13 スカイ・ロード
カイザーの入院先である、カイアナイト空軍付属病院へやってきたエンバリー准将は、目的の病室の前でまず溜め息をついた。
まったくもって気が重い。前に来た時を思い出すだけで胃が痛む。
技術屋として空軍に携わってきたエンバリーだが、防衛航空大学での同期生も多い。パイロットになったものもいたけれど、撃墜されて還らなくなった友もいた。
生きているだけマシだろう? という慰めの言葉は、下半身不随の人間に言っていいことなのかどうかわからない。
だが下半身不随となっても必要としてくれる職場があり、人間がいるということを、彼は理解する必要があると思っていた。
彼の心が完全に閉ざされてしまう前に、現実に引き寄せる。それが今日の目的だった。
ドアをノックする。案の定、返事はなかった。
「失礼、エルセン中佐」
返答を待たずして入るのは、これまでの訪問からの経験からだった。どうせカイザーは放心状態で心ここに非ずといった様子で、返答の一つも返さないのだから。
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