僕が走る理由のひとつには…(宮崎の片隅のランニング日記 3)
第3回 10.09km Running(2022/02/16)
空気の澄んでいる今の時期。朝夕ともに地平線付近はオレンジ色と青の入り混じった幻想的な色を醸し出しているし、星や月の名残をうっすらと感じられる。
ここんところ月が満月へ差し掛かっていたこともあって、15時くらいからは白い色をした月が徐々にその存在感をあらわにしていた。時間が経つにつれて版画を一刷り二刷りとするように輪郭と色がはっきりしていく。
2月16日、この日は一ツ葉有料道路・北線〜阿波岐原(あわきがはら)樹海をランした。仕事が終わり、出先と家のあいだに位置するみやざき臨海公園に車を置いて、ランスタイルに着替え走る。
今日も10kmランニング。スピードは前半1km6分30秒〜6分、後半1km5分20秒台のペース。
臨海公園は駐車場が海に面していることもあって、すでに海上には大きな薄黄色の月がぼんやりと顔を出していた。9割型の満月未満。それでも十分すぎるだろって雰囲気。厳か。やばい、これはラン中にかなり綺麗なやつが見れるぞ、と期待が高まる。そんで今回のランは月をじっくり楽しみたいがためにペースを早くしないことも決意(いうても後半5分台で走っちゃう)。そうそう、僕は月が好きなんです。満月の海沿いを夜ランするとほんとに感動するのでおすすめ。暑い季節でも寒い季節でもするべし。
人っこ1人として歩いていない一ツ葉有料道路の歩道をひたすらランする。その視界の先には月。あたりが暗くなるにつれてどんどん存在感が増す。この日は冷たい風がビュービューと吹いていて、ランスタイルの薄着だと最初は極寒だったのだけど、走っているうちに体を温まって動きがスムーズになってくるし、なによりも景色が最高に良くって、そんで月が楽しめるものだから、「さみっ!」なんて感情はどっかに消えて気分は高揚。ハイな物質が頭を駆けめぐる。
ほぼ高速道路みたいな場所で、車優先の道が続くのだけど、たまに海側へ出られる小道が出てくる。あれ、獣道(あるいはサーファー道?)っぽいけど行って大丈夫なのか…と怖気付く&タイムはかってるから横道にそれたくない思い。けれど、そういう良きタイミングや ワクワクする瞬間をこれまでみすみす逃してきた人生。直感的に何かを感じるのであればやっぱ行った方がいいよねと、藪の中を突っ切る。そしたらさあ、まあスッゲーいい海のポイントに出てしまったわけです。
よく思うのだけど、外にいるときに発生する予期せぬ出会いって、車を走らせているときよりも、自転車に乗っているとき、歩いているときの方が遭遇率が高い。とくにランニングを日常的に行うようになって、いろんなまちのコースを開拓しているうちに「こんな景色があるんだ」「この地区はこんな街並みなんだなあ」と、その地域をある程度深く入り込んで知ることができる。その発見の連続ってすごく楽しいんだ。これは車じゃあできないこと。生身の体だったら、その目線の高さ、動くスピード、入っていける空間の自由度が高い。
それが毎日のように車を走らせている地域でも起こるのだから、やっぱり見逃していることって多いんだなって。
ランニングするようになって、その地域で生活する人よりも、地域のことを詳しくなっていたりするなんてこともある。それはおもしろいなあって。それは車社会の宮崎だから、あんまり歩くことを好まない土地柄だから起こるのかなあ。
そういう楽しみもあるからランニングってやめられない。走れるようになれば10kmも苦ではないし。むしろそれだけ走れるのだから、まち探検もしやすくなる。マラソン大会のために鍛えてもいるけれど、気分スッキリさせながら走る地域の景色を楽しんでると、「ああ今日は時間がないから今度はこっち行ってみたい」なんて欲が湧いてきてしまう。それがまたランニングやめられない理由の一つにもなるんだ。
月がめちゃくちゃ綺麗だった。
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