はじめての牛腸茂雄展

渋谷 パルコギャラリー

11月12日は行こう行こうと思いつつ行けてなかった写真展「はじめての、牛腸茂雄」に行って来た。この展示は糸井重里が主催している「ほぼ日」が企画した展示で、プリントは牛腸さんの学生時代からの友人である写真家の三浦和人氏がオリジナルのネガから手焼きしたもの。

 「ほぼ日」らしく、普段写真をあまり見る事のない人達の敷居を下げるため、漫画家の和田ラヂヲ氏を案内人にしていたのだが正直僕には必要なかった。

 有名な『SELF AND OTHERS』の他に見た事の無かった『日々』からの作品がみれたのが良かった。どの写真も時代を超えた普遍性のある作品だったが、何かと取り上げられる事の多い熱い60年代やギラギラしたバブル時代に比べると意外と見落としている時期な気がする。そのミッシング・リンク的な時代の空気も興味深かった。

 また、モノクロのイメージが強い牛腸作品ではなじみの薄いカラー作品がコンタクトシートと一緒に展示されているのも面白かった。どちらかというと静謐な印象の強いモノクロの牛腸作品とは異なり、カラー作品は街の喧騒が聞こえてきそうなライブ感が含まれていて、牛腸さんのストリートフォトグラファーとしての才能も素晴らしかったことが伺い知れた。

 写真の他に手紙や創作メモ(字がとても丁寧で几帳面な性格が伺える)、読んでいた本など今まで知らなかった部分も知る事が出来て興味深かった。『SELF AND OTHERS』のタイトルが精神分析家のR.D.レインの『自己と他者』から来ている事も初めて知った。彼の心の深層が垣間見える事実だ。この本を読んで写真を見ると、また別の見え方に見えるかもしれない。

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