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『わたしはイモムシ』のゲラを見てくださった方々のこと

桃山鈴子さん作品集『わたしはイモムシ』刊行にあたり、この本の特別協力者の方々をご紹介させてください。あと最後に大事なお知らせも。

NPO日本アンリ・ファーブル会
・前畑真実様芋活.comの共同管理人まみのすけさん)
・川邊透様昆虫エクスプローラ管理人、芋活.com共同管理人)

これらの方々に、全ページのゲラ(校正)をこまかく見ていただき、さまざまな指摘や有益なアドバイスをたくさん頂戴しました。皆様のお力なくしてこの本はできませんでした!


どなたにお願いするか?

掲載作品を選び、全体の構成案を検討していた2020年9月ごろ、桃山さんから相談がありました。
「虫についての私の知識は大学時代の授業や手持ちの図鑑によるところが大きく、同定ミスや用語の使い方などで間違いがあるかもしれません。校正段階で詳しい方に見てもらえたらと思います」
この本は図鑑ではなくアーティストの作品集ですが、作品は実際の虫を観察して描かれたもの。種名などにミスがあるのはよろしくありません。どなたかにチェックをお願いしようということになりました。

当初は昆虫分類学など専門家の先生に依頼しようかと考えました。
しかし桃山さんの描く展開図は、真上や側面から観察したイモムシの体を再構成した特異な造形。「学者としてこういう絵は判断できません」と言われたらどうしよう?という心配がよぎりました(面白がって協力してくれる先生もきっといると思いますが)。
また、この本には絵だけでなくエッセイ的な文章もかなり入っています。虫愛好家のリテラシーに照らして引っかかる表現がないかどうか、一般の方にもわかりやすい言葉になっているか、文章についてもご意見もいただきたいと思いました。

そこで、虫の知識とフィールドワーク経験の豊富なナチュラリストで、一般の虫愛好家との接点も持っている複数の方々にお願いしようということに。奥本大三郎先生が理事長をなさっている日本アンリ・ファーブル会(以下ファーブル会)と、イモムシ・ケムシ専門サイト芋活.com共同管理人で、伊丹市昆虫館の学芸スタッフでもある前畑真実さんにご相談しました。
ファーブル会も前畑さんも「虫の魅力を伝えてくれる本づくりにはできる限り協力します」と快く引き受けてくださいました。ファーブル会は、ファーブル昆虫塾塾長のNさんがまとめ役となって、Uさん、Kさん、Tさんの4人体制でチェックしてくださることに。前畑さんは芋活.com共同管理人の川邊透さんにも声をかけてくださり、お二人で見てくださることになりました。
超強力なサポーターチーム誕生です。

前畑さんが携わっている企画展「伊丹市昆虫館×箕面公園昆虫館2館合同 魅惑のいもむし・けむし展」はこちら!

前畑真実さんと川邊透さんの共著『癒しの虫たち』はこちら!


見ていただいて本当によかった!

2020年11月末、ほぼ全ページの初校がまとまりました。さっそく皆さんにお送りすると、たくさんの赤が入って戻ってきました。
「従来の学名と最新の学名がある場合どちらを掲載するのが適切か」「刺されると危険なケムシについての書き方はもっと配慮すべき」「アサギマダラのこの記述、ロマンはあるが実証されてないので書き方に注意が必要です」「この植物はこの虫の食草ではないはずですよ」……などなど、きめ細かなご指摘の数々。

たとえば、桃山さんがなにげなく書いたこの文章
「春から秋にかけて何回も繰り返される孵化から羽化までのサイクルに思いを馳せる」
前畑さんは「読んでいてちょっとだけ引っかかりました。すべての虫が冬にいなくなるわけではなく、冬も大事なサイクルのひとつなので…」と。
確かにそのとおりです。植物が冬の間もじっと根を張って生きているように、卵や幼虫、蛹、成虫などさまざまな形で冬を過ごす虫たちがいます。
昆虫館のイベントで越冬する虫の観察会などを行なっている前畑さんならではのご指摘。ありがとうございます!

ナミアゲハの幼虫・蛹・成虫と食草であるレモンの木を描いた絵のタイトル「アゲハ類と檸檬の木」について、川邊さんからこんな指摘が。
「ナミアゲハと書かずにアゲハ類としたのはなぜ? もしかしてこの絵の蝶がキアゲハのようにも見えるからですか?」
桃山さんドキッ! ナミアゲハのつもりで描いたものの、以前にも複数の方から「キアゲハではないか」と言われて気になっていた絵だったそうです。ふたつの蝶の違いについて認識不足だった反省を踏まえ、川邊さんやファーブル会の方に資料をいただき作品そのものを描き直すことにした桃山さん。その経緯は『わたしはイモムシ』のエッセイに書かれていますので、ぜひお読みください。川邊さんありがとうございます!

↓左が描き直す前 右が描き直したナミアゲハです

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自然環境についての深いお話も

あるページで、室内で飼育した幼虫が蛹になり、やがて羽化して飛び立っていく様子を書いた桃山さん。その文章を読んで、ファーブル会のNさんはこのような話をしてくださいました。

自然の中では、無事に羽化に至るケースは本当にごく稀なこと。ほとんどの虫が卵や幼虫時代に外敵に食べられ、寄生され、天候や気温のちょっとした変化で大量に死んでいきます。でもそれでいいのです。虫はそれを見越して大量の卵を生み、卵や幼虫は食べられることで他の生き物の命になり、自然のバランスが保たれているのです。
幼虫を室内で飼うということは、自然界のルールから切り離し、守ってやり、その代わりに間近で生態を見せてもらうということ。飼育中に死んでしまったら、土にほうってやれば死骸は別の生き物が食べてくれる。室内で育ち羽化した成虫は、野外で生き残った個体よりも弱く、すぐに鳥に食べられてしまうかもしれない。それもまた自然のルールです」

室内飼育を否定するのではなく、室内の外に広がる自然環境に視点を広げて書くともっと内容が深まるのでは?とアドバイスしてくださったNさん。ありがとうございます。

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このほかにも多くの有益なご指摘、アドバイスをいただきました。間違いを正すだけでなく、桃山さんのアーティストとしての表現や感性について最大限尊重してくださったことにも感謝します。

こうしてできあがった本書はこちら↓で先行販売いたします!

ギャラリー・マルヒ 桃山鈴子個展
2021年5月15日(土)〜23日(日) *月曜休み
東京都文京区根津2-33-1(千代田線根津駅から徒歩5分)
https://konoike.org/blog/?p=3298

紀伊國屋書店玉川高島屋店 刊行記念パネル展
2021年5月15日(土)〜
玉川高島屋S.C.南館 5F(東急二子玉川駅からすぐ)

12ページのミニブックの特典付きです。緊急事態宣言下ですので、ご無理のない範囲でお出かけください。東京の感染状況しだいで今後変更の可能性もあります。

最後に大事なお知らせ。一般発売日が…

当初、一般発売は5/26を予定しておりましたが、諸事情ありまして少し発売が遅れることになりました! 申し訳ありません! 新しい発売日が決まりしだい、ツイッターなどでお知らせいたします。

また、一般発売後も、いくつかの書店さん向けに特典をつけていきます。ネット注文できるお店もありますので、直接足を運べない方はぜひそちらをご利用ください。こちらの情報もツイッターでお知らせしていきます。


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