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32 スカイ・ロード

 車椅子の低い視界から街の中に出ていくと、遠慮のない視線が突き刺さる。
 純粋な身体障がい者への好奇の眼差し。特に子供目線はまっすぐで、無垢であるがために時に残酷だ。時々そんな視線が痛いと感じる時がある。
 すれ違う人の手がぶつかりそうになったり、鞄がぶつかることもある。両足で立っている時は手や足にぶつかろうとも気にも留めなかったけれど、視界が低くなることで顔にぶつかる。不意に訪れることなので、車椅子では避けようもない。
 スティーブンの言うように、死ぬかもしれないという覚悟は出来ていた。戦闘機で撃墜されれば、助かる確率よりも死ぬ可能性のほうが高い。
 空中で機体と共に死ぬ、脱出出来ても地面に叩きつけられて、あるいは海中に落とされて死ぬ。そうした幾多の死を予測できても、両足が不自由になりながら、それでも軍人として生きている姿など想像したこともなかった。
 下半身不随という残酷な現実を知ってから、あれほど死を渇望したというのに……

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