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広告振り返り:~5月総括編~


・5月の広告のあらすじ

・長編案件の広告薄味化が進む

 案件動画をそのまま広告にする、というのは切り抜きなどで行われるパターンが多かったけども、アイスダンディやアルケランドは新しい切り口から長編案件広告が流れ始めた。
 アイスダンディの「泥酔した状態でジャンボリーミッキー1分で覚えて披露したら18禁過ぎたwww」は広告動画なのに延々Youtuberが宅飲みしているシーンが続き、案件の商品が出てくるのは動画も中盤になってから、という広告。広告を見ている側としては広告ではなく知らないYoutuberの動画を間違えてタップしてしまったのではないかと思われるほどの長編動画で、案件動画からの案件感を抜く事にチャレンジしているように見えた。
 ちなみに案件の期間が終わった後に「泥酔した状態でジャンボリーミッキー1分で覚えて披露したら18禁過ぎたwww」を確認した所、案件パートは全て無くなっていた。つまり現時点でこの広告を見たら案件動画とは分からない普通の動画に変貌している。どれだけ案件っぽさを広告から抜けるかにチャレンジした広告だ。

 アルケランドも一般的な雑談生放送をしながら行う案件動画である、という面で露骨な広告感は無い。切り抜きして広告化する際に字幕を入れるくらいの編集はしているが、切り抜き前は雑談配信に案件要素があるくらいの内容だったので意図的に広告感を薄くしているように見える。
 最近の人間の広告嫌いは今に始まった事ではないが、ここまで広告分を薄く仕上げるほどなのか? というのは今後の広告の形を考えるべきレベルの薄さだと言えよう。

・テンプレ流し込み広告の増加

 ラッキーショップのような出所が分からない広告から、素材に活! という調味料の広告、サプリメントの広告まで、目に見えてテンプレをそのまま引用したような広告が増加したのが5月の特徴。自分は別にこういう広告もある程度合理的なのではないか、という感想を抱いています。
 というのも、現代のWeb広告はあまりにも環境がカオス過ぎるのである。電通みたいな大手広告代理店が鳴り物入りで広告しているポカリスエットみたいな超美麗映像と、Xヒーローやおねがい社長みたいな何が何でも話題を取れれば良いという悪い思想の広告、その他著名人の知名度を活かした案件動画が流れる中で、一体どういう広告をしろと言うのか。
 こんな時代の広告の正解とは何か? 金に糸目をかけずに立派で話題を取れる可能性が高い広告を作るのか、倫理を捨てて安価に話題性を取るのか、倫理と安価を両立出来るテンプレ広告を選ぶのか。そうなった時、今後テンプレ広告は増加してもおかしくないと思います。
 理想論としては金に糸目をかけずにちゃんと広告を作れよって皆言うんだろうけど、金と手間暇をかけて頑張って広告を作っても視聴者のお気に召さなかったら「うざい」ってクソリプ送られて終わりなんでしょ? だったらテンプレ流し込みがコスパ的には最強だと考えられてもしょうがないですよ!

・著作権系のモラルがにわかに怪しくなってくる

 昨年5月~6月のハンターズソウルや神獣伝説が巻き起こした著作権ハザードは記憶に新しいが、モリノファンタジーがファンメイドの動画をパクると言う形でまた無断転載ブームのニオイがしてきたのも覚えておいた方が良いかもしれない。
 モラルハザードが起きる⇒さすがにダメだとなってチェックが厳しくなる⇒広告全体が堅調、普通の広告が増加するという流れをたどった2022年の流れを見ていると、これがまた広告健全化のトリガーになるのではないかと不安になる内容。
 とはいえモリノファンタジーがやっている無断転載は一般人の合作作品を転載するという形なので、企業の著作物を直接かっぱらっている訳では無いのがまた姑息。昨年はモンハンだのスパイファミリーだのという人気タイトルをパクったから大問題になったのであって、少し前に話題になった制作物のパクリだと全然話題にならず、特にお咎めも無くスルーされる可能性の方が高そうだとタカを括ってそうな辺りも終わっている。

・Youtube関連の広告の動きが活発化

 Youtubeがスキップ不可の30秒広告の導入を発表したり、広告ブロックをブロックし返す機能を試験導入したりと、Youtube自体の広告の動きが激しかったのも特徴。
 詳しくは記事の方を見て欲しいんだけども、要は今後とも広告をたくさん見られるようになりますよって話です。良かったね。

・ルーキー級の注目タイトル

・アイスダンディ

 アイスダンディの案件動画11分は広告でも中々見ないし、本編の案件パートは切り抜かれて無くなっているというのも驚きました。こういう手法が以前からあるならお詫びしますが、案件動画を案件らしくなく加工する、広告を広告で無くすことを前提に広告を作成するというスタイルは目新しい。
 案件動画自体指定された期間が終わったら削除、非公開にされる場合も多いし、逆に案件の期間が終わった後だと古い情報がいつまでも残ってしまうのも人によってはイヤな場合もあるでしょう。そう考えると、案件動画との新しい付き合い方として良いんじゃないですか。
 広告自体が嫌われ者である現状、どんどん広告のニオイは消されていくんでしょう。今後も案件だと思っていたら案件では無かった、案件の期間が終わったら案件動画では無くなってしまった、というパターンはどんどん増えていく可能性は高いです。

・ムーンライズ・領主の帰還

 一周年というタイミングで現れた新しい広告はコレ。今時には珍しく凝った偽ゲーム広告をリリースしており、オチを予測させない起伏ある作風が見ていて楽しい映像です。
 とはいえ不安なのは一周年とタイミングがやや遅かった事。サービス開始当初から広告を始めれば良いという物では無いが、一年も経過したタイトルの場合中々新作ゲームほど注目を集めるのも難しい。
 広告の出来自体は中々ではあるが、やはり収益が伴っていないと長期間に渡って広告を続けるのは難しい。今後上手くいく事を期待したいです。

・ミドル級の注目タイトル

・スマホで副業

 今日び珍しい長編の茶番広告です。その上見ていてツッコミどころも多いという、比較的3分見ていて楽しい映像になっていた。
 コスパ的にはショート動画にするのが良いと思うんだけど、そんな中でわざわざ面白い茶番動画を出してくれるだけで感謝しなければなりません。別にスマホで副業をする気は無いし、何ならこういう広告は少ない方がありがた……いや、無い方が良いです。でも茶番広告だけ見たいんです。ワガママでごめんなさい。

・ライト級の注目タイトル

・テンプレ広告勢

 該当するタイトルが4種あるのでひとまとめにして紹介。
 テンプレに広告を流し込むというサービス自体は他にもあったような気がするけども、Youtube広告上でここまで露骨に増えたな、と感じたのは2023年5月が最初なんじゃないでしょうか。
 自分はそんなにテンプレ広告が大嫌いというワケでは無いけども、広告を見る側からするとあまり連続で見ると見飽きるなあという感想。でも別に自分が見飽きた見飽きないというのは本当に個人のご意見でしかないもんな。
 というワケで、こういうテンプレは上手く他の広告がテンプレを採用していなさそうなタイミングで使うと見る側には印象に残るんじゃないでしょうか。まあそれを見計らって広告を打つってのも難しいと思うんだけど……

・ファブリーズ

 ファブリーズの広告は主張している事はいつもと全く一緒なんだけども、キャスティングが良かった。千鳥の大吾という愛煙家芸人を活用して、15秒で説明が少ないけど効果が分かりやすい内容に仕上げているのがさすがだと思います。
 とはいえ最近の禁煙、健康ブームの中で愛煙家芸人というジャンル自体が絶滅危惧種なのも事実。わざわざ煙草を吸っているだけでキャラになる人も少ないので、こういう広告は今後難しくなっていきそうな気がします。

・ストリートファイター6

 カプコンの話題性に満ちた広告は以前から目を見張る物があったが、今回のストリートファイター6に関してはその戦略が完璧にハマったと言っても良いのではないだろうか。
 霊長類最強と「俺より強いヤツに会いに行く」という元々のコピーの親和性も高いし、新機能であるワールドツアーの告知にもなっていて、それで7年ぶりの新作でしょう。話題になる要素しかないし、この直前にストⅤをストリーマーが遊び始めていていて、新作への機運もちょうど高まっていたんですよ。
 それらが全部噛み合った結果Twitterのトレンドでモダンは格ゲーじゃない、SA3でトドメを刺すのはマナーが悪いみたいなしょうもない話が出てきたり、過去の失言が掘り返されて一大事になっただのと大変な問題になりつつありますが、結局大人気コンテンツになるという事はそういう事なんでしょう。とりあえず今後も要チェックだ。

・マスター級の注目タイトル

・モリノファンタジー

 モリノファンタジーは著作権的にセーフらしい所をパクっているのがセコいんだけど、それだけでなく剣魂という過去にリリースしていたゲームの広告まで使い回しているのが見どころ。
 コストカットへのたゆまぬ努力と言えば聞こえは良いが、広告をたくさん打つために過去の広告のロゴを上書きして広告とするのはさすがに手段を選ばなすぎなんじゃないかと思わざるを得ません。
 もちろん過去の広告のアイデアの使い回しもやっているので、実は新作らしい新作はほとんど無いぞ! そこまでして新しい広告を出そうとする4399の執念、あるいは怨念は恐ろしい。

・最強でんでん

 最強でんでんはプレイヤーの作ったギルド告知PVをそのまま広告にする、というかなり斬新な施策を取ってきた。ゲームをしている人に広告を作ってもらうという発想自体が過去に無かったし、普段は文句を言う事が多い視聴者側に広告への興味を持ってもらう工夫としても優れている。
 こういうでんでんの新しい広告を模索する力はいったいどこからやってくるんでしょうね。特に今回のイベントは運営とプレイヤーの信頼関係がちゃんと築かれていないと出来ないので、でんでんが面白広告芸人だけじゃない、という事も証明しています。
 これで6月は最強でんでん1周年なんだから、勢いがとどまる所を知りません。工夫の猛者。

・おねがい社長

 おねがい社長は田中理恵コラボだって言うのにどんだけしょうもない広告をやっているのよ。真面目な紹介かと思ったらでかでかと誤字をやる、田中理恵を茶番広告に出演させる、田中理恵を出演させていないと思ったら冷房しか出ないエアコンをドライヤーで温めて暖房にする。
 逆に日本企業じゃこんなはちゃめちゃな広告は出来ないだろうし、このバカバカしいノリを続けてもうすぐ3周年みたいなキャリアがあるのも恐ろしいヤツだよ。あの魔剣伝説やエバーテイルでもどこかで冷静にコストカットをやろうとか、さすがにコラボの時には真面目に告知しようとか、そういう理性はあるじゃん。その点おねがい社長は広告内のネタにおいて理性をドブに捨てています。
 でもおねがい社長は古参タイトルなのにAIイラストやAIを活用した動画広告に手を出していたり、Tiktokみたいな他媒体への進出も早かったりで開拓のスピードが尋常じゃないんだよなあ。広告の中身はバカなんだけどそれを実行するまでの速度、やり方の精査は冷静その物だから「コイツ怖すぎだろ……」という感想を抱いてしまった。

・2023年5月のMVP

 2023年5月のMVPはストリートファイター6です。
 シンプルに効果が大きかった広告という意味で、ストリートファイター6を抜きにして5月の広告を語る事は出来ないでしょう。変な広告だけで言えば色々な発展形があるけども、ゲームの広告でちゃんとゲーム本編の映像を流して話題を獲得しているってすごい事じゃないですか?
 感覚がマヒしがちなんだけども、本来ゲームの広告はゲーム本編の映像を使って、かつ話題を獲得出来るのがベストなんですよ。そこできちんと吉田沙保里とタイアップして話題を作る、そして6月も吉田沙保里を起用した広告を出しつつCRカップに繋げて、7月にはSFLがやってくるというベストな流れを全部計算していたと思うと素晴らしいなと思いました。
 ちゃんとしたゲーム広告をしたい場合はスト6の戦略を真面目に参考にすると良いんじゃないでしょうか。良い広告なので何度でも見よう。

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