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04 スカイ・ロード

 この敵機は、ステレス性能を逆手に取った新型かもしれない。あえて通常の戦闘機を捕捉させて、こちらをおびき寄せ、そして奇襲のごとくレーダーに映らない闇から襲いかかる。
 だが戦況がひっくり返るような状態ではない。精々びっくり箱を開けさせられた程度だ。
 到底作戦と呼べる代物ではない。どうやら悪戯好きなトリッキーな連中が、面白半分でこちらをからかった結果だろう。
「っ!」
 敵のアクティブレーダー誘導ミサイルを、ギリギリのタイミングで交わしたカイザーは、キャノピーの横を掠めるように飛んでいったそれを視界の端で捕らえた。ガントリング砲から景気よくばら撒かれる砲弾を避けるべく、機体をロールさせつつ一気に機体を下降させる。
 速度を増した機体は推力を得て、今度は一気に上昇へ転じる。一度は交わしたアクティブレーダー誘導ミサイルは、わざわざ戻ってきてくれたらしい。振り切るために電子拡散弾を投下。カイザーの機体が上昇すると同時に炸裂した電子拡散に突っ込んだアクティブレーダー誘導ミサイルは、目標としていた機体がどこへ行ったのかわからず、まるでパニックを起こしたかのように炸裂した。その爆発から発せられる風圧を利用してカイザーの機体は更なる上昇を果たす。
 ヘッドアップディスプレイバイザーに写る味方を表す光点は、すべて確認できる。全員まだ飛び続けている。
『ふざけ、んなっ!』
 ドードーの声だ。ドードーもステルス戦闘機の洗礼を受けているのだろう。
「管制へ、敵の機体は、新型ステルスと予測。交戦許可を求める」
 急上昇に伴うGの圧力は、肺を押しつぶさんばかりだ。あえぐように酸素を求めて呼吸しながら、カイザーは冷静に対応する。

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