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『リアリティーショー』とかまじ笑える

 向乃は「オオカミには騙されない」シリーズを、一作目から見ている稀有な男子高校生だ。女子高生人気ナンバーワンの恋愛リアリティーショーと聞いて、「JKと恋する第一歩だ」と思って見始めた。それなのに、学校の女子はK-POPの話ばかりしていて、その話題を共有することはほとんどなかった。結果、所謂Z世代のモデルや歌手に詳しいだけの、悲しい男が誕生した。ちなみに先に言っておくが、「今日好き」とか「恋ステ」とかは全然知らない。

 それにしても、「リアリティーショー」なわけあるか、と思う。第一、番組が終わってからも付き合ってるカップル、ほぼいねぇじゃねえか。そもそもこの「オオカミ」シリーズの趣旨は、本気で恋をしにきた男女の中に、恋する気のない人がいて、真実の愛の邪魔をする、というものだ。そのはずが、ネクストブレイクぐらいの若者たちの知名度アップに使われている、この現状は何だ。端から全員オオカミじゃねえか、と向乃の中の厄介おじさんが顔を出す。

 いや、ちょっと怒りすぎじゃないか、と思われるかもしれない。断っておくけど、別にそんなに怒ってない。限りなくリアルに見せながら、裏ではしっかり演出を入れているとか、そういうのは全然気にならない。

 よく、「恋愛リアリティーショーって、全部ヤラセだから冷める」と言う人がいる。そういう人たちは、最初の2シーズン「オオカミくんには騙されない」と「真夏のオオカミくんには騙されない」を見て再考してほしい。というのも、現時点で既に10作品以上出ている同シリーズだが、初期は本当に「リアリティー」していたのである。だけど正直、今のほうが全然面白い。最近のシーズンは、共同作業をする中で恋愛もするというものだし、デートできる回数にも制限がある。脱落制度や復活制度があって、エンタメとしても結構楽しめる。それに比べて初期2作は、することが恋愛しかない。番組側からの規制は何もなく、ただ延々とデートしてる。困難を乗り越えたドラマとかがないから、カップル成立にもそこまで感動がない。

 さらに、最近のシーズンではドラマ性を持たせるために、最初あまりモテなかった男女が、最後には報われる的なシンデレラストーリーがあったりする。だが初期はひたすら冷淡で、残酷で、リアルだ。モテるやつはずっとモテてるし、目立たない人は最後まで目立たない。モテてるやつの周りはずっとドロドロしていて、とても微笑ましい恋愛模様とはいえない。

 それを踏まえたうえで、それでもリアルが勝ると言えるだろうか。つまり向乃が言いたいのは、ヤラセや演出があるかどうか自体は問題ではないということだ。問題は、番組側が「これはリアルです」と銘打って放映している点にある。こうなってしまえば嘘である。

 僕たちはフィクションよりもリアルを見ている時間のほうが断然長いのだから、理想的な恋模様をリアルと詐称されると、息が苦しくなる。画面の向こうにリアルなど存在しないことくらい、我々のネットリテラシーの範疇なのだから、作り手もそこを弁えてほしい。

 最後に締めとして、制作陣にある提言をしておく。「真冬のオオカミくんには騙されない」で、一番オオカミと疑われていた男が、結局オオカミだったのかどうか明かされなかったこと。「虹とオオカミには騙されない」に出てきた、明らかにCGの虹に向かって、参加メンバーが「あ、虹だ!」って言うシーン。この2つだけは断じて許さない。

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