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24 スカイ・ロード

 カイザーは毒気を抜かれたようだが、気を取り直したように溜め息を漏らした。
「確かに不安もあるでしょう。この計画を聞いた時、私もFCOS操縦に不安を覚えました。特にその時は事故直後でベッドにいた頃ですから」
 そう言うとカイザーは自分の膝に視線を落とした。そして改めてその場にいる全員に視線を巡らせた。
「実際にここにきてUAVの操縦とコントロールを覚え、FCOSの操縦を覚えましたが、UAVよりもFCOSのほうが私には向いている。というのも実際のシステムを見て貰った方が早いのでしょうが、FCOS操縦は戦闘機のシステムに似せている」
 そう言うとフィードラーが得意げな顔で頷いた。設計局の局長という立場にあるが、フィードラーは今も現場に顔を出す技術屋でもある。
「そう、このシステムを運用するに辺り、仮に基地へ配備すると考えた時に、操縦者がエルセン中佐しかいないとなると大変だ。エルセン中佐は一人しかいない。システムを機動するたびにあちこちの基地へ移動となると不可能に近い。そこで万遍なく配置した際に、ベテランのパイロットたちに操縦してもらうということを考えたんだ。視力の衰え、肉体的な限界で戦闘機を降りるパイロットだが、Gの強烈な圧力もない地上でなら対応できる。映像で視力の衰えも補える。パイロットはベテランの操縦技術を体感させることで、その技術を継承する。パイロットを引退したウィングマンたちの力を、地上でも発揮してもらう。それが私たちの目的だ」
 パイロットの育成には金も時間もかかる。陸軍兵士よりもずっと少ない。だが死ぬときは機体事消えてしまう事も多い。技術の継承は口で言うほど簡単にできることではない。

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