15 スカイ・ロード
カイザーには身内がいない。
親戚はいるにはいるが、高校生の頃に両親が交通事故で揃って他界してからというもの会っていない。
カイザーが空軍に進むのを機に、生まれ育った家を処分した。戻ってくる場所があれば逃げ込みたくなるし、逃げ込める場所は一人だということを強く意識させるのでかえって辛い、そう思ったからだ。
そして訓練が忙しくなるにつれ、処分しておいてよかったと思うようになった。休日などあってもないような日々だった。スクランブルはいつでも飛び込んでくるし、おかしな話だがみな文句を言いながら、出動要請が来るのを待っている。
戦闘機乗りはイカれていると口にするが、誰もがそれに苦笑しながら「違いない」とうなずくような者ばかりだった。
看護師に用意してもらった電気シェーバーで髭を剃る。基地にいた頃には、無精髭など伸ばしたことはなかった。あの事故からどれほどの月日がたったのか、カイザーには全く記憶がなかった。看護師に入院していた月日を聞いて絶句したほどだ。
確かに数週間は医療ポッドに入っていたのだから、記憶にないのも仕方ないが、医療ポッドを出てからの日々を思うと、自分がいかに無為な時間を過ごしてきたのかと思う。
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