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35 スカイ・ロード

 ジルがカイアナイト開発設計局に来てから、一か月を過ぎた。こちらでの生活もようやく慣れ始めたが、気候は驚く程変化した。
「はぁっ、はっ」
 ジルが元々いたエリア54はオーカースピネル州にあり、冷涼とした風が連峰から吹きおろす。そのため暑さは然程厳しくはない。
 着任時、オラーシオがここの夏は地獄のように暑いと嬉しくもない歓迎の言葉を述べていたが、夏を前にしてももう暑い。岩場が多い砂漠地帯は、遮るものがなくて木陰ができず、太陽熱を台地が全て吸収してしまう。おかげで正午前後はフライパンの上にいるようだった。
 開発設計局の人員は、確かにみな軍人ではあるが、その九割は技術員であり、パイロットは少数だ。年がら年中次々に新型機を開発しているわけではないため、普段からパイロットが充実した人数いるわけではない。
 例えば輸送機パイロットは爆撃機のパイロットも兼ねているけれど、さらに輸送ヘリ、攻撃ヘリまで担当している。
 更に兼務が当然となっている場所なので、体力錬成も個人トレーニングが中心になりがちだ。
 確かに陸軍と違って射撃訓練などはないに等しい。操縦方法を確認するために撃つくらいだ。射撃精度も然程求められてはいない。
 当然格闘訓練も単なる体力錬成の一つであって、然程重要な訓練と見なされていない。

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