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文章を通して自分を認める~守田樹さん著『愛すべき凡庸な日常』を読んで~


1.前置き


noteを始めてから、こんなにもたくさんの書き手がいることに驚きました。
なんとなく、“書く”という行為が何かに認められた人にしかできないことだと感じていたからです。

これまでは、その文章を書いた人の持つ、作られていないありのままの思いを知ることができなかった。
文章の先に自分と同じ人間がいることが、どこか信じられなかった。

けれど今はnoteを通して人に出会い、その人の思いをもっと知りたいという思いから、作品が読めています。

書いた感想を作者の方に読まれるかもしれないと思うと、とても恥ずかしく怖い思いもあります。

エッセイは、特にそうです。
小説という創作への感想は書かせていただいたことがありますが、エッセイという、その人のありのままを描いた作品へ感想を書いたことはありません。
エッセイに感想を書く=その人の生き方に感想を書くことになるんじゃないかと、気後れしていました。

それでも、その作品と出会って生まれた自分の思いを一緒に書いておきたい。
そう思って、感想を書かせていただくことにしました。
(失礼がございましたら、いつでも削除しますのでおっしゃってください)



2.きっかけ

今回、拝読したのは、もりたさん著の「愛すべき凡庸な日常」です。
創作大賞に投稿されている「24歳のエチュード」を読んだことが、森田さんを知ったきっかけだったと思います。

全く同じではありませんが、私が目指したいところに一度たどり着いた方で、また新しい場所に向けて、先に歩み始めている方だと感じています。
その歩みをもっと知りたいと言う思いから、書籍を購入しました。

作品全体を拝読して感じたのは、自分を文章として書き起こして、納得していく様子を描かれているということです。
いくつかの章を取り上げて、思ったことを記させていただきます。


3.本という”小さな世界”

「喫茶店のマダム」では、お気に入りの喫茶店で本を読む日常が切り取られています。

エッセイというより小説だなと感じました。
主観でなく、客観的に自分が描かれているように感じたからだと思います。

この章の中で、本を「小さな世界」と表現し“小さな世界を少しでも拡張できるような存在になりたい”と締めていらっしゃいます。

読書には、自ら文字を読み頭の中で再度その情景や情報を構築しなおすという工程が入っているように思います。
映像や音声よりは、自分から受け取りに行く姿勢が求められる読書。
だから本は、その姿勢を持つ人にだけ門が開かれた、小さな世界なのかもしれません。

そして“小さな世界を拡張する“というのは、本を生み出すことで、その門の幅を広げて数を増やす。
もしくは内容を、本の世界を現実に近づけていくということなのかもしれないなと感じました。


4.「ほのぼの」とは

「八七一珈琲と僕」では、初めて小説を書いた経験が描かれています。

そのなかで、作品で「ほのぼの」を体現することがご自身の役割と語り、そのために必要なこととしてこう結論づけています。

“自分で自分の存在を認めることのできる環境に身を置くこと。その心地よい環境を自分で整えること”

守田樹さん著『愛すべき凡庸な日常』より


自分と真正面から向き合いつつ、俯瞰して見て、これでいいんだと納得する。

「ほのぼの」という言葉からは、お気楽で何も難しいことは考えていないような響きがあります。

ですが、自分自身と自分以外が存在するなかで、自分のことを納得できる場所を自ら探し、整えていく。
そんな「ほのぼの」のハードルは結構高いのかもしれないと感じました。


5.文章を通して自分を認める


そのハードルを飛び越えて、この本では「ほのぼの」が達成されていると思いました。

自分のことを書くというのは、自分のことを納得するということと同義なんじゃないかなと考えたためです。

行動や感情が自分の中で腑に落ちていないと、言葉として生み出すことができません。相手の頭の中でも同じ場面が思い浮かぶように、文字に起こさなければならないからです。

だから自分のことを文章にしていく作業は、自分のことを再度捉えなおして、理解を深めていく作業なんじゃないかと思います。

自分を文字で捉えなおすことで、自分の生き方を認めてあげたんだな。
じゃあ、私も自分を認めてあげよう。
そんなふうに、私自身の救いも見出すことのできた作品でした。


6.さいごに

noteには文章をとおして自分自身と向き合っている方が、たくさんいることと思います。
私もそうです。

きっと、そのような方にとって、この作品は心の中の何かを救い上げてくれる存在になるでしょう。

僭越ながら、こちらを感想とさせていただきます。
素敵な作品と出会わせていただき、ありがとうございます。

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