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【2024年創作大賞感想文】人間よりも感情的なAI~PJさん著「Dr.タカバタケと『彼女』の惑星移民」~

PJさん著「Dr.タカバタケと『彼女』の惑星移民」を拝読しました!
未来の世界観の中で人間やAIがどう生きているのか、世界観の構想とキャラクターの心理描写から、多くを学ばせていただきました!

その中でも、読んでいて特徴的だと感じた3点を挙げて、感想文を書かせていただきます!



①    人間性が失われた世界の構想


本作では、作品全体を通して、技術の導入や社会のシステムが過度に最適化された世界が描かれています。

“仕事や作業は人を縛り付けていたのではなく、人に動く原動力を、前に進む力を与えていた。それを失った人々は、進歩と進化を手放した。”

PJさん著:Dr.タカバタケと『彼女』の惑星移民

“大きな理由は2つあった。1つは母子両方の生命リスクを減らすためであり、もう1つは、男女平等の観念であった。”

PJさん著:Dr.タカバタケと『彼女』の惑星移民

過去に人間社会が持っていた歪な部分を均衡に保つため、極端に社会のシステムを調整したようにも感じられます。

そうした世界観を作り出したうえで、その中で人間やAIがどう暮らしているのか。
どこか人間性の欠如した人間の心理的変化まで描かれている点が、思考実験のようで大変興味深く読むことができました。


②    主人公のアンバランスさ

世界屈指の頭脳を持ちながら、自分のためでなく人類を救うために尽くす主人公。しかし、人類のために尽くしたにもかかわらず、その恩恵である勲章は不要として、滅亡に向かう地球で自身も終わりも迎えることを望みます。

自分の強い意志が伴わなければ、人類を救うなどという行動は起こせないでしょう。けれど、何かに貢献することで自分の価値を確かめるような性格でもない。

ここにおいて、主人公の実際の行動と性格の間にアンバランスさを感じました。
 
では、何がその主人公のアンバランスさを生んだのか。
何がそこまで主人公を動かしたのか。

そこにあったのが『彼女』の存在でした。

地球の死滅も僕にはどうでもよかった。『彼女』とすごし、『彼女』と生きることが僕の望みだった。

PJさん著:Dr.タカバタケと『彼女』の惑星移民

冒頭をこの主人公のアンバランスさの描写から始めることで、過去に『彼女』と何があったのか、少しずつ明かしていくストーリーに引き込まれていきました。

③    AIの一人称語り


本作で特徴的なのが、AIの一人称語りだと感じました。
AIに思考はなく、あったとしてもプログラムが生み出したもの。
そんな考えを払しょくするように、AIが何を思考として生み出し、行動しているのかが一人称で語られています。

主人公と共にメインで描かれる『彼女』は、思考はできても感情が分からないAIです。
しかし、自分にない感情を理解しようと思考する『彼女』は人間よりも感情的だと感じました。

“あぁ、あなたと意識がつながった空間の中だからなのね。
 私は、あなたの感情を使いながら泣いているのかしら?“

PJさん著:Dr.タカバタケと『彼女』の惑星移民

過度に技術の導入や社会のシステムが過度に最適化された世界で人間性を失った人間。
その人間の感情に触れることで感情を学ぶAI。
そのAIの思考に触れることによって人間性を取り戻す人間。

人間とAIの境界線を曖昧にすることで、
何が人間を人間たらしめているのか。
何がAIをAIたらしめているのか。

そう読者に問いかけているようにも思います。


小説内では、ストーリーになぞらえた楽曲や登場人物のビジュアルイラストも楽しめます。
日常生活から離れ、世界観に没入できる作品でした!
今後の展開も楽しみです!

ちなみに個人的には、Two door cinema clubのUndercover Martynという楽曲が頭に浮かんできました。


今後もフォロワーの皆様の作品に稚拙ながら感想文を書かせていただきたいと思っています!
皆様の作品から、たくさん学ばせていただければ幸いです!
(勝手に感想文を書かせていただいておりますため、もし意に反すると感じられた場合には投稿を削除しますので、お知らせください)

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