抜いた方が、仕事がまわるのかもしれない……そう思いかけていた矢先、

季節は2020年の春になりました。

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「すみませんが、予約をキャンセルさせてください」

2020年4月7日、日本全体に緊急事態宣言が発令されました。

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大です。

濃密接触を伴うエステサロンは、軒並み自粛。かおりちゃんのサロンも例外ではありませんでした。オープンしたばかりのサロンの来客も、これまでのお客様の予約も、すべてキャンセル。長い営業自粛が始まりました。

当然、売上は激減。当面見込まれていた収益もすべて白紙になりました。

(せっかくこれからだったのに……)
売上を確保しようにも、動き回る術がありません。出張もできない。施術もできない。集客もできない。自宅で待機する日々が続きました。

(今回はさすがにもうダメかもしれない……)
家にこもっていると、どうしても気持ちが暗くなります。悪い方にしか考えられず、眠れない日々が続きました。

不幸中の幸いでしたが、かおりちゃんは似たような悪循環を数ヶ月前に経験していました。そのままにしておくと、心と体が麻痺してしまうことは目に見えています。

(せめて、自分の気持ちだけでもフラットに保とう)
気を紛らわせるため、かおりちゃんは料理や掃除、散歩の時間を増やしました。お金はなくとも、住む家と食べるものはまだ無事にあります。苦し紛れの日々が続きました。

すると、不思議なことが起きました。

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「こんなに危機的な状況だけど、私は生きてる!」

ニュースからは不安と危機しか流れてきませんでしたが、かおりちゃんの心がそこにとらわれることはありませんでした。

近所に出れば、野菜を作っているお隣さんが差し入れをくれます。
オンラインには、共に苦境を乗り越えようとしている仲間がいます。
ご飯を食べれば、自然の恵みを感じ、身体の鼓動が聞こえます。

(仕事はできないかもしれないけど、一人になったわけじゃない)
身近な人のつながりを感じられたことで、かおりちゃんは元気を保ち続けました。

しかも、仕事は想像していたほど悲惨ではありませんでした。売上はなくなったものの、支出も減っていたため、必要経費以外の出費は避けられたのです。

お金は、稼げなくても使わなければ問題ありません。当たり前のことかもしれませんが、それに気付いてかおりちゃんの心に余裕ができました。支出のため、必死に稼ごうとしていた頃がウソのようでした。

そして、緊急事態宣言の発令から二ヶ月……

「……私、また仕事ができる!」

かおりちゃんは無事に自粛を耐え抜き、サロンの営業を再開しました。

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「予約の再開、お願いできますか?」
「自粛期間ですっかり身体が弱っていて」
「新しいお客さんを紹介したいのですが」

かおりちゃんが営業を再開したことで、お休みしていたお客様も次々と戻ってきました。中には、自粛で体調を崩した友人を紹介してくれた人もいました。無理に営業や集客をせず、自然体で穏やかに過ごしたかおりちゃんだったからこそ、安心して身を任せられたのかもしれません。

「やっぱり、私が私らしくいることが、トリムリターンには一番!」
過労と自粛という真逆の危機を二つ乗り越えられたことで、かおりちゃんはさらに確信を強めました。

トリムリターンは、お金を稼ぐために存在しているわけではない。
エステティシャンやお客様が、自分らしくいるために存在している。

自分らしさを求める人がいる以上、トリムリターンはなくならない。

確かに、事業や生活を営むにはお金が必要です。お金がないとできないこともたくさんあります。でも、お金のために働くのは本末転倒です。

自分らしくあること。自分らしく人や自然とつながること。その先に、世の中から必要とされる仕事やお金が生まれます。

かおりちゃんはそんな生き方・働き方を体現しようと、今日も自然体でのびのびと仕事を楽しんでいます。
(To be continued...)

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