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広告振り返り:~6月総括編~


・6月の広告のあらすじ

・違法視聴スタイルが流行

塗るシワ消滅クリーム 2024/6/14投稿

 アトムクリニックや塗るシワ消滅クリームなど、背景に関係の無い映像を流しつつ半透過状態で広告対象の商品を告示する手法が流行の兆しを見せていた。早い話がテレビ番組の違法視聴スタイルなんだけど、この形式にするとやっぱり削除されづらいとか、内容が多少際どくても許されるとか、そういう効能が期待出来るようです。
 最初に動画を小さくして枠には関係の無い動画を流しておくと削除、検閲がされづらいという事を思いついた人間は天才だと思うのだが、広告にまでそれを使えば際どい表現をやっても良いと思いついた人間もまた天才というか、何というか。
 こういうタイプのテクニックは中国企業の方が先にやりそうだと思っていたのに、中々やらないもんだから日本の方が先んじてやることが出来たようです。真似は簡単なので、今後も見かける機会はあると思われる。

・広告によって世を騒がせた事件が多発

 2024年6月はSORA AIを活用した全編AI活用広告、voodooによるBeReal買収、都知事選の選挙広告が大荒れ……など、技術革新からビジネス的な話題、これまでは露呈しなかった政治と広告のニュースまで、広告にまつわるニュースには事欠かない時候だったなあと思います。
 もちろんXに新しい形式の広告が登場した、というシンプルな新ニュースもあり、振り返ってみると中々肉厚。とはいえ、それでやっている事と来たらいつもの広告なので意外と話題性以外はそうでも無いかも、って感じはあるのだが。

・自分磨き系広告が増加

 夏目前という事でメンズクリアのような脱毛広告、アトムクリニックのような包茎改善など、いかにも自分を良く見せようという広告がかなり増えた。
 例年夏前にはこういうジャンルが増える傾向はあるけども、昨年はメンズクリアが12ヶ月間ずっとこの広告が最後ですと宣い続けていた事を思い出すと今年のメンズクリア、アトムクリニックの広告の少なさ、というかメリハリの良さは注目しても良いんじゃないかと思います。

・ルーキー級の注目タイトル

・進化!大食い龍

 テーマソング系広告を筆頭に、最近のトレンドを大体抑えて広告しているのが進化!大食い龍。
 Youtuberやコスプレイヤーを起用した広告にプレゼント企画、妙に凝ったアニメ、音楽の無断利用など変な広告がやってきた様々なトレンドを抑えてはいるが、どれもイマイチ新鮮味に欠けてしまった印象。とはいえ、ここまでのトレンドを抑えている辺りしっかり勉強してきた事が窺える労作に仕上がっています。
 ただ、やはり突き抜けるには独自の強みが必要である事がこの広告ではっきりしたと思います。エバーテイルのホラー広告、オタ恋の生成AI活用、キノコ伝説のテーマソング戦略……あくまでトレンドを抑えるのはスタートラインなんですね。
 ちなみに自分は割とこのゲームにハマっている。多少詳しい事を書いている以下の記事もよろしくお願いします。

・主公、走れ!

 主公、走れ! は西遊記人物相関図クイズ、三国志人物相関図クイズ広告という新ジャンルを開拓。面白くなさそうな偽ゲーム広告として注目を集めた。
 偽ゲーム広告って多少は面白そうな物だと思うんだけど、そこで面白くなさそうなゲームを出すってのはチャレンジの結果として好きなんすよね。「自分ならこの人物相関図が分かるのに何で間違うんだ!?」というストレスを与えようとしているんだろうけども、知らない三国志の馬の相関図だの西遊記の細かいキャラ設定だの普通の人は知りませんって。
 
それで分かるような知識がある人は広告で釣られそうに無いし、色々チョイスがおかしいんだよね。それで結局6月後半にはピン抜きゲームをやっているんだから、全体的に面白いムーブをしていた印象です。あるアイデアがダメだと読んだらスパッと新しい事をやる決断力が好き。

・ハンターのマジック

 ハンターのマジックは延々とワンピースやNARUTOをパクっている面の皮の厚さがすごかった。
 ゴムゴムのぉ~! って堂々と言わせて、しかも消されてない上に一部は普通にパクリ広告として話題になっちまってるからね。ダメな広告の中でも知名度を上げる事には成功してしまった例だと言えるでしょう。
 ちなみにハンターのマジックはバンバンサバイバーというパクリのパクリまで出て来てしまったせいで違法広告ブームはより加速していく可能性があります。ひどい話だよ。

・ミドル級の注目タイトル

・アトムクリニック

 2024年のメンズクリア枠として活躍しているのがアトムクリニック。包茎手術という事で明らかに男性器らしいイメージキャラが出回っている例もあれば、特に関係ない女優やユルいイラスト広告など、様々な形で男を露出させにやってきた。
 Youtube Shortでは明らかにそれらしい演出を出しつつも違法視聴スタイルで広告をしているもんだから中々長期に渡って下ネタな広告をやっており、そりゃチンポの話題なんて大体シモだろうと思いつつもわざわざYoutubeでずっとそっちの話を見たいかね……と辟易させられる事も多く感じた。実はメンズクリアってマシだったんじゃねえか? 五十歩百歩?

・ハーレムオブトーキョー

 おねがい社長みたいなノリの広告をやっていたのは、意外にもDMM発のゲームだった。壁尻ジャンルや金でくるめられる美女まで、かつて中華広告が一世を風靡した面白広告に参戦したような形である。
 そういえばDMM系の広告は色々と海外方面からの学習を強めているように思う。スイートホームメイドがやっていたASMR広告はブルアカのパクリだし、総裁の野望は元ネタがトリリオン・セクレタリーだし。いつの間にかDMMのゲームには海外産しか見当たらないよ、なんて状況が起きる可能性はそれなりにありそう。

・ラストウォー

 色々なインフルエンサーを巻き込んで暴れて行ったラストウォーだが、ここに来て広告内嘘ゲームの独自路線開拓を開始。ビビッドアーミーやトップウォーなどが開拓していた新しい嘘広告の新地平を拓こうと様々なバリエーションを生み出しつつある。
 
実際いつまでも有名人を起用し続けるのは中々無茶があるし、それであれば偽ゲームの内容を良くしていこうという路線自体はこれまでも多くのゲームが辿って来た道ではある。しかしラストウォーもその方向性に走るんだな、というのは中々興味深いんじゃないですか。
 ちなみに6月もデカキンやかっつーといったインフルエンサーを広告に登場させており、別にインフルエンサー路線をやめた訳ではありません。とはいえ、最初期のかまいたち&マックスむらいという初期採用のインフルエンサーがあまりにもインパクトがデカすぎた感があります。

・ライト級の注目タイトル

・Ubereats

 UberEatsはハーフオフの広告が話題に。電車版やスマホ版、新聞版やTVCM版も確認されており、広告のうち半分を不具合があるような表示にする事によって耳目を引く、という手口をやっていました。
 そりゃスマホが壊れたような表示になったら誰でもビックリするし、気になるでしょ。それだけの話なんだけど、それを思いついて実行する奴が一番えらいのは間違いありません。
 こういうアイデアの勝利系の広告は皆好きだよね。良い着眼点だった。

・ロマサガRS

 電車一両をまるまる広告にする、という施策。
 別にこういう広告形式自体は他にも先駆者がいそうではあるんだけど、実はこういうラッピング広告に出くわしたのはこれが初めてだったんですよね。電車での移動時間全部を特定の1タイトルの広告情報に占有されるって、パワーがすごいですよ。
 なるほど一時はコロナ禍で滅びたと言われた電車広告/吊り広告もこういう形でなら相当気になるし、電車一両をまるまる聖地にしてしまうようなマーケティングだから着眼点は面白いと思います。しかし肝心の電車に乗らないとその迫力は分からないので、実際にコスパに見合っているのかなあ? と突っ込まれたら堂々と見合っていると主張する事は出来ません。
 でも一度くらいこういう広告トレインには乗ってみて欲しいね。

・原神

 HoYoFairと呼ばれる別アカウントから登場していたのは、フリーナダンスという同人作品の広告採用であった。2023年12月にも一般配信者に案件を投げてふざけさせていた経緯があるけども、それとはまた別のアプローチです。
 似たような事例は2023年5月に最強でんでんがやっていた「クラブ応援キャンペーン」が近い施策ではあるが、ユーザーの作品をそのまま広告にするというアイデアは今後も出来る場合は取り入れられていくんじゃないかな、と思います。それだけ熱量のあるファンがいっぱいいる=長期的に運営が続きそうだという安心感を与えられますからね。
 とはいえそこまでの施策をやるなら、単なる広告だけでなくゲーム運営やコミュニティ運営も真面目にやらなきゃならんのは事実。凝った広告を作る手間を取るか、それだけのユーザーコミュニティを作る手間を取るかは運営方針次第と言えるでしょう。

・マスター級の注目タイトル

・メンズクリア

 なんとなく姿を見せていなかったメンズクリアだが、2024年6月より本格的に復活。
 手数と最初の6秒のパターンだけは多いのは昨年のメンズクリアでも明らかではありますが、その方針は2024年も健在。最初の6秒だけ見とけば大体何が新しいか分かるという割り切り方は毎度すごいと思いますね。どうせ訴求する事は一緒なんだから残りの45秒は一緒で良いだろうという思想。
 
注目すべきはこの後の動向。昨年は別に繁忙期でも無いであろうタイミングでも広告を続けていたけども、今年はピークが過ぎたらもう広告は控えるのかな。今年もピーク後に広告をやりまくるようなスタイルを継続するかはめちゃくちゃ期待して見てます。

・オタ恋

 オタ恋はLuma AIという動画の生成AIを採用。インターネットで流行ったAI技術を使うスピードが速い!
 以前まで使われていた生成AI技術ではどこかぎこちなかったり、脈絡も無く髪がなびいたりするような違和感のある映像が多かったんだけども、Luma AIの場合は極めてなめらかな違和感ある映像を生成出来るのでウケ狙いにはうってつけ。こういうの、オタ恋が目をつけない訳がないでしょ。
 今後も新技術が出て来たら使うんだろうから、AI界隈の情報を見るのにオタ恋はうってつけかも。次もよろしく。

・エバーテイル

 最近話題を聞かなかったエバーテイルだが、久しぶりに新作が多数登場。ごく一部のファンが歓喜しております。もはや俺だけかもしれんけど。
 久々にエバーテイルの広告をまとめようかな~とか思ったんだけど、意外と見返すと過去よりも広告1つ1つの繋がりが希薄になっているし、削除されてる場合も多いし、以前よりも広告ウォッチャーも減ったしで中々視聴しづらくなってしまいました。とはいえその見辛さもまた味というか、突然現れる伝説のポケモン感があって良いんですよね。割と今のエバーテイルも好き。
 トレンドはインスタとYoutube Short広告、ゲーム内の広告に移りつつあるので、今エバーテイルの広告を探したい場合はその辺を周回するのがオススメです。

・2024年6月のMVP

 2024年6月のMVPはありませんでした。
 ここまで褒めるような事を書いておいてなんだけども、結局先月までのキノコ伝説とラストウォーのブチ抜け具合がすご過ぎたせいで割と何をやられても「あ~数が多いだけね……」とか、「あ~アイデアが面白いのね……」くらいの印象になってしまった感じがすごいんですよ。
 
実際様々なタイトルや事件があって、面白い広告も多かったんだけど、それを差し引いてもキノコ伝説とラストウォーのインパクト、盛り上がり感には敵わなかったような感想になってしまった。
 強いて準MVPを挙げるなら以下のタイトル。

・進化!大食い龍
 最近のトレンドを概ね取り入れており、ゲーム内容との乖離も少ないのは見事。実際にダウンロードすると内容もちゃんと面白く、ゲーム内容が特殊な分広告は量産型の施策でまとめてきたのは良かった。
 とはいえ残念だったのは歌モノ広告の旬が過ぎていた事と、キノコ伝説やラストウォーほどのキラーワードも用意出来なかった事。個人的には一番MVPに近かったが、結局キノコ伝説の真似の場合キノコ伝説と比較しなければならず、そうなるとパワーが足りないように感じてしまった。

・主公、走れ!
 
人物クイズという新しいトレンドを生み出そうとした意欲は素晴らしい。そしてダメだと読んだらすぐにねじ抜きパズルを始めるフットワークの軽さも評価すべきではある。
 もう少し練り込みが欲しかったというか、新ジャンルとして確立出来るほどの絵面のインパクトがあると良かったのかもしれない。いわゆるミスをしてやらせよう、オタク知識をひけらかそうという内容であれば、ここに誤字まで加えたのはやや蛇足であったようにも思う。

・アトムクリニック
 違法視聴スタイルの寵児として評価はしているのだが、結局削除されてしまっている辺りでそんなに効果が無かったのだな、またこれまで包茎手術系のクリニックがやっていた婉曲でコミカルな表現も薄まってしまったような印象を受けた。

・UberEats
  ハーフオフというアイデア一本は素晴らしいし話題にもなったんだけども、あくまでアイデア一本だったような気がしてしまう。むしろそれが普通なのかもしれないが、キノコ伝説やラストウォーほどの驚きや興味深さは感じられなかった。

 果たして2024年内にキノコ伝説とラストウォーの二強態勢を打ち崩すような新作は現れるのか。そもそも自分がキノコ伝説とラストウォーに脳を焼かれてしまっただけなのではないか。色々不安はあるが、自分に出来るのは広告を見る事だけである。
 7月以降に期待。

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