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投資初心者が長期投資する際に「米国株の投資信託」にするか「米国株ETF」かで悩んだ時に考えるべき3点

原油価格急落やコロナウイルスの影響で世界中の株価が絶賛下落中の昨今ですが、その影響もあってか投資に興味を持つ個人の方が増えているようです。


で、投資についていろいろ調べていくうちにETFという上場投資信託の存在に気づき、同じ指数連動する投資信託とどう違うのかを悩む方もいるでしょう。

パッと見、経費率・信託報酬の差がETFのほうが安いですしね。

そこで、投資を始めたい、あるいは投資を始めたての初心者が「投資信託とETF、どっちがいいの?」と悩んだ時にどう考えると良いかをまとめてみました。


なお、ここでの議論では・・・

S&P 500に連動する米国株の投資信託(「SBI・バンガード・S&P 500」や「eMAXIS Slim米国株式(S&P 500)」など)
S&P 500に連動する米国株ETF(バンガード社の「VOO」など)

・・・という2つの米国株関連の商品を比較してみることにします。つまり、米国株式市場を対象に投資する場合のケースです。当然、日本株式市場を対象にした投資信託・ETFとは事情が異なりますのでご注意を。

あと、そもそも私も素人なので、細かいツッコミはご容赦ください。それと、投資は自己責任で。


で、先に結論を言うと大体の場合、つまり毎月数千~数万円くらい積立投資する場合は「外国株の投資信託」で長期投資してしまうのが良いと思います。


海外ETFのメリット

たとえばバンガード社のS&P 500に連動するETF・通称「VOO」の経費率は0.03%です。

これが同様にS&P 500に連動する投資信託の場合、「SBI・バンガード・S&P 500」だと信託報酬が0.0938%、「eMAXIS Slim米国株式(S&P 500)」だと0.0968%です。

ここでは実質コストで計算はしませんが、資産を預けるコストで3倍くらいの差があります。

では、その3倍のコストを掛けてでも投資初心者(=毎月数千~数万円くらいの積立投資する人)は「米国株の投資信託」を選択したほうが良い理由を説明します。


考慮点1:売買手数料の存在

最近の投資信託は売買手数料がゼロ円、いわゆるノーロードという商品が増えました。先ほど挙げた投資信託もノーロードの投資信託です。

ところが(米国に限らず、他国のETFも含め)海外ETFの場合、日本の証券会社から購入するには売買手数料が必要です。【売買】の手数料ですから、買う時も売る時も手数料がかかります。

ここではSBI証券経由で購入するケースで検討しましょう。

※SBI証券を例に取り上げた理由として、住信SBI銀行と連携するとドルに交換する際の為替スプレッドが、通常だと4銭、積立だと2銭で済むからです。
実は売買手数料が無料、為替手数料も他社と同じという証券会社もありますが、ちょっとしたからくりが潜んでいます。そこは後述します。

SBI証券で米国株・米国ETFを取引する場合、売買手数料は・・・

約定代金の0.45%(税込0.495%)
最低手数料:0ドル
上限手数料:20ドル(税込22ドル)

・・・となります。ざっくり0.5%くらいが買う時にも売る時にも掛かります。

ちなみにVOOは現在、買付手数料が実質無料(キャッシュバック)になっているので買う時は実質ゼロ円ですが、それでも売る時は手数料が掛かります。

パーセント(100分の1)からさらに下の桁(しかも0.1%以下の世界)のコスト差を比較しているのに、「VOO」は売却時だけで0.5%、ほとんどの米国ETFでは売買往復で1%規模の手数料が掛かるので、これを見逃すのはちょっと厳しいですよね。S&P 500に連動する投資信託を10年保有しても、累計の信託報酬率は1%行かないですからね。(あくまでざっくり計算ですよ。本当は実質コストで計算しないといけないなどある訳ですが・・・)

長期投資とはいえ、どこかで売却することも考える必要もありますし。「永久ホールド」とか「売却手数料もゼロ円になるまでホールド」などもあるでしょうが、なんにせよ現時点ではこの売買手数料の存在を無視するにはいかないのです。

※他の証券会社で購入する場合はどうか?は、まずこの記事を読んでから検討するのが良いでしょう。どのパターンが最安値になるかはケースバイケースです。たとえばDMM株は売買手数料が無料であるも、配当金が円で直接入金される=その際に為替スプレッド(-1円)の影響を受けるため、そのあたりも考慮しないといけません。これは次に話す複利効果の際の配当金の再投資時にも円からドルに再交換するため、為替手数料(25銭)の影響があります。

いずれにせよ、投資信託と比較して海外ETFは手数料が発生するので、どの証券会社から購入しても売買手数料などの存在を無視できないことは変わりません。


考慮点2:複利効果を得るための手間

ここでは複利効果の説明は省略しますが、複利効果を得るためには配当金を再投資する必要があります。

たとえば「VOO」は毎年4回ほど配当金が出てきます。配当金は証券口座に入ってくるわけですが、これを再投資するには自分でETFを買わないといけません。(しかも資産規模がまだ小さい時は配当金だけでETF1株の購入額に満たないでしょう)

一方で、前述の投資信託も決算期が年1回はあるのですが、インデックス系の投資信託はほとんど配当金(分配金)を出さず内部留保します。言い換えれば、投資信託内で勝手に(自動的に)配当金は再投資されるわけです。


考慮点3:買付方法の差とアセットアロケーション

ETFは株と同じで、1株あたりの市場価格で購入する必要があります。ちなみに「VOO」は今日時点の価格で232ドルになります。

一方、投資信託は金額単位での購入が可能です。現在ネット証券経由の場合、その多くは100円から1円単位で購入できます。(余談ですが、20年くらい前の投資環境と比べたら、今はものすごく良い環境になっていますね。ありがたい話。)

仮に毎月3万円の積立投資をしようとした場合、アセットアロケーションを組もうにも「VOO」を入れた時点で毎月の投資額の8割が埋まってしまいます。

一点集中投資ならまだしも、基本は分散投資で考えるべきなので、少額の積立投資だとETFはなかなか選択しにくいですね。


米国ETFを買う場合のストラテジー


1.一度の購入は100万円以上で

先ほどSBI証券の売買手数料を0.495%と説明しましたが、実は手数料の上限額があります。税込み22ドルです。

つまり、4445ドル以上の購入だと売買手数料が0.495%よりも下がる計算になります。

これを仮に売買手数料を0.1%くらいまで下げたい場合は、2万2000ドルの取引が必要です。

まあ切りの良いところで考えると、日本のネット証券で効率よく米国株・米国ETFを購入するにはざっくり100万円以上で検討するのが良いわけです。(売買手数料が0.2%以下になります)

※そういう意味では海外株・ETFの手数料も、もう少し下がってくれるといいのですが・・・。諸々の経費を考えるとなかなか難しいですよね。

あ、でも「少額でも購入してみたい」という方はぜひどうぞ。特に投資初心者はバーチャルで投資するよりは、少額でも自分のお金を投資するのはいろいろ勉強になるはずです。投資目的というよりはあくまで勉強、自己投資の範疇の方ですね。


2.為替変動(リスク)の影響を自分の人生にどこまで含めるか

将来米国で暮らすなど、米ドルの生活圏で暮らすことを考えている場合は米国ETFを買うのが良いでしょう。

しかし、これを読んでいる多くの人は日本でずっと暮らす確率が高いと思います。そうなると日本円が最終的には必要になるわけです。

為替ヘッジ無しの投資信託は基本はドル/円のレートに連動します。完全には一致しませんが、ドルを積み立てて米国ETFを積み立て購入するのとさほど変わりません。

考慮する点として、投資信託を売却するときはその時のドル/円レートで日本円で戻ってきますが、米国ETFは米ドルで戻ってきます。その時に日本円まで一気に戻してしまうなら結果はほとんど変わりませんが、米ドルで再び運用したり保有していると結果が異なります。

どっちが良い悪いということではなく、自分の投資スタイル・人生設計において為替変動(リスク)をどう考えるかで、米国ETFを積極的に買うかが変わってくると思います。


3.個別の米国株を購入するのと近い感覚で検討する

前述の売買手数料や配当金ルールは基本、米国株と同じです。つまり米国ETFでも個別の米国株でも、掛かる売買手数料や年数回出てくる配当金(日本株は年1回ずつ配当金+株主優待などが還元されますが、米国株の場合は四半期に一度ずつ配当金が出るケースがほとんど)、そして配当金にかかる税金も同じです。

また、米国ETFは細分化されたインデックスに連動する商品が多数用意されています。

バンガード社の商品を例にすると・・・

VOO・・・S&P 500連動
VTI・・・(米国株約3500銘柄の時価総額に連動)
VT・・・(全世界の投資可能な市場時価総額の98%以上、8000銘柄以上)

・・・あたりは有名ETFですが、米国株式市場をセクター別にしているETFもバンガード社にはあります。

VOX・・・米国通信サービス・セクターETF
VCR・・・米国一般消費財・サービス・セクターETF
VDC・・・米国生活必需品セクターETF
VDE・・・米国エネルギー・セクターETF
VFH・・・米国金融セクターETF
VHT・・・米国ヘルスケア・セクターETF
VIS・・・米国資本財・サービス・セクターETF
VGT・・・米国情報技術セクターETF
VAW・・・米国素材セクターETF
VPU・・・米国公益事業セクターETF

・・・という感じで、S&P 500で採用されているセクター分け11種のうち10種は日本からも簡単に購入できます。しかもこれらの経費率は0.1%です。

※参考までに言うと、残りは不動産セクターで、バンガード社では「VNQ」というETF(経費率0.12%)になります。また日本で買える同様(米国不動産セクター)のETFは「iシェアーズ 米国不動産 ETF」(IYR)で経費率は0.42%。

日本の投資信託も(日本株・海外株での)セクターごとの商品がありますが、そのほとんどはアクティブファンドで信託報酬も結構高めです。

米国ETFだとセクター・テーマごとのインデックスに連動したものも多いので、個別株を買いたい、でも個別リスクをヘッジしたい・・・みたいな感じでETFを探すのも戦略にはなると思います。

前述のアクティブファンドより経費率は低いので、インデックス投資信者はこっちのほうが選びやすいかもしれませんね。


最後に

ということで、経費率が低めでも米国株ETFに投資するには、投資額や自分の人生設計、商品特性を考慮しないといけないでしょう。

一方で、日本在住の投資初心者が手軽に長期投資を始めるなら、米国株の投資信託に他の投資信託を混ぜてアセットアロケーションを組み、少額ずつ投資していくのが良いと思います。(もちろん米国株の投資信託を含むことが必須ではありません。あくまでアセットアロケーションを組んで適切に分散投資できている方が資産の安全度は高いです・・・という話。それを少額投資でやるにはETFより投資信託で・・・ということです。)


また、投資を始めるのも良いですが、「現金を集める・貯める」ということも怠ってはいけないと思います。他の言葉だと「キャッシュフローをプラスにする」と言うことですが、この動画を見るとそのあたりの重要性が分かると思います。

お金を一時的に投資に回しても、家計のキャッシュフローが不安定もしくはマイナスだと投資は長続きしません。(投資したものを解約してしまう→資産が増えない)

長期投資はその名の通り、長期で投資していくものですので、長期投資を目指した家計体制をしっかり整えましょう・・・が今回の結論ですw

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