21 スカイ・ロード
ジルとファーカーが乗り込むと、オラーシオが車を走らせた。エンジンからの震動以外に、道の凹凸にも反応して揺れて振動が伝わるのが新鮮だった。
「今後、一緒に飛ぶこともあると思う。よろしくね、リュシドール中尉。ところで俺のタックネームはトリックスターというんだけど。中尉は?」
タックネームの拒否権はない。見た目の容姿、性格、状況、色々なものからつけられるが、その時の上官のネーミングセンスによる。酷い名前の由来は往々にしてある。
「……フランク」
「ふむ? それは何かな? 中尉の性格?」
「はぁ……えーっと、そうっすね」
「俺は初戦闘でうっかり味方撃っちゃったんだよ! いや、死にはしなかったし撃墜もしてないけどね! おまえは敵なのか、味方なのか、どっちだ! って怒鳴られて、ついたタックネームはトリックスター」
物語の中で敵か味方は不明な立ち位置にいるキャラクターを、トリックスターと言い表すことがある。ある時は味方に牙をむき、かと思えば敵に容赦なく攻撃を浴びせる。生と死、希望と絶望と、相反する行動を取る、物語を引っ掻き回すキャラクターだ。
初戦闘で味方を撃ったなら、そう言われるのも仕方ない。
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