泣いてもいいんだ。/中山有香里「泣きたい夜の甘味処」
「泣きたい夜の甘味処」は、中山有香里さんのマンガです。
真夜中にだけ営業している、鮭と熊が店員の甘味処。
一日に一品だけのメニューに救われ、「泣きたい」気持ちに素直になれた人たちの、温かい涙がこぼれる物語です。
また、マンガ本編の登場人物たちは知らない描き下ろしの物語や、レシピも収録されています。
この本はこんな人におすすめ
①甘いものが好き
②つらいこと、悲しいことがあった
③泣きたい
それでは、本作品の魅力をご紹介していきます、ぴょん!
*「やさしい」世界観
本作の魅力のひとつは、優しいタッチのイラストです。
風景や人物はもちろんのこと、甘味のイラストはどれも美味しそうで、思わずじっくりと眺めてしまいます。疲れたときにも癒されながら読めるので、活字を追う元気がないときや、気分が落ち込んでいるときにもおすすめです。
また、この甘味処を営んでいるのは、寡黙な熊と、世話焼きでフレンドリーな鮭のふたり(?)。
お客さんに甘味を通してそっとアドバイスをし、傷ついた心に寄り添ってくれます。
こんな優しい世界が、どこかに広がっているといいな。そんなふうに思ってしまうような一冊です。
*美味しそうな甘味とお客さん
本作のいちばんの見所は、「甘味」と「お客さん」のつながりです。
甘味を通して蘇ってくる想い出、甘味を通して気づくこと。切なくも温かいストーリーが、一冊にぎゅっと閉じ込められています。
それぞれに人生があり、想い出があり、悩みがあり、悲しみがあり、「泣きたい夜」がある。そして、それを静かに肯定してくれる場所がある。
ひとつの甘味がつなぐ未来と過去、人と人、想いと想い、その緻密な描写に何度も読み返したくなりました。
また、甘味のレシピも併せて収録されているので、登場したものを実際に手作りすることも可能です。私は、涼しい季節になったら「ドーナツ」を作ってみたいなと思いました。
優しい世界観と美味しい甘味、感動のストーリーに温かな涙がこぼれる本作。
ぜひ、「泣きたい夜」のお供にしてみてください、ぴょん!
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