『こうしてイギリスから熊がいなくなりました』ミック・ジャクソン(創元推理文庫)
「どんな小説でした?」と問われたら「題名通りのお話でした」と答えざるをえない。そして「この小説読みました?」と尋ねて「読みました。面白かったです」と答えられたらきっと友達になれそうな、そんな小説。
いわゆる〈奇妙な味〉に分類される短篇集。連作の体をとっていて、それぞれの物語にさまざまな熊が登場する。人間の罪を食べてくれる「罪食い熊」、最後は芸が身を助ける「サーカスの熊」、ロンドンの下水で働かされる「下水熊」、潜水服を着た「市民熊」など、この作家らしい奇想と幻視で紡がれる。
解説を読むと実際のイギリスやロンドンの歴史に材をとっているのには驚かされた。ぼくはこの小説を読むまで、イギリス人が熊を絶滅させたことも、闘熊場(とうゆうじょう)が存在したことも知らなかった。
デイヴィッド・ロバーツのイラストがいい味を添えている。こういう小説を「創元推理文庫」で出版してくれる東京創元社がホント好き。この短篇集が楽しかったらぜひ同じ作家の『10の奇妙な話』を強くお勧めします。こちらも創元推理文庫のラインナップになっています。
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