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50代からの住まい#1 トイレ

 お体が不自由になって、自宅に戻られて困ることナンバーワンはトイレです。ですから、バリアフリー住宅、シニア向けマンションとうたわれている物件を見るときには、まずトイレを見ます。しかし、配慮されているなと思える物件は本当に少ないです。

ある大手メーカーのバリアフリー住宅の説明会に参加させてもらった時に、60代のお客様の建て替えプランの間取りを見せてもらったのですが、トイレの位置が階段下スペースで、奥に長い形状で、寝室から離れている位置にあったため、このトイレの位置は歩きにくくなった時や万が一車いすになった時に使いにくいと思います、と営業の方に伝えたところ、「そうなったらポータブルトイレを使えばいいんです!」と自信満々に答えられました。すでにご提案する直前の出来事で、修正できずそのままご提案されてしまいました・・。

住宅のバリアフリーでまず目につくのは玄関の框や段差の解消でしょうか。もちろんそれも大切なのですが、トイレとの違いは、使用するタイミングを決められるかどうか、です。移動は『今度息子の手が空いた時に手伝ってもらって外出しよう』や、『ヘルパーさんが来てくれた時にお願いして隣の部屋の物を持ってきてもらおう』、『お風呂は週3回デイサービスでいれてもらおう』ということができますが、トイレは生理現象なので、そんなに悠長に我慢することができません。また夜間にも行きたくなることがあります。

そして、排泄行為というのは誰に見られてもいいというものではありません。できればギリギリまで自分でしたいと思う行為の一つです。人の尊厳にかかわる行為で、たとえ24時間気にせずお手伝いをお願いできる方がおられたとしても、できれば最後まで自分でしたいと思う行為なのです。間取りで解決できる問題であれば、そこは一番重視するべき箇所だと思っています。またハウスメーカーの方がおっしゃった、ポータブルトイレやおむつなどの利用が悪いわけではありません。その方法がその方の状態や環境でベストであることもありますし、そのことに特に抵抗を感じない方もおられます。

以下に私がトイレの間取りで重視しているポイントを簡単に記します。

①長辺方向に出入り口があること。入口から便器までの距離が近くなることと、入ってから回転する距離が少ないこと、介助者のスペースが作りやすいことが主な理由です。

②扉が引き戸であること。ほとんどのトイレがスペースの関係もあり開き戸であることが多いです。開き戸の場合、ドアを閉める時(もしくは開ける時)にバックしながら回転するという動作になるのですが、そこでバランスを崩し、よく転倒されます。また、車いすとなると、扉を開けるためのスペースと車いすが干渉するため、車いすで扉を開けながらトイレから遠ざかり、そこから戻ってきてトイレに入るという動作になります(座位バランスが良ければ立っているときと同じように手を伸ばして開くこともできます)が、もちろん中から扉はしめられないので全開状態となります。

③寝室に近いところにあるということ。その方専用であれば寝室のすぐ隣でもいいですし、もしくは室内の一角に設けるというのもありだと思います。ただ、ご家族がいると音の問題もあるので、たちまち介護が必要な状態でなければ、寝室の収納の隣にあるような間取りだといいのではないかと思います。トイレまで行くのが大変だけれども、近くにあれば行けるという状態になったら、収納をやめ、トイレの側面に扉を設置し、直接トイレに行けるようにリフォームするという案です。

加齢によってすべての方が同じような状態になるわけではありません。また、それらに備えた完璧な間取りがあるわけではありません。しかし、今から新築を建てる、リフォームされるという方は少し備えられてもいいのでは思います。

視点はちょっと違いますが、わたしが好きなYouTubeのゆっくり不動産で紹介されていた以下の物件ですが、お一人暮らしの元気な車いすユーザーが住まれていたのかなぁと思いました。鏡はちょっと良くわかりませんでしたが(笑)。お一人住まいでしたら水回りを一つの空間におさめるというのはお勧めです。

https://youtu.be/vn6MLZYetvw【変わった間取り】水回りが不思議なリフォーム済み1LDKを内見!

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