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米澤穂信『世界堂書店』(文春文庫)

 海外の短篇小説を集めたアンソロジー。「世界堂」を謳うだけあって、フランス、アメリカ、台湾、オーストリア、ウルグアイ、フィンランド、中国、イギリス、ギリシア、アイルランド、日本と、できるだけいろんな国の作家を選んでおり、この多様性は編者の狙いだと思う。
 海外小説をそれなりに読んだ、と自覚する読者にとっては「けっこう知っているの多いなあ」と感じる瞬間も多いだろう。ぼく自身、収録されている15の短篇のうち半分以上、各作家の短篇集や別のアンソロジーで読んだことがあって、読んでいる最中、何度か「趣味が合うな!」と感じた。

 実直に選んだからこそおのずとこういう結果になったのだろうと感じた。しかし有名な傑作、定番のアンソロジー・ピースが多く収録されているということは、裏を返せば面白い作品ばかり載っている、ということ。
 実際ぼくも読み進めていて「つまらない作品が一篇もない」ことに感心した。アンソロジーってはずすときははずしますからね…なので、海外小説好きをうならせるというよりは、海外小説をあまり読んだことのない方への入門書として最適、お勧めです。


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