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甘いコーヒー、苦いコーヒー

 アイスコーヒーの季節が、終わろうとしている。
 そんな中で俺は、しぶとくアイスコーヒーを飲んでいる。
 アイスコーヒーが好きだからだ。
 いつも、ブラックに、ほんの少しだけガムシロップを入れて飲む。
 今日、そんなアイスコーヒーを飲みながらしみじみとおもった。これからは、ホットだな、と。
 
 東南アジアのタイでは、コーヒーは、基本、アイスコーヒーだ。ホットなんぞは、気取ったレストランでしかお目にかかることはない。通りでは、コーヒー売りの屋台がたくさんでていて、いい匂いを漂わせている。コーヒーが好きなので買うのだが、これがとても甘い。どの店でも、馬鹿みたいにコンデンスミルクをどぼどぼと入れるのだ。甘いものが苦手な俺は、これには閉口した。
 どこの街だったか忘れたが、どうしてもコーヒーが飲みたくなってしまい、コーヒー売りの兄ちゃんに、俺はブラックが飲みたいんだ、苦いのが飲みたいんだ、ミルクは入れないでくれ、と哀願した。ネスカフェと書かれた清潔なエプロンをした兄ちゃんは、まるで珍獣でも見るかのような目つきで俺を見つめて、それでは旨くないだろ、と、タイ語で言うと、コンデンスミルクを当然のごとく注いだ。
 金を払い、甘い液体を受け取ると、俺はそいつの尻を力任せに蹴り上げた。

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