#4 【講義の内容フリー台本にしてみた】ソーシャルメディアを学ばないと出られない部屋【情報リテラシー論】【長岡造形大学】

明転。

舞台中央にAが倒れており、Bはその横でAの肩を揺さぶっている。

下手にはテーブルと2脚の椅子、

上手にクローゼット。


B「A、しっかりしろ!」

A「B?おお久しぶり、高校以来じゃん」

B「そんなこと言ってる場合じゃなさそうだぞ、お前ここがどこだか分かるか?」

A「はあ?だってさっきまで成人式の二次会してて、ってどこだよここ」

B「やっぱり2人とも分からないか」

A「会議室?でも家具あるしな。だめだ、全く覚えてない」

B「だいぶ酒飲んでたもんね。あと、こんなものが机の上に」


B太、紙切れをポケットから出す。


B「読むよ。『ここに隠された謎を解かない限りこの部屋からは出られない。脱出したければ、汝等がソーシャルメディアについての正しい知識を持っていることを証明せよ』」

A「ソーシャルメディアの知識ぃ?ふざけてるようにしか思えないな」

B「全くだ。しかしこのままじっとしていても始まらない、部屋から謎を探してみよう」

A「飲み込み早くね?」


2人、部屋を探し回り合計3枚の紙を見つける。


B「集まったのはこの3問か」

A「えー、『メルマガ購読数世界一の有名人を答えよ』、『Facebookとtwitterの違いを説明せよ』やけに偏った謎だな」

B「ねえ、あと一問無かった?」

A「ん?ああ、『アラブの春について、以下の図を完成させろ』アラブぅ?」

B「アラブの春、確か2011年頃に中東で起こった民主化運動だね」

A「オイルの事件とかじゃないのか」

B「お前、アラブの春も知らないの?」

A「別にいいだろ、世代じゃねえんだよ。その民主化運動がソーシャルなんとかに何か関係あるわけ?」

B「ソーシャルメディアね。この運動の広がりにSNSが大きく関わってたんだよ」

A「ふーん、よく分からんけどこの選択肢から時系列順に選んで空白を埋めるらしい」

B「選択肢?」

A「USTREAM、Twitter、YouTube、Facebook、チラシ。始まりの部分には『生活難』が入ってる」

B「なるほど、アラブの春がこれらのSNSとどう関わっていったかの知識を試そうって算段か」

A「改めてこの状況何?」

B 「反政府運動デモを起こすためには、秘密裏に人を集めて準備を進める必要がある。そのためにデモ隊のSNSグループを作ってやりとりしてたんだろうな」

A「ふうむ、じゃあ例えば①生活難に苦しんで、②駅前とかで連絡先を書いたチラシを配って、③ Facebookでデモ隊同士で予定詰めてーってとこか?」

B「残るはUSTREAM、Twitter、YouTubeか。③ Facebookで準備を進めたから、デモをやっちゃうんじゃないかな?同時に⑤USTREAMでリアルタイムで配信、⑥どんな運動をしたのかYouTubeで録画を残す。あとは⑦Twitterでたくさんの人に見てもらえれば!」

A「生活難、チラシ、 Facebook、USTREAM、YouTube、Twitterの順番になるな」


(正解の音)


B「あ、正解の音」

A「なんだこの茶番は」

B「こういう感じで解いていくんだね、頑張ろう」

A「お前はもっとこの状況に疑問を持てよ」

B「脱出が最優先だろ。次の問題は…メルマガ購読数世界一の有名人、だっけ?」

A「げえ、絶対外国の俳優か何かだろ!知らん!終わった!」

B「まあ待て、謎解きと銘打ってる訳だし単なる知識問題ではないんじゃないの?」

A「って言っても、部屋の中はあらかた探したぞ」

B「……ん〜と、これ僕知ってるかもだな~」

A「分かってんなら言えよ。あのふざけたピンポンが鳴るんじゃねえの」

B「でも僕が答えるのはなぁ、ねぇ日本の首相挙げてみてよ」

A「日本の元首相?菅、鳩山、小泉」


正解の音。


A「え?小泉純一郎?」

B「何でそんな飛び飛びに覚えてるんだよキモいな」

A「うっせ!てか、小泉首相世界一なの?マジ?」

B「最盛期には購読者225万人抱えてたらしいよ。ギネス申請しとけばよかったのにね」

A「へえ、凄い人だったんだな。世代じゃないけど」

B「一昔の世代に興味持ちなよ」

A「んで最後の問題が?『FacebookとTwitterの違いを説明せよ』」

B「これはAの得意な問題じゃない?」

A「知らねー。Facebookやってないし」

B「はは、大人がやってるってイメージだよね」

A「というかなんで」

B「ん?」

A「あー、や。俺、お前にTwitterやってるって言ったっけ?」

B「ああ。大体今の若者はTwitterやってるでしょ。もしかしてやってなかった?」

A「いや、やっぱいいや。えー違い?そうだな、分からん!」

B「そう?Aはこういうの詳しいかと思ってたんだけどな。僕も Facebookはやってないよ。実名登録するの嫌だし、顔出しはもっと嫌だね」

A「個人情報そのものじゃねえか。ま、でも友だち同士で繋がるのが目的なんだろ?だったら匿名より安心感あると思うけどな」

B「それ繋がる側の意見じゃん。全く知らない人からアイコンを見られてると思うと…!はぁ怖い」

A「んー、使う目的がそれぞれ違うんじゃねえか? Facebookは元々知ってる友だち同士で繋がるツール、Twitterは匿名で世界中の人と一時的に繋がるツールで、関係性の形が根本的に違うとか」


Bがスマホを掲げ、画面をタップする。

正解の音。


B「うんうん、そうだよね。 Facebookを子供が使わないのはLINEで簡単に繋がれるようになったから。大人は学生時代の友だちは Facebookで探すしか無いもんねえ」

A「お前絶対分かってただろ。なんで毎回答えさせんだよ。てかその音お前が鳴らしてたわけ?」

B「バレてた?いやー試したかったんだよ。Aがちゃんとソーシャルメディアについて知ってるか」

A「は?ちょっと、その言い方だとお前が黒幕みたいなさぁ」

B「ねぇ、お前Twitterでそこそこ有名なアカウント持ってたよね。それ僕が貰うよ。クラウドファンディング始めようと思ってたんだよね」

A「さっきから何言ってんだよ」

B「ソーシャルメディアの歴史も各社の特色も知らなかった奴がツイッター芸人やるより、もっと知識ある人物がやるべきだよな?」

A「この部屋も謎も、全部お前が仕組んだってことか?」

B「仕方ないだろ?フォロワーで人間の価値が決まるこの時代、常人の僕がどんなに叫んでも誰も耳を傾けない。だったら誰かのものを奪えばいいじゃないか。まだ酒に慣れてない人間しか居ない成人式の二次会なんて格好のカモ狩り場だよ」

A「酔い潰して軟禁してアカウントくださいって?ふざけんな!クラウドファンディングって一体何のプロジェクトを始めるつもりなんだ!?」

B「青汁の開発・販売」

A「今すぐ考え直せ」

B「何も無策で売る訳じゃないよ。ちょっとした独自性も入れるつもりだ」

A「独自性?」

B「全く新しい青汁の形、スティック状の食べる青汁」

A「それはもはや汁ではない」

B「そんなこと言わずにさぁ、頼むよ。Aのアカウントの規模で呼びかけたら絶対に集まるんだ!そうだ、利率方式にしようぜ!青汁の収益の2%が入ってくるんだよ!うわぁ、何億儲かるかなあ!」

A「B、落ち着いて聞け。Twitterはクラウドファンディングに向いてない」

B「え」

A「ユーザ層的に考えて、Twitterは人を信用して協力するみたいなの向いてないんだよ。匿名のアカウントで、一時的な薄い関係性だから。対して、Facebookは実名も顔も出すSNSで、友だち同士の厚めの繋がりが特徴。どっちの繋がりの人に投資したいかで考えたら断然Facebookの方だろ。お前がさっき言わせたことだぞ」


Bがスマホを掲げて画面をタップする。

正解の音。


B「ふ、ふふふふ。馬鹿だな僕は。学が無い奴から奪い取るつもりが、逆に教えられてしまうとは」

A「B、お前…」

B「あーあ、やっちゃった。数少ない友だち、一人居なくなっちゃった」

A「人が関係を築ける人数は150人までって言うよな」

B「ダンバー数?」

A「ああ。付き合える人間の数は決まってるから、その範囲で有用な友人を作れってやつ。閉じ込められたのは事実だけど、なんかお前面白いし。これからの150人の中の1人で居てくれよ。何ならそのスティック青汁に投資したくなった」

B「え!いいの?」

A「完成させてみろよ。お前ならやれる気がする」


感動的なBGMが流れる。


B「ほんとに、ありがとう。じゃ、ついでにこの会議室のレンタル料と家具配送料、半分投資してくれ!」

A「あのな、Twitter芸人って金入んないんだぞ?」


BGMが徐々に大きくなる。

ドアの開く音。


幕。

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あとがき

毎週レポート形式に頭を悩ませていますてゅぽんと申します。今回は演劇台本にしてみました。脚本登録&公開サイト「はりこのトラの穴」様にも同じ内容のものをアップしたのでそちらもどうぞ。上演許可連絡等待ってます。

来週も見てくれよな!

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原案:第4回情報リテラシー論「ソーシャルメディアの台頭」

情報リテラシー論 担当教員
イーンスパイア株式会社代表取締役
ネットビジネス・アナリスト横田秀珠 
https://yokotashurin.com


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