03 スカイ・ロード
部下たちの低次元な口喧嘩を、よくこのGのかかる空間できるものだなと感心しつつ、しかしスコードロンエースとして、注意しないわけにはいかない。
「いい加減にしろ。勝ったほうに食わせてやるが、フォックスバッド、ドードー。おまえら二人はまず反省文だ」
そういうと、無線から二人の悲鳴に似た嘆きが聞こえた。カイザーは微かな笑みを一瞬だけ浮かべるが、すぐにそれは真剣な表情にかき消される。
「ドードー、ビッグベア、十時方向へ。フォックスバッド、サイレントは二時へ。レッドファング、ベルは三時方向へ展開しろ。私はリードする。フィッシャーマンは敵機を視認したら一発撃ち込め。速度が速い、くれぐれも注意しろ」
先ほどからレーダーに映る敵機は、通常よりも早い。それがカイザーにはずっと気がかりだった。
用心するに越したことはない。
ドッグファイトを嫌うには理由がある。遠距離ミサイルで撃ち落せば、損害はゼロになる。ドッグファイトともなると、機体の損傷はもちろん、僚機を失う可能性、そして自身が撃墜される可能性もある。わざわざドッグファイトを目的に近付いていくなど、愚の骨頂だ。
しかしそれが避けられない場合も、往々にしてある。そんな場合は応じるしかない。応じるからには無様な姿をさらすわけにはいかない。
それを誰もが心得ていた。
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