08 スカイ・ロード
『行くよ!』
「待ってたぜ、フォックスバッド!」
ベルの機体は推力を得るために降下を続けていて、海面へと近付いていた。ここぞとばかりにオーグメンターを使用すると、ブラストが海水を巻き上げ、後続するステルスに海水の雨を降らせる。一旦離脱を決意した瞬間を狙っていたかのように、フォックスバッドはガントリング砲をお見舞いする。
数発は当たったようだが、元々頑丈な作りのステルスは、銃弾の雨をものともしない勢いで、オーグメンターを使い一気に加速上昇。その速さにはさすがについていけない。
『あー!』
余程獲物に逃げられた猫のように、慌ててフォックスバッドも追尾するが、その早さにはついていけない。闇に乗じて逃げてしまえば、あとは完全に目標を見失ってしまう。
戦線離脱を決めたのだろう。レッドファングが追いかけていた機体も、同じように急加速して距離を離してしまう。これでは追いつけない。せめて夜間ではなく、日中なら追いかけようもあったのだが……
「フォックスバッド、追うな。どうせこれ以上追いかけても追いつけない。それに下手に競合エリアまで飛べば、今度は増援の攻撃にあうぞ」
ローレンツ海軍は自国海域のぎりぎりの場所に停泊し、こちらにむけていつでも出港できる状態を保っている。こちらが領空を出た途端に迎撃に来る可能性は十分にある。
すでにレッドファングは速度を落としていた。ひとまず、自分たちは領空防衛の役割は果たした。
『ラジャー…でも、悔しいな』
確実にビーフシチューの権利を取っておこうと思っているのかどうかはわからないが、動機はなんであれ、フォックスバッドのこうした闘争心は嫌いではなかった。
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