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「海への道」から「海の上の道」へ プロ資格マニアの想い出

「自動車の運転免許がないと、気軽に持ち歩ける写真付きの身分証明書がないんですよね」と、何気なく話した日が、私の「海への道」の起点だった。

「小型船舶の免許なら」

私は資格を取るのが好きだが、いっぽうで資格試験が近づくと緊張から胃痛や食欲不振、不眠など体調がおかしくなることも多く、外科や産婦人科のかかりつけ医に泣きついては励ましてもらっていた。

先生との会話のなかで
「受験日に身分証明書が必要だったり、事前に住民票を取得しなければならない試験もある」
という話題になった。私は自動車の運転免許がない。ほかに写真付きで、住所・氏名・生年月日のすべてがわかる資格者証は少ない。自営業なので社員証や学生証もない。パスポートもないし、マイナンバーカードや住民基本台帳カードを持ち歩くのは、一定の覚悟が必要だ。

そんな話をしていると、外科の先生が
「小型船舶の免許やったら、取りやすいみたいやで。今から自動車の免許っていうのは大変かもしれんけど、船舶の免許だけでもあったら、身分証明書になるやろ」
とおっしゃった。

小型船舶操縦士の資格を取る方法を調べると、学科試験、身体検査、実技講習あるいは実技試験を受けなければいけないようだった。

それまでに私が取った資格は、ペーパーテストあるいはCBT試験を受けると、結果がでるものばかりだったので、「実技」がある試験に少し怯んだ。そもそも、自転車以外の乗り物を動かしたことがない私に、船を動かすことなんてできるのか、かなり不安にもなった。

とはいえ、この機会を逃せば、新しい経験をすることなく終わりそうな気がして、実技講習を受ければ実技試験が免除されるコースを選んで受講することにした。

ディンギーヨットに乗る

小型船舶操縦士の試験を受けるまで、海の楽しみ方についてあまり知らなかった私は、海にはどんなレジャーやスポーツがあるのかを調べることにした。調べる中で、エンジンがなく風力を頼りに進む「ディンギーヨット」の教室が、大阪北港で開かれていることを知った。

そして私は2015年の夏、(一社)大阪北港ディンギーが主催する大阪市民ヨット教室に参加した。レンタルヨットを利用したり、毎月月末に行われる練習会に参加したりしながら、自分のペースでヨットを楽しめるようになった。

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優勝4

エンジンがついていないヨットに乗るためには、特別な免許は必要ない。ただし、ヨットレースを行う場合、スタートやフィニッシュの監視、違反艇の有無の監視、危機的状況にあるディンギーのレスキュー等のために、エンジンがついているボートを使用する。ディンギーヨットの先輩方は、初心者の私がボート操舵を練習できるよう、配慮してくださった。

こうして私の海への道は、海の上への道へとつながった。

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大阪北港では、ディンギーヨットやプレジャーボートばかりではなく、貨物船や漁船も航行している。コンテナをぎっしり積み込んだ船は、遠くで見ると「かっこいい」と思えるが、近づくと「でっかいなぁ! そしてちょっと怖い、よけなくちゃ!」と感じることもある。

様々な船が航行する様子、汽笛が鳴り響く場面を見るうちに、海に関する興味がますます深くなった。仕事柄、出張で様々な地方に出向く私は、その地域の海や河川をできるだけ近くで見て、どんな船が活躍しているのか、大阪の港との雰囲気の違いはどうかを知ろうとするようになった。

法律関係の資格を取ったことがなかった

ヨットの先輩方には様々な職業の人がいる。私が執筆の仕事をするいっぽうで、趣味のように資格を取っていることを知り、「こんな資格もある」「こんなのはどう?」と進めてくださる先輩がたくさんいた。

ある先輩が「不動産や保険の関係の記事を書いているなら、宅建を取ればいいのに」とおっしゃった。

宅建(宅地建物取引士)は、私も気になっていた資格ではある。でも、理系出身で法律関係の資格をほぼ取得していない私にとって、宅建のテキストはちんぷんかんぷん。何から始めればいいのか途方に暮れるものだった。

とはいえ、法律関係の勉強もしてみたい。そこで、法律関係の資格のなかで、私にとって少しでも理解しやすいものはないかと探した。

すると「海事代理士」という資格を見つけた。法律の文章はやはり難しかったけれど、宅建に比べてとてもイメージがわきやすかった。難解な法律の文章も、実際に大阪北港で見てきた様々な場面や出来事を思い出せば「こういう状態のことを表しているのだな」と、理解することができた。

2020年、海事代理士筆記試験に合格することができた。口述試験は不合格だったので、2021年に口述試験を、もう一度、受験する予定だ。


「身分証明書がない」というしょうもない動機から海への道を歩み出した私だが、海や海の仲間が私を受け入れてくれた。そして、私にさらなる挑戦の機会を作ってくれた。海と仲間たちに感謝し、とくには大波に翻弄されながらでも、自分のペースで海の上の道を進んでいきたい。

河野陽炎の保有資格

一級小型船舶操縦士/狩猟免許・わな猟/応用情報技術者/情報セキュリティマネジメント/初級システムアドミニストレータ/ITパスポート/.comMaster★/発破技士/工事担任者(デジタル第3種)/危険物取扱者(乙種 全類)/消防設備士(乙種 7類)/第2級海上特殊無線技士/第4級アマチュア無線技士/労働安全衛生法による特別教育(伐木等の業務、酸素欠乏・硫化水素危険作業)/エックス線作業主任者/特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者/医療情報技師/普通救命講習/メンタルヘルスマネジメント検定II種(ラインケアコース)/3級ファイナンシャルプランニング技能士/不動産実務検定1級合格(未登録)/日商簿記検定3級/Googleアナリティクス個人認定資格/カッパ捕獲許可証/一ツ星タマリエ(ゴールドランク)/海事代理士筆記試験合格



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