43 スカイ・ロード
絶対に忘れられない人がいる。
空に恋して、空に愛され、空に奪われた人。
今、その消息を知る者はいない。
好きで好きでたまらなくて、振り向いて欲しくて、でもできなくて、都合のいい女でもいいからと、仲間であることを利用してでも傍にいたかった。
唐突に姿を消し、連絡が途絶えてから激しく後悔した。
好きだと告げればよかった。愛していると言えばよかった。例えそれが迷惑だと言われても、小さな棘となってあの人の心に刻まれるなら、それでもよかった。
何一つ言えないまま、別れを迎えるよりはずっといい。
そんな後悔をしていた。ずっと、ずっと……あの夜から、ずっと……
表情が凍り付いたオリアーナを見て、梯子をかけてくれた男が不思議そうな顔をする。
「あれ? 違ったっけ? ごめんごめん、勘違いだった」
「待って! 中佐って中佐って……」
お願い、言って、どうかその名前を言ってと祈る。オリアーナが聞きたかったその名前を言って欲しかった。
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